寄る辺を無くした騎士
ドーモ皆様、デイダラです…勘の良い読者様ならお気付きでしょう…ハイ、別名義での投稿です。
此処は飽くまでサブ、本名義とは別名義なので投稿頻度は…週一の予定です。
気が向けば適当に投稿するので、〝最低週一〟…土曜日に投稿しましょうかね?…スランプとか、病に患えばその限りでは…いや頑張りますケド。
とまぁ、そんな風にゆる〜くやらせて貰うので…宜しくお願いします。
――カシャンッ――
その者を、敵対者達は何よりも恐れていた。
――カシャンッ――
その鉄靴の音を…敵対者は恐れていた。
――カシャンッ…カシャンッ…カシャンッ…――
その姿を、戦場に臨む者達は恐れ…そして敬っていた…その畏敬がただ、その者等にとって〝彼〟へ備えられる唯一の〝命乞い〟であったが為に。
「…〝リノベルト北方王国〟…〝第13騎士団〟…〝隊長フロディ・オーガー〟が告げる」
その声に、その赤く濡れた白い髪と…血よりも赤いその瞳に…彼等は、彼等の死神を見た…その死神が例え…〝戦場に残る…唯一の敵勢力〟であったとしても…その姿、その存在だけで…彼等の心は酷く摩耗した…何故ならば、皆知っているからだ。
――カチャンッ――
「〝降伏せよ〟…でなければ、その命…貰い受ける」
彼こそが〝リノベルトの白龍〟、〝戦場の鬼人〟、〝暴虐の魔王〟、〝万人殺し〟と呼ばれる…〝戦場の怪物〟である事を。
「――〝返答〟は」
その日…3年間に及ぶリノベルト北方王国と、アリーアン西方王国の戦争は〝ただ一人の生存〟を以て終着と成った…。
●○●○●○
――ザワザワザワッ――
群衆のざわめきに…溜め息が出る。
「あ、あの…〝フロディ様〟」
「…あぁ」
「ヒッ…し、失礼しました!」
「…」
俺の言葉に迎えの兵士達の顔が引き攣る…ソレに気に掛ける事ももう…〝諦めた〟…。
――カチャンッ…カチャンッ…カチャンッ…――
今日もまた…地獄だった…多くの兵が死んだ、多くの兵を殺した…。
殺して、殺して、殺して…手に入るのは割に合わない褒賞と、国王陛下からの淡白な労い言葉だけだろう。
――ザワザワザワッ!――
空を見れば、爽快な空…だがソレを美しいとは思わない…〝地獄〟を見ていた癖に白々しい…等と、八つ当たりするのは間違いだろうか。
「――アレが―」
「――英雄―?」
「―怪物――」
「―――魔―――」
ざわめく声に耳を閉ざす…〝何時もの事〟だ。
――カチャン…カチャン…カチャン…――
「おぉ、〝フロディ殿〟…お待ちしておりました!」
「……あぁ」
城下の先では、守衛の騎士達が出迎えてくれる……〝上辺〟だけ見れば、ソレは同じ国を守る同志への労いだろう…だが、その目は違う。
「国王陛下がお待ちです、さぁ…どうぞ…」
その目に宿るのは、〝妬み〟だ、〝忌避〟だ…其れ等は今に始まった事ではない。
「あぁ…だが、少し時間をくれないか…陛下と出会うには、この鎧は少し…」
「…では鎧は兵舎でお預かりしますね」
「(流石、英雄サマは上への媚び方も上手いもんだな)」
「…」
血濡れた功績への妬み、俺の持つ兵器としての力に対する妬み…陰でどう言われているのかなど言わずとも理解している。
それでも構わない…〝仕事〟ならば、それも耐えよう。
――カッ…カッ…カッ…カッ…――
鎧を剥ぎ、軽く水に塗れた布で身体を拭い…兵舎の外套を纏い、王城の道を行く…そして。
――ギィィィィッ!――
王城にある…〝玉座の間〟…国を統べる国王陛下がおわす〝高貴な者達の集う場〟へと足を踏み入れる。
――カッ…カッ…カッ…ザッ…――
「只今…〝御戻り致しました〟…国王陛下」
傅き、王への忠誠を示す…その背に集まる〝視線〟に…心を閉ざす…抗うだけ、無意味な摩耗だ。
「うむ…良くぞ来た…〝フロディ・オーガー〟よ」
その言葉に、深く頭を下げる。
「此度の戦争において、貴公の功績は計り知れん…〝和平締結〟の一助と成った〝ハルアバン原の戦い〟も…貴公等〝13騎士団〟の功績と聞いている」
「……勿体無き御言葉です」
〝功績〟か…ものは良いようだ…その言葉をグッと飲み干して、俺はただ機械的に事を運ぶ。
「して…褒美だが…貴公は何時も言っていたな……〝戦士した兵士達の弔い〟を…と」
「ハッ…此度もまた、その様にして頂ければ…」
俺はそう言い…懐から取り出した〝木箱〟から…〝戦士達の証〟を取り出し…王へ差し出す…ソレを、王の側に居る近衛達が回収し…俺の願いは果たされた。
(コレで、〝帰れる〟…)
後はもう…何も求めない…ただ、〝家に帰りたい〟…そう思っていたその時。
「――〝戦士達の弔い〟は…果たそう、〝フロディ・オーガー〟――〝元騎士団長〟」
「……はッ!?」
そんな言葉と共に、俺が顔を上げた…その時。
――ドスッ!――
「――カハッ…!?」
俺の腹を、背後から槍が貫いた…。
「…何……故…!?」
何よりも、疑問に国王陛下へ問い掛ける…だが、その目を見た瞬間…俺は理解してしまった。
「―――〝戦場の伝説〟、〝リノベルトの白龍〟、〝戦場の鬼人〟、〝暴虐の魔王〟…そして…〝万人殺し〟…貴公は我が国にとって多大な功績を齎した英雄だ…だがな、〝貴公は最早、我々の脅威なのだ〟」
〝怯える目〟、〝疎む者の目〟…〝恐怖〟と〝忌避〟の入り混じった〝否定の目〟……どうやら、俺はリノベルトにとって唯一の〝脅威〟と…そう判断されたらしい。
「貴公は最早十分に功績を得た…せめてもの償いだ、貴公の功績は世に伝えよう、戦場の流行病に伏せて命を落とした英雄として…無論、貴公の妻へも十二分な支援を行うとも…故に、コレが王として貴公に命ずる命令である、……〝その命を、国に捧げよ〟」
――ポタッ…ポタッ…ポタッ…!――
……〝命令〟…〝命令〟か……国に仕え、この十余年を民の為に、国の繁栄の為に費やしたと言うのに……その〝末路〟が、コレか…。
『隊長…貴方は生きて下さい――』
コレが。
『俺を捨てろボス――』
コレが?。
『私の英雄、貴方は――』
コレが??。
『足手まといは捨てろ、相棒――』
コレが???――。
『『『『貴方は、生きて下さい…〝私達〟の為に』』』』
コレが、〝仲間を見捨てた英雄〟の〝末路〟か?
――グッ!――
「ッ――なぁッ!?」
――グシャァッ――
「巫山戯るな…〝こんな結末〟は有ってはならない」
「貴様ッ、国命に逆らうつもりか!?」
――ググッ――
「巫山戯るな…〝生きろ〟と言われたのだ…俺は…!」
――ビチャビチャビチャッ――
「ヒッ――近衛は何をしているッ、奴を殺せ!」
「巫山戯るな――俺は――!」
――ズボォッ…!――
「〝生きろ〟と――〝言われたのだ〟!!!!!」
――ダンッ――
玉座の間から、飛び出し…道行く敵を斬り伏せ、王城から抜け出す…。
〜〜〜〜〜〜〜
――ザッ…ザッ…ザッ…――
命からがらに、逃げ延びた…俺は、日の光が届かない街の闇を縫って進む。
『何処に行った?』
『此方には居ない』
俺を追って、守衛達が王都を進む…しかし、事の失態を隠蔽する為か、民の目を引くほど派手な真似はしない。
ソレは、己にとって好機だ…〝逃げる時間〟を稼げる。
「ハァ…ハァ…ハァッ!」
腹に空いた穴、その血はもう止まった…傷は、数日有れば癒えるだろう…だが、何よりも気掛かりなのは…俺では無い。
「ハァッ……〝リリシア〟」
俺の〝妻〟だ…。
――ザッ、ザッ…ザッ!――
足を進める…家は直ぐ側だ…この角を曲がり…進めば其処に、妻が居る。
「…フフッ……」
この期に及んで、口端が緩む…何時も手紙を添えるだけしか出来なかったのだ…幾年振りに、妻に逢える…ソレだけで、少しは報われる…例え国に追われたとしても。
――ザッ、ザッ、ザッ!――
逸る足に従い…〝家の入口〟に立つ…扉を開けば其処に妻が居る…昼時の食事に舌鼓を打つ、妻が――。
――ガチャンッ――
「〝リリシア〟!」
――チュッ――
「ん――んもう、ちょっと、危ないじゃない♪」
「悪い悪い♪…だが良いだろ?…飯の前に軽い運動だよ」
「もう、このスケベ♡」
妻が……居た。
「――リリシア…と〝ハリス〟?」
見慣れた部屋に、見慣れた場所に、リリシアが居る…食事を並べたテーブルに、リリシアが…リリシアと…〝身に覚えのある男〟が…隣人のハリスが居た。
「「ッ!?」」
――〝扇情的な装い〟で。
「ふ、フロディ!?――嘘、戻ってきてたの!?」
「ッ―――い、いや待て、待てフロディ、コレは、ちょっと…ちょっとしたアクシデントで――!」
2人が、俺の言葉に気付き…そう言葉を紡ぐ…だが、あぁ…だが、その声が、その声の意味が…〝分からない〟…。
走馬灯の様に流れる…リリシアとの出逢いを…町娘だったリリシアとの出逢いを…血濡れた俺の人生に、赤以外の色が付いた、あの日を…あの笑顔を…文通もした、仲間から誘い方を学び、拙いながらに食事に誘ったあの日を…初めて、キスをして…初めて、共に過ごして…初めて……夜を過ごした…俺の〝大切な寄る辺〟…。
――パキンッ――
「―――〝そうか〟…〝そう言う事〟か…」
「ッ――待って、違うの!」
あぁ…何も珍しい事じゃない…戦役中に〝そうなる事〟もまま有る事だと、仲間達から聞かされた。
――パキンッ――
「――あぁ、そうか…そうだな」
ただ勝手に俺が〝期待〟していただけたったのだろう…〝リリシアの愛〟を…ただ勝手に信じていただけだ、〝リリシアの愛の言葉〟を…。
――パキンッ、パキンッ――
「〝そうだったのか〟」
「ねぇ、話を聞いて!」
「そ、そうだ…一旦落ち着けよ!」
ただ、ただ…ただただただただただ――〝俺の独り善がりな願望〟…だったのか。
――パキンッ、パキンッ、パキンッ、パキンッ――
「――〝俺〟は…もう、〝必要無い〟んだな」
「――ねぇ、ねぇ?…うそ、嘘でしょ?…何処に行くの、ねぇ?――〝フロディ〟!」
――パキンッ!――
その日、俺は……その身捧げていた国を…心の寄る辺だった妻を、信じていた全てを喪った。
初手全ロスは主人公の特権。
主人公が苦しめば苦しむだけ、その後の希望はより輝くのです、だから絶望は盛らないと。




