表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命変転 悲しみの鎖に囚われし世界  作者: 蛸の八っちゃん
第三章 問いかける爺と永遠の夢を見続ける友の亀
38/163

眠りの亀

 裏の世界 岳斗 加那江 シャルル ダニエルの四人。 彼らは今、白い円筒の中のように見える世界の狭間を重力に導かれるように落ちている。


「うわあああ――! なんじゃこりゃああ!」


「一体いつ着陸するんじゃあ!?」


「わからん! いざとなったら浮遊魔法でなんとかしてやる」


 突然円状に眩しく光って、岳斗たちを照らす。 それは次第に岳斗たちの体を包み始め、岳斗たちは一瞬意識を失った。


「っ! 眩しいわ……」


 目が覚めるとそこは何も変わらない砂漠の世界だった。 ただ一つ違うとしたら、太陽が真上にあることだ。 岳斗たちは体を起こして、今の状況を認識しようとした。


「……うぅ。 ぬっ! シャルル、ここはどこだ?」


「さっきまでいたタウチー遺跡とはウリ2つだな。 これは前回も変わらない」


「しかし、太陽があるぞ。 一体どういうことじゃ? ああ、音楽の中に太陽ファラエがあったな。 そういうことだったのか」


「気のせいか王国の壁が新しいような……とにかく色々調べてみるぜ。 ぬ?」


 シャルルが自分の目を疑いながらも改めて目の前を見た。 なんと、今では見かけない奇抜な模様をつけている服などの服装を着ている人々が王国を歩いている。 談笑をしていたり、商売をするなど、賑わいを見せている。


「こいつは…… 古代の服装だ。 どういうことじゃ?」


「さあな……? わからねえ」岳斗が肩をすくめた。


「とにかく行って見ましょう」


 一行は王国とタウチー遺跡を歩き回って、調査を始めた。 オアシスの近くに行ったところで新しい違和感に気づいた。


「ん? オアシスから音がするわ? ピチャンって」


「……! 魚が泳いでいるっ! とっくの昔に死んでいるはずだぜ。 生き返ったのか……?」


「……岳斗。 あり得ないかもしれんが、俺たち、タイムスリップしたのかもしれねえ」


「タイムスリップだと? SFじゃないんだから」


「この冒険も十分SFだと思うけどな。 いや、王国の壁が新しく見えたんだ。 見てみろよ。 王宮も新しそうだろ」


「ほんとじゃ! 不思議な世界じゃな。裏の世界ってこういうことが起こるのか?」


「いいえ……。いつもはタイムスリップしなかったわ。 どういうことかしら?」


「そんなの俺が知るわけないだろ。 そうだ、倒した後に獣にでも聞いてみるか」


「聞く?」


「ああ、ダニエルは見たことなかったっけ。 でけー獣を倒すと獣の中に吸い込まれるんた。 普通の人が吸い込まれると獣に取り込まれて、次の獣になっちゃまうが、俺が吸い込まれると獣の中にある世界に辿り着けるわけだ。 そして、獣の核になっている魂を元々の姿に具現化している、なんつーか、神みたいな奴に一騎打ちで勝って、握手するとその獣が仲間になる」


「確か、レオナルドもそうだったな」


「ほぉ……」


 岳斗がダニエルに獣を説明している時、遊牧民族の住まいによく利用されているゲルから数人が出てきた。


「ワットラーメ ファエエバ? トラリャエ オイラ!」


「なんだ? おいおい、古代言語か! くそ、ジェスチャーでなんとかするしかねえな」


 岳斗は両手を2人の前で広げて、謝罪と了解の中間の意味であるジェスチャーを出した。 幸運なことに彼らは怒鳴るのをやめてくれたようだ。


「多分、こいつら魚を指差して怒鳴っているから、俺らに魚取るなって警告してるかも」


「なるほどね。 これ以上悪化しないうちに離れましょうか」


 岳斗たちは彼らの逆鱗に触れないようにその場を離れるのだった。 去っていく彼らをじっと見つめる一匹の亀……。


「やれやれ、裏の世界に入ったのはいいもの、どうすりゃいいんだ……」


「岳斗、思い出してみよう。 俺らの目的は獣の回収だ。そして、獣の実体は裏の世界にいる。 一体目が朱雀となると、玄武、白虎、青龍のどれかだ」


「それかただの思い過ごしの可能性があるわ。 ……でも、一方でかなり大きい都市を5つも青い霧で眠らせて、星をも眠らせることができるほどの力を持つのってそれこそ獣しかいないのかもね」


「それにしても消えたと思っていたリオベール王国の人たちはここにいたのか。 どうしてこいつらだけ裏の世界に行けたんだ?」シャルルが目を閉じて考えた。


「わかんねー。 でも、なんだか奇妙だな。 そもそもこいつらはほんとに生きているのか?」


「どういうこと?」


「だって、よく考えてみろよ。 こいつらが消えたのって、206年前だろ。 どうしてこいつらは今もいるんだ? それにこの世界は命を憎む魔物がウロウロいるはずだろ」


「ええ。 そして、あたしたちが今まで入ったゲートは例外なく魔物があちこちいて、私たちを襲ってきたわ。 もしかして! 岳斗、貴方はこの人たちが魔物だと言いたいわけ?」加那江が顔を上げて言った。


「ああ、そうだ」


「確かにお前たちから聞いた裏の世界の殺戮さとは違って、まるっきり平和じゃな」


「ふむ。 じゃあ、確かめてみるか……お前ら、一応戦闘準備しとけよ。 全ての宇宙を産み落としマザーよ、我を命の炎となる標へと導け!」


 シャルルが生命感知魔法を発動させた。 しかし、なぜか古代の人々には反応せず、唯一、オアシスの真ん中の岩にのっている亀だけ反応した!


「……!? なんであっちの亀にだけ反応するんだ?」


「何ですって? 亀だけ!?」


「バカな。 じゃあ、この人たちは……」


 驚いた一行の後ろから刀や弓などの殺気を形にした道具を持った民たちが襲いかかる……と、刹那の一撃が彼らを葬り去った。 岳斗だ。


「てめえら。 油断するんじゃねえ。 こいつら殺気がプンプンしてたぜ」


「あ、ありがとう」


 どこからか出てきた民たちが岳斗たちを亡き者にしようと武器を構えて、囲った。


「よく分かったな、岳斗」


「最初から胡散臭えと思ってたんだよ。 やっぱりこいつら、猫どころか白い布をかぶっていたようだな」


「とにかくまずはこいつら全員倒すぞ! 構えるんじゃ!」


「エルフャリ、ジュトラーバ レテナ!」


「ラファァァァ!」


 命を持たざる民たちが殺意を持って、一斉に襲いかかる。


「ぬうう! そう簡単に殺れると思うな! テラキュダス・ラサシェ!」


 ダニエルが魔力を込めたハンマーを地面に叩きつけて、天を貫く土槍をいくつも出した。


「ボオオオオ!」


 ダニエルの天槍に貫かれ、死者たちは血を地面に撒き散らした。 しかし、体に大きな穴が空いたり、手足がもげたりしても襲うことをやめなかった。


「くそ。 こんなんじゃ止まらねえのか! なら、木っ端微塵にしてやる! 紅蓮の輪廻よ、常世の幻影を天炎塔へ誘え!」


 敵どもは火の輪に縛られ、悲鳴を上げながら、燃えざかる塔となったが、骨になっても動く。


「てめえら! とっとと成仏しやがれ! 疾葬昇虎剣!」


 岳斗の激しいスライディングで、砂が勢いよく跳ね上がり、目潰しになった。 そして、虚をつかれた奴らの首を逆さ立ちで回し斬った。 民たちは人形の糸が切れたように次々と倒れた。


「首だ! こいつら首を切れば動かないぜ!」


「わかった! クリティカルハーツ!」


「よっしゃ! 対処法がわかれば、こっちのもんだ! 虚無の世界に住まし宝石よ、未練斬りのロンドを奏でよ! 」シャルルが砂付きの円刃を出して、民たちの首を次々と切る。


 加那江とシャルルも首切りに加わり、民たちを全滅させた。 砂は血の海になっている。


「よし、これで全部か」


「そういえば、あの亀だけ生きてるんじゃったな?」


「ああ、そうだ。 調べてみるか」


 オアシスに近づき、岳斗が亀を手に抱える。


「んー? 見た感じ、変哲のない亀だな。 強いていえば、ちょっと甲羅が丸いな」


「おい、気をつけろよ。 何があるかわからんのがこの世界だからな」


「クァー」亀が鳴き声のような音を出すと岳斗は突然眠りに襲われた。 そして、亀を抱えたまま後ろに倒れた。


「……! 岳斗! 大丈夫!?」


「んがー。 くかあ〜」


「どうやら眠ってしまったようだ。 今、目を覚ましてやる。 明けない夜を彷徨う霊よ、幻海を喰らえ!」


 半透明のバクがどこからかふわふわ漂ってきて、岳斗の頭を何度も甘噛みしたが、岳斗は一向に目を覚さないで、腹立つくらい無垢の表情で眠りこけている。


 シャルル「嘘だろ〜」肉球で岳斗の額を叩いている。


「悪いな。わしも眠くなってきたぞ……」


「あ、私も……」


「おい、れめら……」眠りでシャルルの舌が回らなくなった。


 眠りに襲われ、岳斗にのしかかりながら眠ってしまった3人。 あとは寝息が砂漠に響くのみ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ