未来を変える一歩前……
とある月らしき星で、この世界の滅亡をかけた戦いがあった。 太い剣を右手に持っている16歳の少年と白い髪の長いポニーテールをしている16歳の少女、魔法を唱えている二本足の灰猫がなにやら妖しい魔術師の攻撃を何とかしのいでいるのが見てとれる。
「フハハハアー! ムダなあがきはやめるがよろしい!」魔術師が叫び、手元から火の玉を放った。 地面にぶつかった火の玉が砂塵を巻き上げながら地面を焼き尽くす。 その熱気の中、少女が叫んだ。
「わるいけど、みんなそこまであきらめが悪くないわよ!」
灰猫が前に踏み出して、呪文を唱える。
「冥界にもだえる炎よ! 彼に終わることなき煉獄を与えよ! エーヴェロ・コンサピリオン!」
「!! ぐうおお……!」暗黒の炎が魔術師を飲み込み、短い叫び声が響いた。
「ひるんだ! 今だ岳斗」灰猫が少年の方を振り向いて、言った。
「わあってるぜ! 疾葬昇虎剣!」
少年はそう言うと地面に駆けて、その勢いでスライディングした。 そして、月の砂を勢いよく巻き上げながら、跳躍して今まさに相手のアゴを天に打ち上げんとしたとき……。
「……どうあかいたとてもどうともならないこともあるのだ。 終焉は存在しない時の中にある。絶望に沈め」
「何をたくらんでるか知らんが、とにかく終わりだ。 あのペテン師の時を止めよ!」
しかし、呪文を唱え終わる前に彼は重大な事実に気づいた。
誰も知らない時の中で、少年の全身を赤い蔓つるが貫いていた。 彼は不辛なことに何も気づかない。もはや唯一の魂をつなぐ鎖が切れてしまっていたことも……。
「そして時はすべての理に還る……」
消された時と共に彼の魂を失った哀れな骸はもはや世界を通ずる門を二度と開くことなきまま地面に落ちた。
「岳斗……? 嘘でしょう、死なないでよ……」
少女が駆け寄るが、その手に応えはなかった。 灰猫は歯を食いしばる。
(なんてことだ。まさかあっちも時の魔法を持っていたなんて。俺としたことが……! またやりなおすのか……? この地獄を変えても変えてもキリがない)
「仕方ない…… アレにかけるか」灰猫が重々しく呟いた。
この地獄の幕開けは6月のおわりにさかのぼる。これは岳斗が世界を縛る絶望的な未来を変えるまでの物語だ。