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汚いこの世界で唯一美しいもの  作者: 濵之字
新たな生活
6/6

第5話 僕と新たな同居人

 彼女と出会ってから1か月ほどがたった。

僕は今までと変わらず朝起きたら出勤して、仕事して、程々の時間になったら帰宅をする。最近は定時になっても空が明るいので、着々と春が近づいてきているんだなとなんとなく思っている。

 ただ明らかに変わったことが一つある。それは帰り道の途中で夕食を買って帰らなくなったということだ。それは何故かというと、あの日出会った彼女が僕の部屋で夕食の支度をして待っていてくれるからだ。家に着くと「おかえりなさい」という声と共に僕を出迎え、その後は一緒に夕食を食べる。今までは文字通り一人暮らしをしていた僕の生活になんの前触れもなく同居人が増え、僕の生活は少しずつ変っていった。


「仕事慣れた?」


夕食の炒飯を食べながら僕は彼女に尋ねた。彼女は口に運ぼうとしたレンゲを口元で止め「ま〜なんとなくですけどね。」と言ってその後、宙に止めていたレンゲを口に運んだ。炒飯を食べているその顔は、初めて会った時と比べものにならないぐらい和らいでいてその表情を見るたびに僕はほっとしてしまう。


 彼女は僕の部屋に来てから4、5日の間はオロオロというか戸惑っているというかなんか落ち着きがなかったような気がした。しかし1週間ほどたったある日、彼女は意を決したようにして僕にこう告げた。


『アルバイト始めようと思うんですけど、その……それに伴って住所変更してもいいですか?』


正直最初にそれを聞いたときは何を言っているのかよく解らなかった。よくよく話を聞くとただ毎日掃除をしたり食事を作ったり、それだけで家に泊めてもらうのは申し訳ないから少しでもアルバイトをして自分の生活費ぐらいは自分で稼ぎたいと彼女は言った。確かに僕の稼ぎではこのまま2人分の生活費を賄うのは厳しいだろうと薄々感じていた。

 でも何で住所変更?っと思っていると彼女は自身の考えや調べたことなど色々と説明してくれた。


 要するに彼女は、履歴書の住所の欄に今まで住んでいた家の住所を書くのが嫌そうだ。それだけではなく法的な面や行政的なことも考えるとやはり住所変更は絶対必要と彼女は必死に訴える。またその他にも、郵便物の転送や同居届といういかにも確信的な書類も出さないといけないと彼女が説明してくれた。


 僕は説明を聞いてもあまり理解ができなかったが彼女の必死さがとても伝わったので彼女の好きなようにすればいいよとそう伝えた。


彼女は各手続きを済ませると近所にある食品スーパーでアルバイトを始めた。初めて出勤する日の前日は色々と思うところがある、っというふうな感じで緊張しているような怯えているようなそんな様子が伺えた。しかし今ではそんような感じもなく、普通に出勤している。

 「なんとなく」っということは徐々に慣れてきているのだろう。僕は勝手にそう解釈して、また炒飯を食べ始めた。


夕食を食べ終わり彼女はデザートにアイスクリームを食べ、僕はタバコを吸っている。


「そういえば今週の土日はバイトあるの?」


「土曜日は半日で日曜日はお休みもらってます。」


「そっかー、日曜日は天気いいらしいしどっか出かけるか?」


「いいですね〜、またあの象さんの公園に行きたいです。」


「象さんの公園??あ〜あれ公園なの?港じゃない?」


「一様、公園らしいですよ。」


「ヘ〜。」


 たわいのない会話をして僕らは日曜日に出かける約束をした。彼女が行きたがるのは、近場でなおかつあまりお金のかからない所ばかりだ。本当は都心ヘ買い物に行ったり、それこそイルミネーションをこれでもかと使っているようなテーマパークに行きたいと思っているのではないだろうか。しかし現実問題、テーマパークは疎か洋服ですら年頃の女の子としては満足な物を買えていないのが今の現状だ。


 そんなことを考えているとだんだん不安になってきた。あーやばい、またスイッチ入った。ひょんなことからそう思うことが僕にはよくある。最近は調子が良くて、薬を飲むのをやめていたのが原因だろう。


「ごめん、ちょっともう寝るわ。」


「えっ!」


 彼女はとても驚いた顔をしていた。しかしこうなってしまったらもう寝るしかない。起きていると余計なことを考えてしまう。何も考えたくはない。


 僕は社会不安障害と軽いうつ病を患っている。普通の人ならたいしたことないと思うようなことに異常に不安や恐怖を感じたり、気分の浮き沈むが激しく入れ替わるいわゆる躁鬱状態になってしまうことがある。


 自分の寝床に行き横になり毛布を被る。明日からはちゃんと薬を飲もうとそう誓い、まだ訪れてくれない眠気をたぐり寄せるようにして僕は目を閉じた。


ご覧くださりありがとうございます。

感想やアドバイスがありましたらコメントしていただけるととても嬉しいです。

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