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彼らの日常


静けさを裂くような叫び声があがった

それと同時に倒れるが複数おきる


「・・・無念・・・」


最後に倒れた黒ずくめの男は恨みの言葉を残すように倒れた


カチン

竜将軍は周りに武器を持った者がいなくなったことを確認すると

玉の付いた剣を鞘に戻した


「お怪我はありませんでしたか?」


一応形なりの心配を声かける


「・・うーん、君が壁に押しつけなければ頭を打たなかったよ・・」


ほんの数分前、いきなり王宮の回廊で3人の暗殺者の奇襲に竜将軍は閃を壁側に押しつけ

飛んでくる暗器をことごとく剣で打ち落とし

逆に打ち落とした暗器を拾い上げ、暗殺者に向けてはなった


見事それは一人の暗殺者の足首に刺さり、相手の動きを封じた

向かってきた暗殺者には二、三度剣をあわせた後、床へと叩き付けた

そして、後方にいた暗殺者に対して竜将軍はニヤリと口をゆがめた


その笑みに恐怖を覚えた暗殺者は背中を向けてしまった

だがそれが最後だった


「遅い。」


耳元で聞こえた死刑宣告

いつの間にか背後にいる竜将軍の顔を確認する間もなく

脳天を襲う衝撃に暗殺者の意識は奪われた


3人の暗殺者が倒れていた後の閃の台詞があの気が抜けるような台詞である

 

「申し訳ありません。この場所は見晴らしも良く、まさかこのような場所で暗殺を企てるとは・・・。配慮不足でした。」


竜将軍は跪き閃王に詫びを入れた


「ははっ、別にいいよ。こうやって無事なんだし。ましてや、相変わらずの武術のすごさだ。この城の兵達もこのくらい強ければいいんだけど・・」


騒ぎを聞きつけ、やっと兵達が駆けつけてきた


「陛下!!ご無事ですか!!」


「お怪我はありませんか!!」


バタバタとやってくる兵や官吏の者達に閃王と竜将軍は苦い顔をするしかなかった


「こ、この者達は!!」


倒れている暗殺者の姿に狼狽える兵と官吏に頭が痛くなる


「その者達を牢へ。陛下を襲った罪で後で取り調べをする。」


立ち上がった竜将軍から発せられる声に兵や官吏の者達は震え上がる


竜将軍は顔半分が仮面で覆われているため、感情を読み取ることが出来ない

唯一読み取ることが出来るのが、声だ

だがその声も、常に一定のトーンで話すため、これもまた感情を読み取ることは難しい


だが今回は違う

竜将軍は怒っている

ヒヤリとする空気にここは戦場かと誰もが思えた


パンパン

手を叩く音に静けさは破られた


「はいはい。兵士さん達ぐずぐずしない。きびきび動く!」


明るくおちゃらけた閃王の声にその場がゆっくりと動き出す


「陛下・・・。」


「はいはい。竜将軍。これから会議だよ。見せつけてやろうじゃないか。まだ私は生きてることを。何度暗殺者を向けようと、竜将軍がいる限り私は死なん。だろう?」



閃王の黒き眼は悪戯を思いついた子供のように輝いていた



「はい。私がいる限り、陛下には指一本触れさせはしません。あの時の誓いから、変わりません。」


「なら行こう。遅くなると奴らの思うつぼだ。」


兵や官吏達に背を向け歩き出した閃王の背中を竜将軍、神楽は思う


この背中について行こう。そしてこの人を守り抜こう。この命尽きるまでお側にいよう。

決して隣にたてる器ではなくても・・・


璉国は1年ほど前に十年続いた戦争をやっと終演させた

その代償はとても大きかった

国のほとんどが戦火にのまれ、国の復旧作業は一刻も早く行わなければならなかった


璉国国王である閃は手始めに、食糧の確保に尽力を尽くした

人は食べねば生きてはいけない

ならその食を守らなければいけない


まず、戦火から逃れることの出来た州からは米などの食料を後宮に回していた財務から絞り出し買い付け、戦火に見舞われた州に貸し出しという形で配布。


それに伴い、種や家畜なども買い付け、それの国の物であるという形にして貸し出し、貸出料を低料金にして、種が実を付ければそれを売ったお金で払う、もしくは種の状態で返す。家畜の場合は、数を増やして、子供または卵の状態で返すもしくは、家畜を売りさばいた金額で返す。

返済期間は3年という形で無理のない返済を目指した

そうすることで食は少しずつ安定していった。


次に閃王が手を付けたのが仕事斡旋場という名の診療所である。戦争により多くの者が怪我をして家に帰っている者がいる。

そういった者達は怪我によりなかなか働きに出ることが出来ない

それでは、お金を得ることが出来ない


ならば、どうするかとなると、無料病院を作った

だが、ただより高いものはない!

無料病院に来た者は、重度の怪我と診断されない者以外は仕事口の斡旋を行う

戦争などにより腕がない者、脚がない者など四肢を欠損している者達には仕事を必ず与える事を各州に厳命し、同じ賃金支払いも命じた


多くの者達がこの病院を訪れ、王からの推薦状を持って村のある州に帰り、仕事を与えられ、その推薦状を王宛に送り返さねばならなかった

不当なことがあれば、その推薦状に書き王に訴えた


そうなると州の官吏達は王に睨まれるのが怖くて、きちんと仕事を与える


だがこれでは各州にかなりの負担を与えることになるだろう


そこで閃王は、推薦状を送り返してきた者達の割合を考えて、州に対する税負担を減らした

これは州の官吏達は喜んだ

賃金はある一定料金で決められているが、人口が減ったしまった州としては多くの人材を集め、各々の州を潤わせたい

それには、王家に納める税が大変重かった

その負担が減るとなると州の官吏達は仕事の斡旋に協力的になった


こうして、次々と改革を進める閃王に民衆は期待をかけるようになった

閃を賢王と褒め称え、英雄視するようになった


だがそれを面白く思わない者達がいた

それが今回の暗殺を計画してきた者達だ


過去何度となく閃は暗殺者に襲われた

絶体絶命の状態も一度や二度ではない


だがそれでも閃王が生きているのは竜将軍のおかげである

竜将軍はいついかなる状況でも沈着冷静に物事を判断し、どんな敵からも閃を守ってきた


その強さから王を守る竜の化身として竜将軍といわれている

またその強さが認められ、王から玉を賜った


玉は成人女性に握り拳ほどの大きさの無色透明な玉である

誰に染められることのない、常に清廉潔白であれという意味とこれを持つことでこの国の英雄と王自身が認めたことを意味していた


それを飾り紐で包み、帯剣している剣に結びつけている


これによりこの国の誰もが閃王と並んで竜将軍も英雄視していた


この二人ならば世の中を安定させてくれるという、思いを込めて・・・・


「陛下のお越しにございます」

前触れを伝える挨拶に朝議の間にいた官吏達は平伏した

玉座に続く赤い織物を境に左右に30人ほどの官吏達が分かれている


カツカツカツ


と二つの歩く音が後ろから聞こえ玉座の方へ向かう


閃王が玉座に座ると竜将軍がその少し後ろに並び立つ


「いやいや、みんな待たせてすまなかったね。ちょっとここに来る間に奇襲があってね。」


開口一番に世間話をするかのように王の口から発せられる言葉に平伏したまま官吏達はうろたえる

その動きを竜将軍は見逃さない

王の後ろで仮面越しの瞳で見つめる


「陛下、ご無事なのですか?」

三老の一人である60後半の髭が特徴的ながい 璋廉しょうれんの言葉に王はニコリと笑みを浮かべる

「あぁ、もちろん。竜将軍がいてくれたからね。にしても、まだ諦めきれない奴がいたとはねぇ。」


王の声のトーンが変わった

ピーンと張り詰めた空気に官吏一人一人が凍り付く


「確かに私はまだ若輩者だ。侮られることが多いだろう。だがな、ただ手をこまねいていることはしない。そう思うだろう・・・りん官吏」


三老の後ろという最前列に近い所にいた琳官吏は大きな巨体をビクンと震わせる

額からは滝のように油汗を掻き顔を上げることが出来ない


「・・な、な、何の事やら。私には全く身に覚えが・・ガッシン!!


琳官吏の言葉を遮ったのは竜将軍の剣だ

いつの間に目の前にきたのは分からない

足音もなく近づいた竜将軍は

平伏している官吏の顔の真横に剣を抜き身の状態で床に刺した


「ひぇぇぇぇ!!」


飛び上がった官吏は後ろに後ずさり、顔面を真っ青にさせる


「琳官吏、あなたが未だ過去の栄光に縋り付いているのは知っている。そして私腹を肥やしていることも、証拠がそろっている。これは反逆の証ではないか?」


玉座に座り両膝に肘をつき両手を組む

上体を倒しその手の上に顎を乗せ、閃はニコリと笑みを浮かべる


「反逆は許されざる行為だ。不穏分子は即刻排除すべきである。そう思うであろう、琳官吏。」


まさに死刑宣告であった

琳官吏は急いで平伏した


「ど、どうかお慈悲を・・・私はこの国を思って・・今まで陛下に、この国に忠誠を・・」


「見苦しい。兵よ。この者を牢に。罪状はおって連絡する」

竜将軍の声と共に琳官吏の横には兵が立ち、引き連られるように扉から去っていった


「さぁ、一つの問題は終わった。さぁ、朝議を始めよう」

王の一言に朝の朝議は始まった



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