あいつら実は選りすぐりのエリートだったらしい
終わった……
俺はふうとため息をつくと、その場にへたり込んだ。
さっき治してもらったばかりだし、肉体的な疲労はそこまででもない。
だが、精神的な疲労はその限りではなかった。
「はぁ……はぁ……」
勝った。
俺は勝ったんだ……
「レ、レインっ!!」
ふいに名前を呼ばれ、そっと顔をあげる。視線の先には、見慣れた幼馴染みはこちらに駆け寄って――
「どわっ!」
訂正、こちらに突進してくるの間違いだった。すさまじい勢いで抱きつかれ、俺は仰向けに寝ころばされた。
「よ、良かった……! 無事だったんだね……!」
「ふ、ふがふが……!」
対する俺は、ルナに二つの大きな膨らみを押しつけられ、呼吸がままならない。
「ぐぐぐ……! ル、ルナ……!」
俺は顔を無理やり動かし、なんとか呼吸の場所を確保すると、やっとのことで声を絞り出した。
「ル、ルナ……。息が……!」
「あっ!!」
そこでやっと自身の醜態に気づいたのだろう。
ルナはぱっと俺から手を離し、上半身を起こした。
「ご、ごめん! 私ったらつい……!」
「けほけほ……!」
おい、兵士じゃなくてルナに殺されるところだったんだが。
「ったく、おまえは相変わらずだな……」
「へへ。そんなことを言われたら照れちゃうよ」
「いや、別に褒めてはないんだが……」
俺は思わずため息をつく。
ルナ・ミューゼ。
その天然っぷりは健全だな。
どんな状況であろうと、持ち前の明るさで人に元気を与える……
外れスキル所持者といえど、俺にはもったいないほどの女性だった。
俺はきょろきょろと周囲を見渡し、誰もいないことを確認すると、ぼそりとルナに耳打ちした。
「ところで……大丈夫か? まさかおまえも追放されたんじゃ……」
「うん。さっき、急に兵士がやってきて……」
やはりそうか。
オルヴァー帝王は、俺たち《外れスキル所持者》を徹底的に排除しようとしている。
その理由まではわからないが……おおかた、いつもの短期的な決断だろう。帝王の前で欠伸をしただけで処刑された国民は、それこそ何人もいるのだ。
つまり。
このまま故郷へ戻ることはおろか、違う街で身を隠すこともできないわけだ。兵士の目に触れてしまえば、きっと殺される。
ウガバーン帝国ではない、どこかに居を構えねば……
「ねえ、レイン……?」
そんな思索を巡らせていると、ルナがふいに声をかけてきた。
「そういえば、さっきの兵士たち……どうやって倒したの?」
「む……」
そうか。そうだよな。
ルナにとっては当然の疑問だろう。
でも、いったいどこからどうやって説明するべきか。
「いや、その……よくわからないうちに消えてた」
「へ……!?」
結果、とんでもない端折り方をしてしまった。
「よくわからないうちに……って、どういうこと?」
「さ、さあ。俺にもわからん……」
これは本当だ。
スキル《エミュレーター起動》の全容を、俺はまだ理解できていない。
「あの兵士たち、なんか凄腕だったらしいよ? ベルモンガ剣術学院の出身って言ってたけど」
「へ、へー……(棒)」
ベルモンガ剣術学院といえば、剣技において有望な若者のみが集う場所じゃないか。
まさかまさか。
きっとルナの気のせいだろう。
「そんな兵士たちを、よくわからないうちに倒したって……」
驚愕に満ちた表情で俺を見つめるルナだった。
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