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世界の常識を超えた力

――――――


 完了。完了。

 使用者のスキル発動を検知し、使用者を《世界の狭間》にいざないます。


――――――


「うお……」

 謎のメッセージが視界に浮かびあがった途端、俺の意識は暗転した。


  ★


「こ、ここは……」


 気づいたとき、俺はまったく見知らぬ場所にいた。


 あたりを見渡すも――一面、真っ暗闇の世界。

 地平線までなにも存在しない。

 ただひたすらに闇が広がるだけの、虚無の世界。


 その場所に、俺はひとり突っ立っていた。


「あれ……」


 驚くことに、さっきまで兵士に痛めつけられたはずの傷が綺麗に消え失せている。それどころか、空腹感までもがなくなっているような……


 と。


『あなたの情報を《通常》に書き換えました。傷が癒えているのはそのためです』


 今度は謎の声が響きわたり、俺は大きく飛び跳ねた。


 エコーのかかった女性の声。

 いったい誰だ……!?

 慌てて周囲を見渡すも、人の姿はない。


『いまはまだ姿を見せられません。ですが私はあなたの敵ではありません。そちらは信じてください』


「そ、そんなこと言われてもな……」


 敵であろうがあるまいが、俺はこいつに従うしかないわけだ。


 どの道死ぬのだから。


 兵士とどちらを信用するかといえば、このスキルのほうに俺は一縷の望みをかけたい。


「教えてくれ。これはいったいなんだ。俺はどうしたらいい……!」


『エミュレーターを起動したことで、ゲームプレイは一時停止され、あなたは今、世界の管理画面に立っている状態です』


「…………?」


 なんだ。

 意味がわからないぞ。


 ゲームプレイ。

 世界を管理。

 どういうことだ……?


 戸惑う俺に、謎の声は続けて言葉を届けてきた。


『……わかりやすく言うならば、このスキルは世界を操作するスキルです。起動中は世界の時間は止まりますから、向こうのことを気にする必要はありません』


「そ、そうか……」


 さっきよりは理解が深まった気がするが……

 しかし、依然やばいことに変わりはないな。世界を管理とか、全然よくわからないんだが。


 と。

 さっきまで真っ暗だった空間に、突如として四角の映像が浮かんできた。


「こ、これは……」

 そこに表示されたものは、俺にも見覚えのある光景。

「世界地図か……? どうしてこんなものが……?」


『あなたが住んでいた世界は、《C201》として管理されています。もちろん、他にも世界は無数に存在していまして……あなたはそのどれにも干渉できる能力をお持ちです』


「世界に、干渉……」


 相変わらずよくわからないな。

《攻撃力アップ》とか《魔法全使用》とかのほうが、まだ単純明快なんだが。


「相変わらずわからねえよ。世界に干渉なんかより、俺は、一刻も早くルナを助けなきゃいけねえんだ……!」


『……承知しています。ですから急遽きゅうきょ、別世界からこれを頂戴してきました』


 その声が終わるのと同時に。

 俺の目前に、光に包まれた剣がどこからともなく出現した。

 刀身に赤いラインが入っており、どことなく荘厳な雰囲気が漂っている。心なしか、剣の周囲がほのかに輝いているような……


『A006から拝借してきた聖剣です。正式名称を聖剣ヴァルボロス……攻撃の対象を、問答無用で《消す》ことができます』


「け、消す……!?」


『ええ。まあ、厳密にはいくつか条件がありますが……あの兵士を倒すくらいは造作もないでしょう』


「…………」


『元の世界に戻るには、またスキル名を唱えるだけで大丈夫です。それで兵士を倒すことができれば……あなたも、すこしは私を信用してくれるかと』


 わからない。

 こいつの言っていることは、さっきから荒唐無稽にすぎる。


 だけど……


 ――レイン、やだ、やだ、死なないで……!――


 幼馴染みの叫び声が、俺の脳裏に響きわたる。

 ルナ・ミューゼ。

 このまま放っておけば、彼女がどんな辱めを受けるかわからない。


「わかった。正直まだ半信半疑だが……俺には、もうこれしか残されていない」


『……スキル名を唱えれば、またこの空間に来ることができます。どうか……ご武運を』


 この声はいったい誰なのか。

 このスキルはいったいなんなのか。

 この剣は本当に使い物になるのか。


 わからないことだらけだが、元より死ぬはずだった身。だったら、散る前にできることをやってやるさ――!


「スキル発動……エミュレーター起動!!」


 そう覚悟を決め、俺はスキル名と唱えるのだった。


   ★


「…………」


 次に意識が戻ったとき、俺は見覚えのある場所に立っていた。


 薄暗い密林地帯。

 最近雨が降ったせいもあり、湿った土の臭いが鼻をつく。


 ウガバーン帝国。その領土だ。


「やめて! レインを――レインをこれ以上殴らないで!」

「ひゃひゃひゃ! 男の心配する前に、まずテメーの心配しろってんだ!」


 そしてまた、さっきまで俺とルナが痛めつけられていた場所でもある。


「……マジか」


 本当に時が止まっていたみたいだな。

 あの謎空間において、俺はそこそこの時間を消費したはず。

 にも関わらず、兵士やルナの立ち位置がすこしも変わっていないのだ。


 そしてそれは、さっきまで俺をぶん殴っていた兵士も同様である。


「ん……あれ?」

 再び俺を殴るべく、兵士は拳を振り上げていたが――その動きがぴくりと止まる。

「おかしいな。おいおまえ、なんか薬とか隠し持ってたのかよ?」


「…………いいや」


「嘘つくんじゃねぇぇぇぇぇぇぇよ! さっきまでボロボロだったくせによ! ありぇねえだろうが!」


「ああ……たしかにそうだな。ありえない」


 だけど、その《ありえない現象》が本当に起きたようだ。

 時を止め、傷が癒えているだけでも――かなり飛び抜けているといえる。


 あとは……こいつを試すときか。


「…………」


 俺はそっと聖剣を鞘から抜き出すと、ゆっくり構えを取る。


「お、おい! なんだよおまえ、その剣は!!」


「……聖剣ヴァルボロス」


「ヴァ、ヴァルボロスだって……!? ふざけんな! 聞いたことねえよ、そんなもん!?」


 そりゃそうだろうな。

 あの声いわく、別の世界から持ってきたものだろうし。


 さすがに警戒したのか、兵士は大きくバックステップをかますや、剣を手に取った。


 本能的に危機を察したのかもしれないな。

 さすがは戦闘スキルを身につけているだけある。


「けっ……うざい野郎だ」

 つまらなそうに唾を吐き捨てる兵士。

「なにがなんだかわからねえが、あんま調子乗んじゃねえぞ! 外れスキル所持者の分際でよ!」


 ……そう。

 いかに強い剣を授けられようとも、俺はしょせん、外れスキルの所持者。

 剣の扱いにはまるで慣れていない。


 だから油断せず、できる限りの力でもって戦いたい。


「死ねぇぇぇぇぇえ!!」


 しびれを切らした兵士が、目を血走らせながら突進してくる。


「…………!」 


 大口を叩いているだけあって、とんでもないスピードだ。戦い素人の俺では、まるで敵わないだろう。

 だが、まったく見えないわけじゃない――


「おおおおおおおお!」


 俺は目をぎゅっと閉じ、がむしゃらに剣を振るう。

 その剣先が――すかっと空気を切った。


「ふん! 当たるかよぉぉぉぉおおお!」


 勝ち誇った笑みを浮かべながら、兵士が剣を振り下ろす。一方の俺は、攻撃をしたばかりで動くことができない。


 その瞬間だった。


「な……な……なんだこれは……っ!!」


 驚くべきことに、兵士の姿が消え始めた。

 手先から腕、そして胴体にかけて、兵士の身体が光の粒子となって消えていく。


「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁぁあ! 俺が、俺がこんな外れスキル野郎に、負けるはずが――!」


 文字通り消えていく兵士に、最後まで言葉を続ける時間はなかった。


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