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吸血忌譚  作者: 腹痛朗
12/26

若人は身を投じる

 「父さん!?母さん!?」


望が叫ぶ。表情には絶望と悲壮が表れていて、息が詰まる。


「どうしたんだい望……って望!?」


「「「ぎゃあああぁぁ喋ったあああぁぁあ!?」」」


源十郎さんを除いた3人のが悲鳴じみた叫びを上げた。始めに広史さんが起き上がり、続いて怜美さんも立ち上がった。女性陣から短い悲鳴が漏れる。僕はもうタネに気付いたわけだけど。


「血糊だなんて、何故そんなドッキリみたいなことしてるんです?」


「やー、デスクワークってのは一段落つくと暇でねぇ、次に書類持ってきた人を驚かせようとしたんだけど……説明願えるかな、アリス君」


広史さんが真面目モードだ、仕事をする大人の顔、という風情である。


「は、はひっ、えーっとですね、昨晩さくばん見つけた反応が出現したので、その場に急行したら、この2人とジャバウォックの連中がいて、彼等が危うく警察に連行されそうなところを連れてきた次第です、はい」


アリスが簡単に事情を説明して、広史さんの顔を窺った。広史さんは難しい顔をしてから、僕の方に視線を向けた。


「さっくん、君は、自分が怪異だという自覚が昔からあったのかな?」


「いいえ、化物なんだと知ったのは、つい昨日です」


答えると、今度は怜美さんが話しかけてきた。


「そうなのね、それより私が気になるのは、望も一緒にいることなんだけど、まさか望も……」


「はい、何か特殊な能力があるらしいんです、それに、僕が血を吸って、多分吸血鬼に……」


「そうなんです所長、彼は話してもいないことを知っていて、なんだかとても怪しいんですよ!」


アリスが熱弁する、すると少し広史さん達の表情が和らいだ。


「まぁ怪しいだろうね、君からしたら。望は僕達の娘だし、さっくんは養子だよ」


アリスがポカンと口を開けて動かなくなった。最初の人間離れした雰囲気はどこへやら、もう同年代の少女にしか見えない。


「僕達の仕事のことは必死で隠していたんだけどね、彼の息子なら、仕方ないのかな」


広史さんは、何か知っているような口ぶりだった、それに、彼、とは僕の本当の父親のことを指しているのか。


「広史さん、怜美さん、知っていることを全部教えてくれませんか、僕が化物だというのは、最初から知っていたんですか……?」


真相が次々に明かされて、わけがわからなくなっていた。そろそろ許容量をオーバーしそうだった。


「さっくんについて知っていることは、君が真祖の吸血鬼の息子だということくらいだよ、ああ、安心してくれていい、親戚というのは本当だから」


僕が幼い頃から、知っていたのか。それを教えてくれなかったことに怒る気はしなかった。言われても信じなかっただろうから。


「ふむ、しかしさっくん、望まで怪異にしてくれたらしいけど、これからどうするつもりなんだい?」


「どうするつもり、って……」


「ここであったことを忘れて、今まで通り生活するのか、それともここで他の怪異相手に戦うのか、親としては前者を推したいのだけど、こういった組織のボスとしては後者でもあってほしいんだよね」


それは……悩んだ。このまま元の生活に戻って、普通の人生が送れるのかわからない。伝承を聞けば吸血鬼は不老不死だと言われているし、昨夜の狼男達は自らの意志で襲ってきたかのように思える。

かといって、ここで怪異と戦うのも、命の危険があるだろう、それに、望を巻き込むことになる。

1人では結論が出なくて、望を見た。


「さっくん、オレはさっくんが傷つくのはイヤだけど、それ以上に、ここまで来て引き下がるさっくんを見たくないぜ、たまにはいいとこ見せてくれ」


そうだ、僕はきっと、どうやってもこれまでと同じだなんてぬるま湯に浸かることは出来ないだろう。アリス達が戦っているのを知っていて見ないフリをするのは無理だと思う。だから、


「戦います、全てを知るために!」


僕の宣言に広史さん達は困ったように笑うのだった。

中々進んでくれません。朔君の家族や望ちゃんの能力が明かされるのはいつになるやら、能力のほうは皆さんアタリがついてるとは思いますが、やはり物語のキーになってきますからねぇ。

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