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失われた書の囁き
詩織と香織は歴史の本を探し続ける。アザリナは「本は声を持つ」と言い張り、ラルティは静かに見守っていた。やがて高い棚から埃をかぶった一冊が落ちてきて、まるで呼びかけに応えたかのようだった。その本は普通に見えるが、表紙には不思議な印が刻まれていて、好奇心を呼び起こす。
詩織は背表紙に手を滑らせ、苛立ちを覚えた。
「だめだ…見つからない。」
アザリナはいたずらっぽく微笑んだ。
「あるわよ。耳を澄ませばね。」
香織は眉をひそめた。
「本に…耳を澄ます?」
ラルティは低い声でつぶやいた。
「物は注意に応える。魔法ではなく、記憶だ。」
アザリナは目を閉じ、棚に手を置いた。図書館全体が息を潜めたように静まり返る。すると、高い棚から埃をかぶった一冊が滑り落ち、床に乾いた音を立てた。
詩織は驚いて後ずさった。
「見つけた…いや、私たちを見つけたのかも。」
香織は慎重に本を拾い上げた。革の表紙は擦り切れていたが、中央には翼と渦が絡み合う不思議な印が輝いていた。
ラルティは首を傾げた。
「その印…普通の歴史には属さない。」
アザリナは小さく笑った。
「ほらね? 本は語るのよ。耳を澄ませば。」
詩織は表紙を撫で、背筋に冷たい感覚を覚えた。その本は普通に見えたが、中には何か特別なものが眠っているようだった




