猫になっちゃった?
貧民街に住んでいた母ちゃんと俺と妹のアリス。
流行り病で母ちゃんも俺も死んでしまった。
残されたのはまだ小さいアリス。
猫に転生した俺は、なんとしてでもアリスを守りたい!
母ちゃんと俺と妹のアリスは、貧民街でなんとか必死で生きていた。
父ちゃんは俺とアリスがまだ小さい頃に、家を出ていったっきり戻らない。
よく酒を飲んで大声で怒鳴って、テーブルの上の木の食器を床に投げ飛ばしていたのを覚えている。母ちゃんは俺達に隠れてよく泣いていた。
俺は父ちゃんの事は覚えているが、2歳離れたアリスは記憶が曖昧らしい。
あんな、ろくでなしな父ちゃんなら、覚えていないほうがましだ。
父ちゃんがいなくなってからは、酒代やタバコ代や賭け事などの、出費が減った分、生活は少し楽になった。
母ちゃんは昼間は市場で働いて、夜は内職をして働いた。俺もアリスも内職の仕事を手伝った。
相変わらず質素だが、三食ごはんが食べれるようになったし、古着や靴も新しく買ってもらえた。
俺達は、お金をためて、いつか貧民街を出て、市場の近くに家を買いたいと夢を語っていた。
母ちゃんは広いキッチンが欲しい。俺は自分の部屋が欲しい。アリスは猫を飼いたい。
赤い三角屋根に白い壁、庭には花が咲いて、窓には白いカーテンが揺れる。テーブルの上には紅茶と甘いお菓子があって、俺達はテーブルを囲んで笑って暮らしている。そんな夢を見ていた。
貧しいけれど、うまくいっていんだ。この幸せが続くと思っていたんだ。
俺が10歳、アリスが8歳になったころ、流行り病で母ちゃんが死んだ。
近所のおばさんの手助けもあり、教会の墓地に埋葬することができた。
母ちゃんは死に際に、俺にアリスを頼むと言った。
俺はこれからアリスを守っていくんだと強い決意を持った。
その数ヶ月後に、まさか今度は俺が流行り病で命を落とすなんて、思いもしなかった。
薄れゆく意識の中、俺は神様にお願いした。
(神様!アリスはまだ小さいんです!アリスが1人で生きていけるまで、そばにいさせてください!お願いします!神様!)
真っ黒な瞼の裏に、光がうっすら透けて見えた気がした。
次に意識が覚めると、俺は毛むくじゃらの中で必死にお乳を吸っていた。みゅーみゅーと何かの鳴き声が聞こえる。
意識はすぐに沈む。
次に意識がもどると、俺は温かい何かに寄り添っていた。目が見えるようになっていて、俺のいる場所は薄暗く、獣くさかったが、安心できた。
再び意識が沈む。
四つん這いで歩き、俺に同じような形の者たちとじゃれ合う。
意識は浮上しては沈むを繰り返す。
何度目かの覚醒を繰り返し、俺は自分が猫に転生したのを理解した。
俺のいるところは何処かの家の軒下らしい。母猫は黒と白のハチワレで、兄弟猫も黒と白の柄だった。自由に歩けるようになると兄弟猫と同じように、寝床を抜け出すことにした。
猫の視点で見ると、この世の中の物が違って見える。建物も人も巨大で、さまざまな雑音。俺は好奇心から行き交う人を隠れて観察していた。
ふと、ここは、貧民街に近い場所だと気がついた。同時に妹のアリスの事を鮮明に思い出した。
(アリス!)
俺は記憶を頼りに人であった時の家へ向かった。




