第72話 新たな仲間#3
リビアが無事に気絶から目覚めたところで、ユトゥスは話を戻した。
「だいぶ脱線してしまったが、ともかく俺は貴様をそばに連れて行動するのは承諾しかねる。
理由は貴様と俺とでは生きる世界が違い過ぎるからだ。
貴様とて知っているはずだ、呪い持ちという存在のことを」
「はい、承知しております。ですが、私個人の意見では、銀髪という素晴らしい髪色をどうしてそこまで毛嫌いするのか甚だ疑問です。
いくら過去にその髪色を持つ人が嫌われるような何かをしたとはいえ、まるで文化のように今の時代にも浸透しているのは気分が悪いです」
「聖王国は呪い持ちと関係が深いというのに、その解釈は意外だな。
いや、それは異世界から来た転生者であるが故の発想か?まぁいい、その意見には俺も賛成だ。
だが、一度張り付けられたレッテルは中々に覆しがたい。信頼を回復するのが難しいようにな」
「それは確かに.......」
「加えて、そのレッテルは国という個人の力ではどうにもできない強大な存在が強調してしまっている。
それによって、今やこの世界では日常の一部、当たり前の一般常識となってしまった。
そうなってしまった以上、俺達の存在は日常を脅かす世界の敵だ」
時に人は刺激を求めて日常に変化を望む。
その願いは美少女に声をかけられたり、王子様に求婚されたりと小さいものから大きいものまで人によって様々だ。
しかし、それらの願いは最低限自分の利益や幸福に繋がるものである。
その願いとは反対に自分の日常が脅かされることは誰も良しとはしないだろう。
それこそ夜道に突然何者かに襲われたり、巨大な魔物が村を襲ってきたりなど。
そして、先のユトゥスの発言の問題点は”呪い持ち”という存在が、それら不審者や魔物といった人々が嫌悪するカテゴリーに分類されることだ。
故に、誰も自分の日常に恐怖を感じる壊され方を望まず、その原因となり得る呪い持ちはその存在が認められず、存在自体が許されない。
例え、悪意のある誰かによってそういうレッテルが意図的に貼られたとしても、世界がそうなってしまったならそれが世界の"正解”なのだ。
「これでわかっただろ、貴様が俺に関わるということはそういう世界に足を踏み入れることだ。
貴様は今までの全ての地位や権威を捨て、親しい存在を欺き続ける.......その覚悟が致命的に足りない」
「そう言われるととても否定できません。
先程の私は完全に欲が先行し、そこまで考えが至りませんでした。
それでその......ちなみに、フィラミアはどういった経緯で同行を許可したのでしょうか?」
「コイツも少し特殊な立場だから.......とはいえ、コイツは勝手な言い分でついてきてるだけだがな。
そういう意味では先程の言葉は説得力が無くなってしまう気がするな。
まぁいい、フィラミア、発言を許可する。特殊な証拠を見せてやれ」
「わかりました」
フィラミアは羽織っていた外套をサラリと脱いだ。
そして、見せつけるように背中を向ける。
その瞬間、リビアは彼女の腰辺りからひょこっと生える羽に目を開かせた。
「え、それって羽......? 可愛くて、自信家で羽あってケモ耳あって、何それ属性盛り過ぎ!?」
獣人なら獣人、魔族なら魔族......それがリビアのヲタク心の常識であった。
過剰なキャラ付けはかえって魅力を半減する。しかし、目の前の人物はどうか。
そんな浅はかな考えを払拭するかのようなマッチしたキャラデザイン。推せる!
そんな馴染みのない感想をこぼすリビアに首を傾げつつ、フィラミアは話始めた。
「私は淫魔族と獣人族との間に生まれた半魔半獣です。
両親のどちらも純血でしたので両方の特徴が現われたのが今の私の姿だと思います」
「なるほど......確かに血統書付きの犬種をかけ合わせたら、見ただけでわかるほど両方ずつの性質を受けたってわかるし」
「なので、種族的に淫魔族であり、獣人族である存在となります。略して淫獣族ですね!」
「待て、それは響き的になんか良くない。獣魔あたりにしておけ。
貴様は変態だがそこまで自分をアピールする必要はない」
「変態じゃありません!自分の容姿を見せつけて主様を惚れさせたいだけです!
その際、そのためなら全裸になろうとも構わないという覚悟を持ってるだけです!」
「なんだ、否定する割には間違ってないじゃないか」
「淫獣......確かに男女を魅了するかのような顔と卑しい体つき.......納得だ」
「受け入れるな。踏み止まれ。そして戻ってこい」
フィラミアの発言によってまたもや話が脱線しかける。
そんな流れに待ったをかけたユトゥスは、再びフィラミアの口を封印し話を戻す。
「ともかく、そういうわけだ。
コイツにとって俺と一緒にいることは”異端は自分一人じゃない”と感じるメリットがある。
だが、貴様には何もない。むしろ、一緒にいることはデメリットしかならない。考え直せ」
ユトゥスは丁寧にリビアの提案をお断りした。
それも全ては彼女の人生のため。わざわざ自分から泥にまみれる必要はない。
しかし、それはあくまでユトゥスの考えだ。言われた本人は違う。
「それでも! 私はどんな時でも推しの助けになりたいと頑張ってきました!
どんな嫌なことがあっても、どんな辛い時があっても、どんな苦しい時があっても推しがそばにいてくれたから! ずっとずっと心を支え続けてくれたから私は人生を頑張って生きれた!」
「だが、それはお前が生きていた前の世界の話で――」
「それでも助けられた事実は変わらない!
その相手が例えユー様とは違くとも、その人の代わりとして私に貢がせてください!
こんなことでしか私の感謝は伝えきれないんです! だから、どうか! お願いします!!」
「........っ」
あまりにも熱量の高い必死の懇願。
彼女の言葉から放たれた言葉の数々は到底一目惚れとな程遠い言葉であった。
きっと一目惚れという言葉も間違いではないのだろう。
しかし、本音としてはこっちの方が近いのかもしれない。
ユトゥスはリビアの口から彼女が異世界転生者であることを知った。
その際、彼女を支えてくれたというソシャゲの推しのことも。
その感謝と愛はそれこそ言葉にした通りなのだろう。
そして、その時の推しと今の自分を重ねている。
だからこそ、触れられる距離にいる今、全力で恩を返したいのだろう。
そこまでの強い覚悟を感じられないほどユトゥスも冷めた人間ではない。
しかし、だからといって簡単に決めていい内容ではない。
この内容はリビアの人生を左右する重要な分岐点。だからこそ――
「主様、主様が優しいことは十分に理解しています。
ですが、女にここまで言わせて断るのはもはや野暮というものですよ」
そして、フィラミアはそっとユトゥスに耳打ちした。
(それに彼女の商人としての情報網は今後の活動において非常に優秀で貴重な力です。
一時の優しさで手放すより、ここ仲間に入れてしまった方がよろしいかと)
「........ハァ」
フィラミアの言い分にユトゥスは大きくため息を吐く。
フィラミアの言いたいことはわかる。
しかし、それで迷惑かけるのは何もリビア本人だけじゃない。
特に生まれつきそういう生き方を宿命づけられたフィラミアやそういう生き方しかできない自分とは全然違うのだから。
だからこそ、これが今の自分にできる最大の譲歩。
「ハァー、わかった。貴様の懇願を受け入れる」
「っ! 本当ですか――」
「ただし、貴様の扱いは俺の下僕。並びに、襲撃の際に無理やり働かされているという体だ。それだけは守れ」
「わかりました! それでユー様のそばにいられるのなら!」
「それでは最初の命令だ」
「はい、なんなりと!」
「今頃心配しているであろう貴様の家族や従者達に貴様の安否を伝えろ。
必要ならば、俺も顔を出す。それが貴様が初めにやるべき仕事だ」
「え、そこまで私のことを......え、好き。いや、大好き♡」
そんなリビアとユトゥスの会話をずっと静かに聞いてたブラックリリーは言葉をこぼす。
『.......なんというかオマエのもとに変な奴が集まるのか、はたまたオマエが変な女にしてるのか』
『どっちでもないと願いたいな』
読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)
良かったらブックマーク、評価お願いします




