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逆転の反逆者、その意に逆らう~職業不明の青年が迷宮で神様から力を貰い、その力で英雄へと至るまで~  作者: 夜月紅輝
第3編 神代遺跡の謎

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第65話 運命の日#2

――ねぇ、この世界を救った勇者って誰か知ってる?


 その質問をアニリスから投げかけられたリビアは首を傾げる。


「勇者レイザクスじゃない? 少なくともそう習ったけど」


 500年前、魔王率いる魔族の軍勢が世界を脅かそうとしたその時、一人の青年が立ち上がった。

 その名も勇者レイザクス。神に力を与えられし彼の者は三人の仲間とともに世界を巡った。

 そして、各地で悪さをする魔族を倒し、さらには親玉である魔王を倒し、世界を救った。

 世界を救った勇者は国を作り、姫と幸せに暮らした。


 リビアが読んだことのある『勇者剣伝録』の内容を簡単にまとめるとこうである。

 この物語は史実を基にして作られたとされており、今なお繫栄する剣王国がその勇者が作った国だ。

 それが事実であり、世の中の常識。疑う余地もない。


 だからこそ、リビアはアニリスの質問を不思議に思った。

 そして返した答えに対し、アニリスは同意を示すように頷く。


「そうよね。私もそう思っていたわ」


「思っていたって......え? 違うの?」


「さぁ、それはまだ判断着かない。だけど、疑うべき物を見てしまったの。

 それじゃあ、二つ目の質問をするわ。リリージアって名前に聞き覚えある?」


 その質問にリビアは脳内検索をかけてみる。しかし、特にヒットしない。

 今初めて聞いた名前と思ったが、どうやらその感覚は間違いじゃないようだ。


「いや、無い.......」


「......そっか」


「あのー、なんかごめんね? 役に立てなくて」


「あ、いや、違うの! もともと期待してなかったというか、知らなくて当然だと思うの!

 実際、私もアレを見るまではその名前の存在すら知らなかったし」


 アニリスは腕を組み、目線を下げて何かを考える。


「ねぇ、もしよかったら聞いてもらえる?」


 そして、再び口を開いた時、語られたのは救助隊として迷宮に潜った時のことだった。

 その話をリビアが聞いた上で、アニリスは再び質問する。


「――この話を聞いてあんたはどう思う?」


「魔王が倒された年代に作られた少女の勇者像......レイザクスではなくリリージアという名前......迷宮再構築の際に露出したとされる現場の状況.......うーむ、イタズラにしては手が込みすぎている」


「それにその像を作った彫刻師ガリウス=オルゲイズって人に関しても少し調べてみたんだけど、その当時宮廷彫刻師として働いてたすごい人みたいなのよ」


「そんな有名人の名を語って、しかも迷宮にその像を放置しておくなんて明らかにおかしい」


「さらに極めつけがこの本の内容。ほら、ここの文を見てみて」


「『イストガルド王国は現在のサブザ森林の南西側』って......つい最近再構築が起きた迷宮じゃん!」


「だから、このリリージアという人物が気になるの。

 なぜ彼女の像がそこに存在し、加えて像を造られるほどの有名人が存在ごと抹消されたのか」


 その仮説を聞いたリビアは「突拍子もない話だ」と思った。

 しかし、安易に否定もできない。

 なぜなら、その内容を裏付けるような情報も出てきてしまったから。

 だからこそ、問題はその仮説を立ててどうするかだ。


「......アニリスはその仮説を立ててどうする気なの?

 確かに、今の常識と正史が違う可能性が出てきたけど、それを掘り明かしてもいいことないよ?

 なんたって勇者が関わってるなら剣王国や聖王国だって黙ってないだろうし」


「わかってるわ。ただ、私が見たものがなんだったのか知りたかっただけ。

 それに多くの人が昔の歴史がそうだったからといって、今が変わるわけでもなし。

 例え、信じるものに裏切られたショックはあっても、誰も今の生き方を変えたくないでしょうしね」


「結局、自分の生活で手一杯かぁ......わかる気がする。

 自分の生活が脅かされるわけでもなければ、おおよそ周りのことは他人事に感じるよね」


 リビアは前世の世界での自分の生き方を思い出し、アニリスの言葉にしみじみと同意した。

 すると、アニリスは本を閉じて席を立つ。


「ま、なんにせよ、この知られざる歴史を紐解くって感じはワクワクするし、もう少し調べてみるとするわ」


「なら、せっかくだし手伝うよ。なんたって暇を持て余してるし」


「ふふっ、なら、手伝ってもらおうかしら」


 それから、リビアはアニリスとともに調べ物をしつつ、雑談に花を咲かせた。

 その時間は彼女がこの屋敷に来て以来一番楽しい時間と感じるほどであった。


 そして時間は流れ、パーティの数時間前までやってきた。


「うわぁ、まだまだ来んじゃん......」


 カーテンをから少し顔を覗かせ、窓から外の様子を眺めるリビア。

 視界に映る正門には続々と馬車が止まり、どこぞの貴族達が集まってきていた。

 そんな光景を見るたびにいよいよ逃げ場が無くなったことを感じてくる。


「リビア様、もう少しシャキッとしてください。

 そんなお顔ではせっかくの素敵なお召し物が台無しですよ」


「いいよ、別に。どうせだったら黒いドレスにすれば良かったのに。

 なによ、白いドレスって。まんま花嫁みたいな格好させるじゃん」


「そう言われましてもそれがバンズ様からの命ですし、立場的にも断れませんし。

 いっそあの男を矯正してやる! って気概で行った方がいいです」


「そうね、去勢した方がいいかもね」


「そうは言ってません」


 すっかりテンション駄々下がりのリビアにフランメは困惑の表情をする。

 しかし、リビアにとってはこれが本音の感情なのだから仕方ない。

 ゼロに何をかけようとゼロなのだ。無いものは上げられない。

 そんなリビアをなんとか盛り上げようとフランメはとある話題を出した。


「そ、そういえば、バンズ様が何か特別な催しを企画してるとか言ってましたよね? なんだか気になりませんか?」


「どうせ有名な楽団を呼んで舞踏会とかそんなんでしょ?

 あの男に大した企画力があると思ってないし。

 どっかの誰かが襲撃してきてそれと戦うとかだったら少しは褒めてやるけど」


「それ、ただのリビア様の願望じゃありませんか......」


 そうすることでしかこの場から逃げ出す方法がないからだ。願わずにはいられない。

 そう、今の自分はまさに望まぬ結婚をされようとしている姫も同じ。

 物語では王子様が攫いに来てくれるが、あいにく王子様候補は見つからなかった。

 加えて、リビアとて現実は理不尽で変わらないことぐらい理解している。

 だから、少しぐらい逃避したって罰は当たらないだろう。


―――コンコンコン


 ドアがノックされた。お呼び出しの時間だ。


「時間みたいですね。いいことがあるよう祈っています。

 安心してください。私はどんな時でもリビア様の味方ですから」


「ありがと。行ってきます」


 部屋を出れば、お迎えのバンズ側のメイドが立っていた。

 そのメイドは一礼して「ご案内します」と先を歩き始める。

 その後ろをリビアは張り付けた笑みを作って、後ろに続いた。

 やがて、大きな両開きのドアの前に立ち、それがメイド達によって開かれる。


 視界に映るは大きなパーティー会場。

 そして、笑顔で拍手するどこぞの貴族達。

 大歓声の声に嬉しさは一ミリたりともない。

 今後の未来を憂うことで手一杯だから。

 故に、耳は自然と周囲の音をカットしていく。

 そう、中学高校と休み時間を一人で過ごした時のように。


 気が付けば、リビアはバンズの隣にいた。

 今いる場所はちょっとしたステージになっているのか全体が上から見下ろせる。

 すると、バンズの何かの呼びかけで4名の男女が中央に集められた。

 同時に、入口から十数名の騎士が入り込み、4名を取り囲む。


 気になったせいで自然と周囲の音が耳に入ってくる。

 そして、聞こえたのは隣で盛大に話すバンズの声。


「これより私の領主就任及び花嫁の紹介を祝った催しを開こうと思います!

 そして、私の厳正なる判断のもと選ばれた幸運なるよこの4名には褒美を与えようと思います!

 では、皆さんご注目ください! 私から彼らに与える死の褒美を」


 ........は?

 何を言っているのかわからなかった。

 案の定、周囲の貴族達は困惑している。

 すると、バンズは続けて言った。


「この者達、実は魔族なんですよ。今は変装していて普通の人間に見えますけどね。

 まぁ、実際に見なければ疑う人もいるでしょうし。証拠を見せましょう」


 そう言ってバンズはパチンと指を鳴らす。

 瞬間、4人の腕の一部が光った。恐らく腕輪型の魔道具だろう。

 そしてそれが光った直後に、4人の顔から魔族特有のこめかみから生える角が表れた。

 4人の2人は背中または腰から翼を生やしていた。


「ご覧ください! 本物の魔族でしょう?

 実は数年前から私は内密に魔族と取引をしてまして......というと聞こえが悪いですね。

 このようにして逃げられないようにおびき出すための準備をしていたのです。

 そして今この時、剣王国に忠誠を誓っている証として魔族を殺したいと思います」


 僅かに手が痺れた気がした。一体何を見せられてるのか。


「どうだ? 素敵な余興だろ?」


 バンズがこそっと言ってくる。い、イカてる!?

 いくら自分が魔族と敵対する聖王国出身だからといって、ここまでむごいことを許容できるほどメンタルは強くない。え、殺すの? 本当に殺すの!?


「おい、話が違うぞ! なんなんだこれは!?」


「そうよ! あんたを信頼してたからこそここまで来やったのに!」


 魔族が恨みがましそうにバンズに言葉をぶつける。

 しかし、優位に立っているバンズはどこ吹く風と言った様子で返答した。


「よく言うよ。そっちこそ実は裏切ろうとしてたんだろ? そういう鼻は効くんだ、俺。

 それから逃げようとしたって無駄だ。

 それは<弱体化>と<魔力遮断>の魔法が付与された特別製。

 まもなく、お前達は抵抗の術もなく殺される! ここがお前達の処刑場だ!

 恨むなら自分が魔族であることを恨むんだな」


「ふざけんな――」


「これ以上の問答は無意味だろう。催しというのはテンポが大事だ。

 では、ご覧いただこう! そして、ご唱和ください! 我ら剣王国に末永い繁栄あれ!」


「「「「「我ら剣王国に末永い繁栄あれ――」」」」」


 え、嫌! 見たくない――


―――パリィン!


 ギュッと目をつむったリビアが聞いたのは魔族の断末魔では無く、ガラスが砕け散る音だった。

 その音にリビアはゆっくり目を開ける。

 その瞬間、彼女の瞳には生涯忘れもしない光景が映った。

 

 パーティー会場に侵入した二人組。

 そのうち一人はミステリアス感を醸し出すように全身を隠すような外套に包まれ、深く被られたフードの奥から除く狐の仮面、それから月の光にわずかに反応した宝石のような赤い瞳。

 そして、まさしく夜の世に現れた謎に包まれしヒーロー感。

 リビアはその時確かに思った――あ、好き。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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