2-55:ミョルニル
炎骨スルトから剣技を受けたからだろうか。僕は、父さんとの修練を思い出していた。
最初の頃。本当に本当に、剣を持った最初の頃。
僕は鋭くて冷たいこの金属の塊が、とても恐ろしく感じた。ダンジョンで自分にこれが向けられるなんて想像もできない。日常的に刃物と対峙している父さんを、尊敬を通り越して不思議に思っていた。
『父さんは魔物と戦うのが怖くないの?』
思い出の中で、父さんは僕の頭をなでた。
その時はまだ10歳くらいだったから、手のひらが頭を覆った。
『怖いさ』
『じゃあ、どうして戦いに出るの?』
ほんの子供だった僕でも、冒険者が危険な仕事だっていうのはわかっていた。
父さんは少し困ったように上を向いて、笑った。
『怖いのはみんな同じなんだ。みんな怖い。お向かいのおじさんも、隣の粉屋さんも、父さんもね。みんな魔物は怖い』
『じゃあ……』
『違う、だからさ』
父さんは僕の目を見つめた。
『みんな怖いなら、誰かがやるしかない。なら、父さんがやろうと思うんだ』
怖いと知っているから、周りの人みんなが怖がっていることを、感じることができる。
そのうえで恐怖をねじ伏せて、前に進んでいく。
思い出せた。父さんはそういう人だった。
『血の夕焼け』――最後の戦いでユミールに挑んだ時も、そんな立ち向かう意思があったのかもしれない。
『もちろん、最初から怖くない人も少しはいる。けれど怖いと思っても、震えを押さえて戦いに行く。だから勇気と呼ぶんじゃないかな』
怖いからこそ――前に出る。怖さを知ってなお踏み出すことを、確かに『勇気』というのかもしれない。
子供心に、僕はそう思ったんだ。
父さんとの修練が始まったのは、その頃だろうか。
『剣は、そのためのものなんだ。武器の部位には、守り、戦うための仕掛けがいくつもある』
敵の武器を受け止める鍔。突くための切っ先。重心を調整し、時には打撃もできる柄頭。
『剣にはハンマーだって隠れている。探してごらん、練習と知識は、いつかお前を助けるから――』
リオン、と父さんが僕を呼ぶ。声は次第に揺れて、揺れて、僕を現実に引き上げた。
しっかりな、とぽんと肩を叩かれた気がした。
◆
「リオン!」
呼びかけられて、僕は壁際に倒れていることに気づく。前にいるのは、ソラーナだ。
その姿を見て僕は心臓が止まりそうになった。
「そ、ソラーナ……?」
女神様は、右肩から左腰までを失っていた。ものすごく小さくなってしまった体、その切れ目から、黄金の光が漏れている。
ソラーナは真っ白の顔で笑った。
「よかった。安心して、君は無事だ」
「そ、ソラーナは……」
「わたしは平気だ。神は肉体を持たない、だから……まずは君を守りたかった」
そう言ってほほ笑む。こんな姿になって痛みがないはずがない。涙がこぼれそうになった。
遠くから炎骨スルトの唸りと、魔物の吠え声が響いてくる。どちらもひどく恐ろしかったけれど、それ以上にソラーナが傷ついてしまったことが悲しかった。
「そんな顔をしないでくれ。最初に言っただろう? わたしは、君と共にある神でいたいと」
だから、と続けた。
「君を守れてよかった。だが……少し、休む」
言い残してソラーナは光になって弾けた。体にまとう『黄金の炎』が強まったように思う。最後の力で、神様は加護を維持してくれたんだ。
手に握ったままの短剣から、金貨が剥がれ落ちる。
ちりん、とこんな時でも、涼し気な音だった。
光の剣となっていたソラーナは、僕らの盾にもなったんだろう。だから、あんなに傷ついてしまった。
「う……」
怖さと情けなさが交じり合う。勝手に萎える手足を、胸の奥の熱さが叱りつけていた。
立て!
立って、構えるんだ。
「平気かい?」
目の前に影がさす。神様ロキだった。
ミアさんや、フェリクスさん、そしてサフィも駆け寄ってくる。みんなかなりの傷を負ったみたい。ミアさんは左腕を押さえて、フェリクスさんも右腕に大火傷を負っていた。
もしソラーナが身を挺して守ってくれなかったら――そう考えただけでぞくりとする。
癒しの能力を使いたいけれど、薬神シグリスは上で小人を守るのに精いっぱいだ。何より、魔力はまだ温存した方がいいと思う。
ミアさんが鎖を口にくわえながら尋ねた。
「リオン、戦えるかい」
「は、はい……!」
やり直しだ。
20メートル近い巨体が、遠く熱気に揺らいでいる。もう一度、スルトに近づくところからやらなければならない。
魔物の数も元通り。スルトの火が封印の氷を溶かし、魔物をこの階層へ呼び寄せているのだから。
さらに、スルトは必殺の炎剣を持っている。
「あれは炎骨スルトの武器、『枝の破滅』とも、レーヴァテインとも呼ばれた武器だ」
ロキが腕を組んで、目を細める。
一度は世界を焼き尽くそうとした巨人だ。もし僕達が敗れるようなことがあれば、小人達は全滅して、アルヴィースの街、やがては王都までこの火は届いていくのだろう。
ソラーナがかつて神話をみせてくれた。その時に感じた、ルゥや母さんが火に包まれるという不安が、現実のものになる。
――オオオッ!
スルトが吠えた。狂乱して僕らへ襲い掛かる魔物の群れ。
そこに、巨大弓から魔法や大矢が打ち込まれた。瞬く間に魔物達が灰になり、スルトに向けて一直線へ通じる道ができた。番兵ゴーレムが魔物にぶつかって、少しでも回廊を維持していく。
「これって……」
頭に耳慣れない声が響いた。小人王様の言葉だ。
――我々小人も、魔力と仕掛けを振り絞ろう!
小人王様は、どこかで僕らの様子を見ているのかもしれない。壁際で赤い宝珠がきらりとした。
上から10体くらいの人型が――番兵ゴーレムがさらに降りてくる。
――目星があるのだろう?
僕は顎を引いた。
目指すは、見いだした弱点。
スルトの両膝にある『ゴーレム核』だ。巨人の膝下は、土と岩で作られた義足で、ゴーレム核を壊せば敵は立っていられない。
決意が強くなる。『負けちゃだめだ』という思いから、『みんなで勝ちたい』という意思に。
「行きます! 援護をっ」
叫ぶと、ミアさんとフェリクスさんが息を揃えてくれた。
「おうっ」
「はいっ」
駆け抜ける。距離はたったの50メートル。
<太陽の加護>、『黄金の炎』であれば一瞬で駆けぬけられる距離だけど、魔物がいるなら話は別だった。小人がこじ開けた穴は、殺到する魔物で見る間に埋まる。
それを鎖斧と魔法、そして番兵ゴーレムが少しでも長持ちさせた。
ガルムの炎弾が真横から襲い掛かり、スルトが炎剣を振り上げる。
「っ」
間一派で回避。炎の余波が、きっと対面の壁まで届いただろう。
炎剣の振り下ろしは、みんなも避けたと信じたい。
でも――これだけじゃない!
「リオン、避けろ!」
ミアさんが悲鳴をあげる通りだった。
振り下ろしの後、右に避けた僕を刈り取るように、大薙がくる。炎の剣が、扇状に床を洗っていく。
「目覚ましっ」
サフィが刻んでくれた『迅』の文字。風の精霊シルフが飛び出して、追い風を吹かせてくれた。
丁度、近くにいたゴーレムを駆けのぼり、足場のように使う。跳躍して、薙ぎ払いを回避した。
距離はあと30メートル。
魔物がいない空間を駆け抜ける。床が熱い。速く駆け抜けないと、靴ごと焼けてしまいそうだ。
「グオオオッ」
目の前に、2つの巨体が立ちふさがった。どちらも8メートル近い、『炎の巨兵』だ。巨人は手を組み合わせ、僕を叩き潰そうとする。
左右にステップして避けると、傷口がとても痛んだ。
歯を食いしばって耐えた。女神様はもっと痛かったはずだから。
あと、10メートル。
僕は、魔力の城壁の隙間に飛び込んだ。
「1つっ」
短剣ですれ違いざまに、膝のゴーレム核を切りつけた。
「2つ目っ」
炎骨スルトがよろめき、倒れる。目が驚愕に見開かれていた。
神様と、精霊、二つの力で得たスピードは、炎骨スルトの想像も超えていたのかもしれない。
頭が下がってくる。僕は<雷神の加護>を使って、急所を、頭を狙おうとした。
――おのれ!
スルトが炎の剣を地面に突き刺した。
ここ、攻撃の直下だ。
リスクを忘れていた。
僕を誘い込んで、いっそ逃げられない距離まで引き付けて、炎剣の爆発に巻き込むつもりなんだ。
フェリクスさんが叫び、魔法を使う。
「リオンさん! こっちへ!」
僕は反射的に地面を蹴っていた。あれほど苦労して近づいたスルトから、今度は遠ざかる。
走れ、走れ、走れ!
20メートルほど離れた位置に、仲間がいた。番兵ゴーレムが集まって、即席の壁になってくれている。
裏からじゃらりと鎖が飛んできた。
無我夢中で掴む。
ミアさんがぐいと壁の裏側へ僕を引き寄せた。
「氷壁……!」
フェリクスさんが番兵ゴーレム達の壁を、魔法で補強。サフィもゴーレム達に鎚を振るい、『祝福』で強化していた。ロキの魔力も加わる。
小人王様の声も頭に響いた。
――私も、宝珠から守護の魔力を送るが……!
ダメ押しとばかりに、二度目の終末の炎が爆ぜた。
◆
雷神トールと、世界蛇ヨルムンガンドは何合目ともなる打ち合いを続けていた。
戦況は一方的だった。
牙。毒液。柱のような尾がしなる。全てを鎚ミョルニルでいなしつつも、トールの体は着実に傷ついていた。
夜は白み始めている。血と泥に汚れた雷神の体と、闇色に照り輝く大蛇の体は、対照的だった。
――楽しいわねぇ。
世界蛇は金の瞳を三日月形にして、喉を震わせた。鎌首をもたげて、浮かぶトールに目線を合わせる。
――あなたは、街や、鉱山を庇っている。この私が破壊しないようにねぇ。おかげで動きが読みやすいったらない。
周囲では木がなぎ倒され、両者がどこで戦ったのは明らかだった。
もし誰かが上空から見れば、そんな戦場の跡が、だんだんとアルヴィースの街や鉱山から遠ざかっていくことに気づいただろう。
市街に大蛇が躍り込めば、大勢に被害が出る。だからこそトールは傷を増やしながらも、体を張って大蛇の進路を妨害していた。
――しかも、あなたは力を出し切れていない。
大蛇は真っ赤な口で笑った。
――それは封印のせい? それとも何かを狙っているのかしらぁ?
トールは無表情を貫いた。背負った雷雲からは強風がやってきて、赤髪を乱している。
背後の鉱山、そこに刻まれた裂け目から火が走った。
――スルトの炎ね。
トールは瞠目して振り返る。大蛇がぐばりと大口を開け、笑い声を夜空に響かせた。
――角笛の少年が焼け死んだのは残念だけどぉ……この状況なら、今後、邪魔になる可能性の方が高いしねぇ。
火山噴火のように、山の裂け目から炎が吹く。トールはゆっくりと首を振った。
「ふん!」
分厚い掌を大蛇にかざすと、背負った雲から電光が走る。雷を幾条も束ねたような轟音が、辺りを揺らした。
雷撃のほとんど地面に落ちる。土ぼこりが大蛇の視線を塞いだ。
煙が晴れた頃、ヨルムンガンドは言葉を失った。
トールとの距離が開いている。雷神が後ろへ――下がったのだ。
――今更、撤退?
世界蛇と戦神は何度も戦ってきた。戦いに誇りを持つはずの戦神が世界蛇を前にして自分から下がるなど、ありえないこと。
山と街を守ってボロボロのくせに、鉱山へと引き下がっていくトールの顔は誇らしげだった。
「言っただろう!」
はっはっは、とトールは笑った。愉快で、痛快で、楽しげに。
白み始めた空を後ろに下がりながら、トールは鎚を掲げてみせた。
「人間をなめるなと。何度も立ち上がる。体は小さいが――」
ぐっとトールは左の親指で胸を指さした。
「ここにでかい意思がある」
トールの胸には、赤い光が灯っていた。
◆
大空間は静まり返っていた。暗いのは、熱で魔石灯が壊れたせいかもしれない。
薄闇に、火を纏った炎骨スルトが浮かび上がっている。
――なぜ?
スルトの声が響いた。
――なぜ、お前たちは、燃え尽きていない?
僕は焼け落ちた番兵ゴーレム達の外側へ出た。結果としては、スルトは両膝を犠牲にして僕を誘い込んだことになる。けれど必殺の炎は、僕らを焼き尽くすことはできなかった。
けほっと僕は咳き込む。周りが熱い。息ができているのが不思議なほどだ。
たぶん、理由はたくさんあるんだろう。
ソラーナが炎の剣とぶつかりあって、力を削いでくれたこととか。
小人の番兵ゴーレムが壁になってくれたこととか。
ロキや小人王様も魔力で僕らを守り、フェリクスさんとミアさんも僕が逃げるのを助けてくれた。
最後の最後で、用意していた耐火マントが効いたのかもしれない。裾の方は縮れて、だいぶ痛んでしまったけれど。
――我々の炎が、世界を焼き尽くす炎が、ちっぽけなお前独りを焼けないなど。
僕は巨大な顔を睨みつけた。目に涙がたまるのは、周りが熱すぎるせいだけじゃない。
「違う! 僕は、みんなに助けられた! 神様が、小人が、ミアさんがフェリクスさんが、みんなが守ってくれた! だから――!」
全力で戦ってきた恐ろしさが、遅れてやってくる。
けれど神話の巨人に向けて叫んだ。
「独りじゃない!」
だから、負けない。
――オオオッ!
スルトが再び火勢を強める。
その時、迷宮が揺れた。天井の裂け目から、赤い光がやってくる。
同じ色の明かりが僕の胸にもあった。
「リオンっ」
トールが僕に、巨大な金鎚を放った。金槌は僕の頭上で輝くと、光になってはじけた。
魔力が降る。
雷神トールの、絶大な魔力が。
『世界蛇との決着を、ふいにしてきたんだ。気張れよ、英雄』
ドォン、とすさまじい音を立てて大蛇が外から天井の裂け目にぶつかった。
――スルト、気を付けなさい!
膝をついた炎骨スルトは、怒りに燃える目で僕を見下ろしている。
大蛇の声が降った。
――トールは陽動にかかったのではない! 戦神の本命は、最初からこの少年……!
――まさか人間に、スルトの討伐を本気で託していたなんて……!
今更に気づく。敵は、きっと僕がスルトの相手になれるなんて、想像もしていなかったのだろう。
その油断が、計算違いが、きっと今の状況を生み出した。
僕は雷神トールの力を受けて、踏み出した。頭に神様の声が響く。
――――
<スキル:雷神の加護>を使用しました。
実績を達成。
新しい能力が付与されます。
――――
スキルは神様との絆で生まれるもの。だとすれば、トールとの絆が深化すれば、新しい力が得られるのかもしれない。
王都でソラーナとの間に『太陽の娘の剣』が生まれたのと、同じだ。
僕は巨大な魔物、炎骨スルトの前に立つ。
かつて戦神トールがいくつもの巨人に、自分よりも大きな存在に、立ち向かったように。
同じ意思が絆を強めている。
胸に宿る赤い光は、スルトの炎より熱い。
――――
<雷神の加護>を使用します。
『戦神の意思』……自分よりも強大な敵と戦う時、一撃の威力が強化。
――――
<太陽の加護>による『黄金の炎』と、<雷神の加護>の『戦神の意思』が、同時に僕にかかっている。
踏み出す。
たった一つの跳躍で、スルトの正面へ踊り上がった。
――オオオッ!
スルトが吠えて、魔力障壁を展開する。パチン、と気が抜けるほど小さな、指を鳴らす音がした。
横合いから聞こえたと思う。僕もスルトもそちらを見た。
トリック・スターがそこに浮かんでいた。
「ロキを忘れてもらっては困るねぇ」
スルトの目が見開かれた。巨大な肩、その横に浮かんだ黒いローブ――魔神ロキを睨み据える。
「平和な時代、君たち巨人からも魔術を学んだりしたのだよ。君らの魔術も学び済みだ」
怒り狂ったスルトが右手を振るう。ロキの体が、ごっそりと削がれた。
「やれやれ、この僕が捨て身とは。芸がないが……」
ロキは僕を見つめ、薄まりながら笑いかけた。
「頼む……いや、託すよ、リオン」
展開されかけた魔力障壁が、霧散する。スルトという戦いの中心を守る魔物も、城壁も、もう存在しない。
僕は精霊シルフの追い風を受けた。まっすぐに空中を進む。
胸に宿った赤い光がどんどん強まっていく。
ソラーナの時は剣だったけれど、今、頭に思い浮かんだのは『鎚』だった。
燃焼する巨人の顔が近づいてくる。熱で鼻が痛い。目が焼け落ちてしまいそうだ。
僕の周りには魔力が降っていて、今にもスキルにさらなる力が目覚めそうだった。いや、みんなにチャンスをもらったのだから、目覚めなきゃいけないんだ。
でも――
『……適性がやや足りないか』
トールの無念そうな声。
「そ、そんな……!」
もらった魔力が、僕の手の中で形にならない。降ってくるそばからトールの魔力は霧散していくだけだった。
ロキの声が追ってくる。
『ソラーナとの絆が、やはり特別なのかもしれないねぇ。君の魔力操作に対する適性は、やはりそれなりだ』
このチャンスを受け止める力が、才能というものが、僕にはないのかもしれない。
それはそうだ。
外れスキルで、元々は落ちこぼれで、父さんのような英雄でもない。
こんな大事なときに、僕自身の弱さが足を引っ張るなんて……!
トールが叫んだ。
『リオン、それでも想像しろ。俺の力を、俺の鎚を!』
「そ、想像……?」
魔法は想像力――想いが像をなす力ってかつてロキは教えてくれた。
一生懸命念じる。頭に浮かんだのは、父さんと訓練したことだった。
あの大きな手がこうするんだと教えてくれたような気がして、僕は短剣を持ち替える。
掴むのは、短剣の刃。
指を守るガントレットを頼りに、刃を掴んで、鍔の方を上にする。
十字の剣や短剣は、ひっくり返せばハンマーの形をしている。殺撃――本来は長剣で使う、鍔で相手を打撃する構え方だ。
手に『ハンマー』を握ったことで、僕は、僕自身がトールの『鎚』を握ることをぐっと確かにイメージできた。
妹からもらった銀色のガントレットが心強い。指を守るだけじゃなくて、お兄ちゃん、とルゥが手を添えてくれているみたいだ。
――焼いてやる! 焼き尽くしてくれる!
スルトの顔はもう眼前。
諦めない。
足りない魔法適性は、家族との『思い出』で補う。
雷神から借り受けたその武具の名を、喉が弾けそうなほど叫んだ。
「ミョルニルッ!」
――――
<雷神の加護>を使用します。
『ミョルニル』……雷神から、伝説の戦鎚を借り受ける。
――――
逆に持った青水晶の短剣。雷光が纏い、輝く巨大な鎚を顕現させる。
轟音と共に、僕はミョルニルを終末の巨人へ振り下ろした。
お読みいただきありがとうございます!
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あと2話ほどで第2章も終わりですが、章の最後で『お知らせ』をさせていただく予定です。
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