↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/205

2-20:雷の槍

 神様からいただいた、いくつものスキル。

 組み合わせられるのは二種類だけ。でも相性がよければ、互いの効果を強めあい、とんでもない力を発揮する。

 それがロキの<魔神の加護>がもたらした能力『二枚舌』なんだ。


「ヴォオオ!」


 ミスリル・ゴーレムの咆哮。

 鎖斧のうなり。魔法の爆炎。


「リオン、何か考えがあるみたいだなっ」


 応戦しながら、ミアさんが声を張ってくれた。


「やってみな! 少しぐらいなら、壁になってやれるよっ」


 にっと力強い笑みは、僕の背中をバシッと叩いてくれたみたい。

 勇気が沸き上がる。フェリクスさんも微笑みを浮かべて、そんなミアさんのカバーに入ってくれた。

 これが、パーティー……か。


「シグリス……新しい能力があったよね?」


 閃きが、生まれかける。

 ミスリル・ゴーレムが目の光を僕へ向けた。


「うわっ」


 危険を察知されたんだ。

 距離をとる。入れ違いにミアさんがまた前衛を引き受けてはくれるけど、長くは任せられない。

 魔法を弱める障壁があるから、フェリクスさんの炎も効果が薄い。このままだとミアさんの負担が大きすぎる。


『……シグリスの槍、ですか?』

「う、うん! あれ、魔法の効果を遠くまで届けられるんだよね?」

『はい。回復効果や、スピード上昇などの補助効果を、投げ槍に載せて遠くの信徒へ届けるのです』


 空にいる女神様が、遠くの信徒を守るための力だったのかもしれない。


「もし、『槍』としても使えるなら――」


 僕が話した作戦に、神様はみんな驚いていた。

 いっそ驚愕した、っていう反応が近いかもしれない。


『ほ、補助用だって言いましたよね!? た、確かに槍は槍ですけど……』


 シグリスが特に声をあげている。

 ロキとトールは冷静だった。


『可能だねぇ。それをできるようにするのが「二枚舌」だ。トールはどう……?』

『……前に出て、戦っている戦士はリオンだ。戦士が言うなら異論はねぇ』


 決まりだ。

 僕は仲間に声を張った。


「ミアさん、フェリクスさん!」


 ゴーレムが岩を放り投げてくる。横に転がりながら、僕は叫んだ。


「ゴーレムの動き、止められますかっ?」

「策があるのですか?」

「はい!」


 ゴーレムが攻撃を本格化させる。丸太みたいな指で僕に無数の岩を投じてくる。

 当たれば背骨が折れるだろう。

 必死に避けるけれど、土煙で一瞬、方向を失う。

 それでも声を出し続けた。


「ごほっ……動きを止めるだけでいいんです! 大きな一撃を狙います!」


 土煙に、赤い光。

 探知しなければ死んでいた。手を組み合わせての叩きつけが、地面にめり込んだんだから。


「うっ!?」


 飛び退いても砕けた岩が飛んでくる。いくつかの小石が頬を切った。

 ルゥの手甲がなければ、顔を庇った腕もボロボロだった。

 ゴーレムの声が空気を震わせる。


「フォ……フォフォ……」

 

 まるで笑いだ。歪な巨体が無力な僕らを嘲っている。

 父さんからは感情のない魔法生物って教わった。こんなゴーレム、本当にいるんだろうか……?


「リオン、逃げな!」


 ミアさんの鎖斧がゴーレムの右腕をからめとる。


「でかい一撃だってっ? 言うじゃないか」


 <斧士>の能力『不動』だ。その場で踏ん張るというシンプルな効果だけど、鎖斧と組み合わせれば、相手を拘束する技になる。

 ゴーレムも簡単には動けない。


「オオオォ!」

「へっ、なら放してやるよ」


 ゴーレムがさらに力を込めたところで、ミアさんはスキルを解いた。踏ん張りすぎていたゴーレムが、バランスを崩して膝をつく。

 すぐに立て直してくるけれど、3人で集まる隙には十分だった。

 作戦を告げる僕に、仲間は顔を見合わせる。


「――だそうですが。ミア、どうですか?」

「こっちは余裕。あんたこそ、足引っ張るなよ戦士団」


 そう言いあってから、2人は僕へほほ笑んだ。


「了解だ」

「こちらもです」


 ミアさんが前衛、フェリクスさんが後衛。

 僕の攻撃が通ると信じて、仲間がトドメを預けてくれた。


「オオオオ……!」


 唸りをあげるミスリル・ゴーレムを、僕らは睨み返す。

 一瞬の硬直だ。

 破ったのは、奔る鎖だった。


「投擲はこっちも得意なんだよっ」


 鎖斧が舞い、ゴーレムの頭に絡みつく。振りほどこうとした手をフェリクスさんの炎が襲った。


「頭を下ろしな!」


 ギシッ。

 鎖が軋む音がエリア全体に響き渡る。ミアさんはもう一度、『不動』で相手を押さえこもうとしているようだ。

 ゴーレムの叫びで地面が揺れる。目に宿った光が猛烈に輝き、魔力を総動員しているのがわかった。


「ヴォオオオオ!!」

「ちょ、ちょっと無理か……?」


 ミアさんの声が震えたところで、魔法が割り込む。


土葬(グラフト)


 ミスリル・ゴーレムの足元で床が崩れた。

 巨体が膝まで土に沈み込む。フェリクスさんが顎をなでると、ミアさんは笑いかけた。


「……やるじゃないか」

「あなたもね」


 ゴーレムは両腕を使って這い上がろうとしていた。魔法への耐性なのかそれとも宿した力の強さなのか、だんだんと全身が抜け出てくる。


「……ゴーレムは、直立した時に最も効率よく全身を守れるように装甲されています。つまり、腰を曲げた状態では……!」


 フェリクスさんの小冠(コロネット)がきらりとした。

 ゴーレムの胴体を守るのは、太古の武具による鎧。未踏エリアから取り込まれたものだけど、体を前に曲げているせいで背中側に隙間ができていた。

 狙える、今なら。


「いきますっ!」



 ――――


 『シグリスの槍』……遠隔補助。魔法効果を槍にのせ、届ける。


 ――――



 それは補助のための力。たとえば『白い炎』のような回復効果を、投げ槍にこめて遠くへ届ける。

 ――本来なら。


『古代、シグリスの仲間、ヴァルキュリアたちはそれぞれの能力を持っていました。この槍もその一つ。魔法効果を遠くの戦士へ届けるものですが……』


 今の僕には、神様同士の力を組み合わせることができる。



 ――――


 <スキル:雷神の加護>を使用しました。


 『雷神の鎚』……強い電撃を放つ。


 ――――



 頭がくらくらする。

 本来は補助魔法をこめるところに、雷をこめる。

 雷撃が充填された槍だ。

 <魔神の加護>の真骨頂、加護と加護との融合。

 ミスリル・ゴーレムは今にも穴から出てきそうだ。もう時間はない。


『……いいか? これがダメなら、今度こそ、絶対に俺を封印解除しろよ。神に頼るのは恥じゃない』


 トールが念押し。

 ソラーナが励ます。


『いや、君ならやれる。焦らず、正確に、しかして勇気をもって、だ!』


 槍を、投じた。


「やぁ!」


 ミスリル・ゴーレムに向かって槍が突き進む。『黄金の炎』による身体能力向上もあって、槍は鎧の間、柔らかい部分に突き刺さった。

 ミアさんが斧を解くと、ゴーレムは両腕をついて倒れる。


「ヴオオ!」


 魔法を遠くに届けるための『シグリスの槍』。

 ミスリル・ゴーレムの魔法障壁を突き抜けて、切っ先が核の近くに届いているはずだ。

 でも終わりじゃない。

 槍に宿っているのは、トールの雷。

 雷は刺さった槍を伝って、もう弾かれることはなく、ゴーレムの中枢へと送り込まれた。四肢から雷が迸り、ゴーレムは黒煙をふいた。


『はは、まるで()()()()()だねぇ! ヴァルキュリアよっ』

『……私の槍、こんな使い方した人、初めてです』


 ロキが笑う。

 自分でやっておいてなんだけど、すごい効果だ……。


「ヴオ、オオオ……!」


 土でできた体が崩れ、取り込んでいた武具も弾けるように散らばっていく。


「オオ……!」


 下半身はもう崩壊している。

 ゴーレムは脚部を置き去りにして、上半身だけで僕の方へ這ってきた。

 伸ばした手が震えているのは、怒りなのかもしれない。頭にある青い光は明滅しながらも、僕の方を、いや――


「金貨を、見てる……?」


 そんな気がする。

 古代の巨人が、神々に届かぬ手を伸ばしているような。


『……この気配』


 ソラーナの声がした瞬間、ゴーレムは完全に停止した。上半身も崩れて、岩と土の塊へと戻る。

 むき出しになった赤黒いオーブは、もう力を失っているようだった。

 静まり返ったボス層。

 呼吸を落ち着けて、僕は口を開いた。


「勝ちましたね」

「ええ! お見事ですっ」


 フェリクスさんが肩をすくめ、ミアさんと手を打ち合わせる。

 ぱんっと爽やかな音が鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました! もふもふ可愛く、時々アツい、王道ファンタジーです!
転生少女は大秘境スローライフを目指す ~スキル『もふもふ召喚』はハズレと追放されました。でも実は神獣が全員もふもふしてた件。せっかくなので、神獣の召喚士として愛犬達と異世界を謳歌します~

【書籍化】 3月15日(水) 小説第2巻・漫画第1巻が発売します!
コミック ノヴァ様でコミカライズ版は連載中です!

4vugbv80ipbmezeva6qpk4rp5y4a_ba7_15w_1pr_on12.jpg

書籍サイトはこちらから!

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。