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さる武器屋の英雄伝  作者: 上雛 平次
第四章 熱鉄を叩き続ける日々
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第三十八話 後悔せし亡骸 後

2013/11/23 編集


貫通して見えてしまうくらいに透明度が低かった。

貫通して見えてしまうくらいに、透明度が高かった。


母親(魔神)と、出会ったからだ。

母親と、出会ったからだ。


始まりは、東の国。二人が出会ったのは、荒野であった。

始まりは東の国。二人が出会った場所は、鉱山を降り、東の国へと向かう途中の荒野。


外で何かを学んで来いと無理矢理に追い出されたことが、原因であった。

外で何かを学んで来い、と半ば無理矢理に追い出された父の機嫌が悪かったことも、二人が出会った要因の一つ。


表現のミスと誤字脱字の訂正です。

申し訳ありませんでした。

 入る必要は無い。体の自由も効くし、ただ扉が一人でに開いただけなのだから。

 けれど、一度興味を抱いてしまったら、どんなに怖い事でも確かめなければならない。三人は目を合わせて頷き合う。

 足を前に出し、部屋へと入る。

 中は暗いが、開いた扉から射し込まれる光が奥まで続いているのを見るに、大広間に当たる場所なのかもしれない、と推察する。

 ミュエルは背からハンマーを、リーナはレイピアを、ラルフは古びた聖剣を握り、構える。

 しかし、何も起きない。

 起きない代わりに、それが目に入った。

 数十メートル程の高さと広さがある部屋の中に、巨大な花が咲いていた。

 近くに寄って見れば、花の形をした黒々しい水晶だと分かる。これが一体何なのかは分からない。だが、大広間のど真ん中に、わけの分からない物を置いた理由が分からない。

 騎士一同は周囲を回ったり、上に乗ったりしたが、壊れる様子も無ければ、動く様子も無い。

 すると、再び上に行ったラルフが、転がるように地面に落ちる。

 近寄るリーナとミュエルは、ラルフの体が異様な程に震えている事に気が付く。

「ど、どうしたの」

「ひ、人が中にいるんだ!」

 立ち上がるラルフは、花びらを乗り継いで上に立つと、二人も来るようにと促す。

 渋々といった様子で、上へと向かう二人。ラルフの側に立つと、驚きで目を見開くのだ。

 黒い水晶は、光が無いせいで分かりにくいが、奥が透き通っていて、真上から地面まで、貫通して見えてしまうくらいに、透明度が高かった。

 リーナは水晶に手を当てて、食い入るように中を見る。

 水晶に興味があるわけでは無い、もちろん、中に人が居ることに対してだ。

 しかし、何度見ても本当に、中に人がいる。

「これは、何です?」

「分からないね、とりあえず、ここを出ようか」

「はい」

 ミュエルとラルフは武器を納めると、部屋から出ていく。後に続こうとしたリーナは気を感じて振り向くと、水晶が一瞬だけ輝いた様を見逃しはしなかった。

 

 ――アリシアは、ぽつりぽつりと、料理をしながら昔話を始める。


 武器屋の子が武器屋を営む事は誰が決めたのか、原点は分からないが、それは古くから決められていた事であり、破ってはいけないことだと教えられた。

 武器屋だけではない、道具屋に始まり、騎士に続く。とにかく、親が行ってきた事であれば、子はそれを受け継がなければならないのだ。

 けれど、ハイルの父はならなかった。

 なりたくても、なれなかったのだ。

 母親と、出会ったからだ。

 始まりは東の国。二人が出会った場所は、鉱山を降り、東の国へと向かう途中。

 馬に乗り、東の国へと武器造りを学びに来ていた父親。

 お爺さんから、外で何かを学んで来い、と半ば無理矢理に追い出された父の機嫌が悪かったことも、二人が出会った要因の一つ。

 砂が視界を無くし、父親は気配を察する。

 禍々しい程に心地良くて、身がとろけてしまう程に恐ろしい気配。

 父親は一度だけ、魔神では無いが、魔獣と遭遇してしまった事がある。

 奈落が閉じられ、帰る事ができなくなった魔獣は、野に放たれ、魔物と化してしまっていた。普通の魔物と違う点と言えば、知性があるところだろうか。町中に現れた魔獣は、父親を見つけると襲いかかったそうだが、助けに来た騎士たちに倒されてしまったという。その時に、魔獣は死に際、瘴気を放出して騎士の精神を汚染させたのだ。騎士がどうなったのかは分からなかったが、父親も少し、感染してしまっていた。

 それから、一週間の月日が経ち、東に居る現在。父親に入った瘴気を媒介にして、奈落は開かれる。

 強い魔神であれば、人を介さなくとも奈落を開ける。けれど、力の弱い魔神は別。人という奈落を作るための道具を使わなければ、奈落を開くことすらできないのだ。

 その降り立った魔神はとてもひ弱で、武器屋である父にでさえ、勝てなかったという。

 それが、母と父の出会いだと、聞かされた。

 奈落を開き、こちら側へと来ることができるのに、奈落を通り、向こう側へと戻れなくなってしまった母。

 父はかわいそうだと思ったのか、東の国で生活をすることになった。

 徐々に、体に異変が出始めている事に気が付いた父は、東を離れようと母に話を打ち明けようとした時だった。

 お爺さんから、中央へと戻ってくるように伝達に来た精霊。父はどうすべきか考えた結果、中央に向かうことを決めた。

 そこで更に数十年。シエルと、ハイルが産まれる。

 母が魔神だと、お爺さんに隠していた父。その嘘がばれる瞬間である。

 最初に産まれたシエルは、首筋に。

 次に産まれたハイルは、手の甲に。

 描かれた銀の痣が、二人を蝕むことは分かっていたはずなのに、求めてしまったがために、同時に不幸を生み出してしまった。

 魔神であるのに、心が優しき母は、魔神であった過去を捨て、人としての未来を歩もうとしていた。父も、その母を支える事を決めた。

 しかし、完全に母が魔神の力を失うことはできない。その周囲にいるだけで、精神汚染を引き起こす要因になることは決まっていた。

 そして、その力が二人を覚醒させてしまう事態になることも、決まっていた。

 だから、母は父と一緒に家を飛び出してしまったのだ。泣きじゃくるシエルとハイルを残して――。

昨日ぶりです。上雛平次です。


更新する早さが遅くなってしまい、申し訳ありません。

就職活動を控え、話の内容も中々、大きな進展が出ずにいるせいか、気分があまり上がりません。

とにかく、書き終える事を目標に頑張りますので、こんな駄文でも良ければ是非、読んでいってください。


では、また明日。

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