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婚約破棄?どうぞご自由に。無能な王太子に捨てられた公爵令嬢ですが、父が王国を見限って独立したので私は優雅に旅に出ます  作者: 玉響すばる


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第15話 剥奪される王太子



 王城――王太子宮。


「……何の用だ」


 苛立ちを隠さず、レオルドは顔を上げた。


 呼び出し。


 それも、王と宰相の連名。


 嫌な予感しかしない。


「入れ」


 扉が開く。


 現れたのは、宰相と――王妃。


 そして。


 王。


 三人が揃っている時点で、異常だった。


「……なんだ、その顔は」


 レオルドが笑う。


「まるで、葬式でも始めるような」


「レオルド」


 王が口を開く。


 低く。


 重い声だった。


「話がある」


「奇遇ですね。こちらもです」


 レオルドは立ち上がる。


「いい加減、あの公爵家の件――」


「黙りなさい」


 王妃が遮った。


 それだけで、空気が変わる。


「……母上?」


「これ以上、無知を晒さないで」


 冷たい。


 完全に冷え切った声だった。


「……何を」


「レオルド」


 王が言う。


 視線を逸らさない。


「お前を、王太子の座から外す」


 沈黙。


 理解が追いつかない。


「……は?」


「廃嫡する」


 言い直し。


 より明確に。


「何を言っているのか、分かっているのか?」


 レオルドの声が低くなる。


「分かっている」


 王は即答した。


「分かっていて、言っている」


「ふざけるな」


 一歩、前へ出る。


「誰がそんなことを認める!」


「すでに決定事項です」


 宰相が淡々と告げる。


「貴族会議においても承認されております」


「……何だと?」


 レオルドの目が見開かれる。


「各家はすでに判断を下しました」


 感情のない声。


「王家の維持か、個の生存か」


 一拍。


「結果は、明白でございました」


 それはつまり。


 全員が、自分を切り捨てたということ。


「……嘘だ」


 レオルドが呟く。


「そんなはずがない」


「現実です」


「黙れ!」


 叫ぶ。


「すべてはあの女のせいだ!」


 空気が凍る。


「あの女がいなければ、こんなことには――」


「まだ言うか」


 王の声が、低く落ちた。


 それだけで、場が支配される。


「……父上」


「お前は、何も分かっていない」


 静かな断罪。


「すべては、お前の選択の結果だ」


「違う!」


 即座に否定する。


「私は正しかった! あの女は不要だった!」


「不要だったのは、お前だ」


 言葉が止まる。


 完全に。


「……何を」


「お前が王太子である限り、王国は維持できない」


 事実だけを並べる声。


「だから切る」


 それだけだった。


「……ふざけるな」


 レオルドの拳が震える。


「私は、王太子だぞ」


「だった」


 宰相が訂正する。


「すでに、過去形でございます」


 現実が、確定する。


「……認めない」


 低く呟く。


「私は、認めない」


「認める必要はありません」


 王妃が言う。


「事実は変わらないのだから」


 完全に切り捨てていた。


 そこに母としての情はない。


「……っ」


 言葉が出ない。


 思考が回らない。


 すべてが、崩れていく。


「レオルド」


 王が最後に告げる。


「お前は、王族としての責を果たせなかった」


 一拍。


「その結果だ」


 それで終わりだった。


「……衛兵」


 宰相が静かに言う。


 扉が開く。


 武装した兵が入ってくる。


「王太子――いえ、レオルド殿下をお連れしろ」


「待て!」


 叫ぶ。


「私は認めない! こんなもの――」


 腕を取られる。


「離せ!」


 抵抗する。


 だが。


 誰も助けない。


 誰も見ない。


 それが、すべてだった。


「――離せぇ!!」


 叫びが、廊下に響く。


 だが、その声は。


 もう、誰にも届かない。


 こうして。


 王太子レオルドは。


 その地位も。


 権力も。


 すべてを失った。


 その頃。


「……朝の空気は気持ちいいですわね」


 私は外に出て、大きく伸びをした。


 穏やかな朝。


 変わらない一日。


 だがその裏で。


 ひとつの運命が、完全に断たれたことなど。


 知る由もなかった。

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