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護らなければ

村の外れに身を潜め、息を殺す。

通りにはアクティウム兵が数人、槍を肩に掛け、悠然と歩いていた。

彼らの背後には、村人から奪い取った積荷の山。

木箱や籠の中には、パン、チーズ、果物……生き延びるためには喉から手が出るほど欲しいものばかりだ。


(……今しかない)


低い背を活かし、納屋の陰から陰へと移動する。

兵たちの視線が別の方向に向いた瞬間、積荷の山の後ろへ滑り込む。

箱の蓋を開けると、香ばしい小麦の匂いが鼻をくすぐった。

パンを二つ、硬いチーズを一塊、果物を数個——袋に詰め込む。


(背が小さくてよかった、なんて……初めて思ったな)


笑みがこぼれる。

だが罪悪感も胸を刺す。

僕が弱いばかりに。父上や、ライオスであればきっと果敢に敵兵を倒ずだ。すまない。本当にすまない。


殿下を生かすためだ。俺は自分に言い聞かせた。

誰にも見つからぬよう、裏路地を抜け外れた森への小径へ足を速めた。


袋の重みが心強い。

王女様にこれを見せれば、少しは安心してくれる——そう思った矢先。


(……ん?)


森の手前、見慣れた農家が視界に入った。

そこに立つ、青い紋章の入った肩鎧——アクティウム兵2人。

背筋が冷たくなる。

一人は家の中へ入り、もう一人は森の方へ向かって周囲を探っている。


(まさか……殿下が……)


袋を地面に落とし、胸の奥が焼けるように熱くなる。

気づけば、足はもう農家の壁際まで走っていた。


窓から中を覗くと、暗がりの中、ベッドの下に身を縮めた王女様の姿が見えた。

かすかに震える肩。唇が強く結ばれ、必死に息を潜めている。


(絶対に……守る)


剣を握る手に力がこもる。

台所で物色している兵士は背を向けていた。

今しかない。


床板の軋みを最小限に抑えて近づく。

だが一歩踏み込んだ瞬間——ギシリ、と木が鳴った。

兵士が首をわずかに傾けた。


その瞬間、僕は飛び込み、顎の下を鋭く切り裂く。

呻き声と共に兵士がのけぞるが、俺は間を与えず腹に突きを入れた。

刃が骨をかすめ、温かい感触が腕に伝わる。

兵士の目から光が消えるまで、剣を離さなかった。


その時、剣が光出した。まるで魂を奪ったかのように。同時に俺の体に何か魔力が流れてくるのを感じる。


なんだ、、いや今は集中しろ。


息が荒くなる。

ベッドの下から怯えた瞳が俺を見ている。

だが——終わっていない。


外から足音が近づく。

森を警戒していたもう一人の兵だ。

家の中へ飛び込んだその目が、床の死体を捉えて見開かれる。

その一瞬の隙に背後へ回り、柄で後頭部を叩きつける。

膝が折れる音と共に倒れた兵の首筋に刃を滑らせ、確実に息を止める。


まただ。剣が光って、俺の体に何かが入ってくる。


悪くない。むしろ気持ちいい。


血の匂いが室内に広がる。

外はまだ静かだが、胸の奥で嫌な予感が膨らんでいった。


(もう……一刻も無駄にできない)


王女様を守り、王都に戻る——その決意だけが、剣を握る手を支えていた。


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