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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第二章 やわやわと調査する

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9 化学物質が五臓六腑へと浸透し、神経系を通じて脳に奏でる、素晴らしき協奏



          ******



 ――ここで、時は少し前後しつつ、場面は変わる。

 薄暗い、地下室とおぼしき空間。

 煉瓦造りに、西洋とオールド朝鮮様式の折衷の空間は、上質にして気品の溢れる空間であり、上流階級が賓客を招いてパーティをするにも、申し分はないと思われるほどでもある。

 ただ、そのような空間の中にいて、


 ――ゴゴゴ……

 

 と、おぞましくも存在感を放つのは、アールヌーボー風の椅子、と――

 “それ”に、まるで拘束されたように座る――、いや、実際に、拘束されている“客人”の姿。

 そして、その客人とされた男こそ、美形のビジュアルにして屈強な元格闘家の実業家インフルエンサー、先ほど話題にあがった、ドラコンであった。

「……う”、う”ぅ”――! ぐぅ”ぅ”ぅ”ー!!」

 猿轡のようなものを口にはめられたドラコンだが、恐怖に萎縮したようになりながらも、何か痛みに――耐え難い激痛に呻いていた。

 強張ったように震え、涙が駄々漏れる彼の表情には、先日の――『ボコボコに返り討ちにしてやる』との威勢は、もはやどこにもなかった。


 そう、である――

 心底の恐怖と、耐え難い苦痛を――、いや、激痛を、いま現在味わっている最中だった。

 それは胃の、潰瘍であったり、魚介からのアニサキス症などは比ではない!!

 のたうち回っても足りないほどの、“内”から来る激痛――!!

 恐らく、口内も、喉も、食道も胃も、不可逆的にズタボロになるほどの損傷――!!

 医療行為を尽くしたとしても、回復するのは絶望で、この苦痛から逃れるには、いわゆる、命を絶つより他にない。


 ただ、“それ”も残念なことに、この椅子の拘束によって叶うことがない。

 また、ショック死することもないよう、気を失うこともないように、薬剤を投与されているという入念ぶりでもある。

 そんな、精神も修復可能に折れ、絶望するドラコンのもとへ、


 ――カツーン……カツーン……


 と、足音を響かせながら、数人の人影が現れる。

 朝鮮帽子を被った、執事のような雰囲気の者たち。

 その真ん中には、主人――、主催者と思しき影の者が。

 主人なる者は、そのまま、ドラコンの前に来る。

 そうして、まずは、執事の者たちから、

「――どうぞ、こちら、ベリーティーとヤマカガシの毒液のブレンド茶でございます」

 と、告げられ、茶器と茶碗を受け取る。

 そのまま、主人なる者は、飾らぬも優雅な佇まいにて、茶を淹れる。

 次に、

 ――フ、ァァ……

 と、漂う香りの中、呻いて藻掻く客人を前に、試飲を行う。

 ――ズズッ……

 と、“茶”が、喉をとおる。

 春のさわやかさを感じるストロベリーの香りが、五感と――、そして、化学物質が五臓六腑へと浸透し、神経系を通じて脳に奏でる、素晴らしき協奏――

 まこと、結構な御茶である。

 そのかたわらから、

「う”っ!? う”、う”、う”う”ぅ”ぅ”ぅッー!!!」

 と、もはや声帯が完全に破壊された男の悲鳴が聞こえながらも、

「……」

 と、主人なる者は、ただ静かにして動じることのない。

 その、これから客人に茶をふるまわんとする佇まい、所作は、穏やかにして美しいものであった。

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