70 これがホントの、『スタンド能力』ってヤツ? なんちゃって
(3)
――グワァ、シャッ!!
と、振り下ろす手は、妖狐の神楽坂文の頭を掴む!!
「こんの!! ふざけてんのかぁぁ!!!!! クソ化け狐がァァ!!!!!」
令嬢Xは激しくブチ切れたまま、
――ゴシャァァンッ!!!
と、勢いよく!!
怒りに任せて妖狐の頭を地面に叩きつける!!
それも、一度だけでなく、
――ゴンッ!! ゴンッ!! ゴンッ!!!
と、何度も繰り返し、鈍く軋む音が響く!!
その、美麗な女性の外見にもかかわらず、繰り出される力はヒグマなどの猛獣レベルの怪力――!!
いや、それらを遥かに凌ぐ強力な、さながら巨大な工作プレス機械のごとく超怪力で――!!
もし、これが妖狐でなく人間の頭であれば、ペシャンコに潰されたスイカのように、ひとたまりもないだろう!!
そうして、何度か叩きつけ、
――シーン……
と、塵が多少舞いつつも、いったん静まりかえった。
よく確認できないものの、妖狐は、ピクリ……と動かなくなったようにも見える。
そして、
「……」
と、令嬢Xは、ゆるり――と、その視線をパク・ソユンやカン・ロウンたちへと向ける。
「ひぃっ!?」
ビビるドン・ヨンファだけでなく、
「――!!」
「ちっ――!!」
と、カン・ロウンとキム・テヤンにも戦慄が走る。
もし、妖狐が冗談でなく本当に動けなくなったとすれば、状況的にかなりマズい。
そんな中、
「……」
と、ジッ……と、パク・ソユンは令嬢Xの方を見ていた。
そのパク・ソユンと、令嬢Xの目が合う。
「――ねぇ? 分かっているよね? ソユン? 貴方たち?」
「……」
怒気混じりに微笑する令嬢Xに、パク・ソユンはジトッ……とした無表情で対峙する。
もし妖狐が起き上がらければ、このまま、令嬢Xはパク・ソユンをはじめSPY探偵団メンバー全員を殺しにかかるのは明白だった。
すると、そこへ、
「それか、さぁ……? ソユン? この、壊れちゃったキツネの代わりに、貴女を蹂躙させてくれたら、考えてあげなくもないわよ?」
と、令嬢Xは妖しい目で、何の加虐嗜好か癖か分からぬが――、“歪んだ提案”をしてきた。
だが、そんな提案も、
「は? 嫌に決まってんじゃん、ばーか」
と、パク・ソユンは即答しつつ、先ほどのように気の抜けたバカ呼ばわりする。
「また……! 貴女と言う人は、下品な言葉遣いをッ――!」
「いやいや、今のアンタが言うの?」
再び気に障って苛立つ令嬢Xに、パク・ソユンはつっこむ。
そのようにしていると、
「――なら、もういいわ。この鞭で、貴女の原形がなくなるまで、壊してあげる」
と、令嬢Xは見切りをつけ、再び鞭をギリッ……と握る。
その時、
――フ、ラッ~……
と、半ば、地面にめり込むようにして倒れていた妖狐が、何とか、ゆっくりと身体を起こした。
その気配に、令嬢Xは振り向く。
「何? まだ生きてたの? 化け狐」
冷酷な目を向ける令嬢Xに、
「ふ、む……。アレくらい、では……、ハァ、ハァ……、私は、殺せんからな」
と、妖狐は、息を切らしながらも答える。
「おい! 全然回復してねぇじゃん! 狐ッ!」
と、キム・テヤンが声を飛ばしたように、その銀髪はさらに白髪混じりになり、顔も少々ヒビ割れ、口から血が垂れるという、明らかに妖力が回復してないのが見て取れる状態だった。
それを聞いて、
「あらぁ? やっぱり、弱っちゃっているのねぇ? キツネぇ」
と、令嬢Xが嗤う。
「ふ、む……、それで、も、ハァ……、ハァ……、人間の、貴様が……ガハッ……! 私を、倒すのは……ハァ、ハァ……、不可能、であると、思う……、ぞ」
「アハッ! 強がってるけど、息絶え絶えじゃない! キツネっ!」
途中吐血し、脂汗を垂れながらもドヤ顔する妖狐に、令嬢Xがさらに声をあげて笑う。
そんな状態でも、再び、妖狐は令嬢Xの前に立ちはだかろうとした――
その時、
――スッ……
と、その妖狐を下げるように、パク・ソユンが前に出た。
「ここは、私にやらせてよ? タヌキ」
そう、振り向くことなく聞くパク・ソユンに、
「貴、様、――」
と、「――次の治療は、ないぞ」と、妖狐は制止しようとしたが、思い留めた。
そうして、前に出るパク・ソユンに、
「は? 私に立ち向かう気? ソユン?」
と、令嬢Xは、殺意のこもった視線を向ける。
そんな令嬢Xに、
「うん。さっきも、理科室スタンドでアンタの足折っちゃったしね。これがホントの、『スタンド能力』ってヤツ? なんちゃって」
と、パク・ソユンはローテンション・フェイスのまま、ふざけておちょくってみせる。
次の刹那――!!
「だ、か、らッ!! ふざけてんのかってんだよっ!!! こんのアバズレがぁぁああああ!!!!!」
と、再び激高した令嬢Xが鞭を振りかぶり、パク・ソユンに襲いかかる!!
そのスピードは先よりもさらに早く!!
音速も二倍にならんかという凄まじいほどの超高速――!!
それが正面から繰り出され、なおかつ捉え難い動きをする鞭という武具なれば、避けようも見切りようもないだろう!!
そんな、無謀ともいえるパク・ソユンに、
「ちっ!!」
と、妖狐も咄嗟に手を出そうとする中、
「じゃあ!! 望みどおり跡形もなく蹂躙してあげるわ!! ソユンッ――!!!!!」
と、まさに鞭がッ!!
パク・ソユンの身体を破壊し四散させようとせんとした!!
その刹那ーー!!
「――!」
と、何と鬼神レベルの業かッ――!!
パク・ソユンはその鞭の動体を完全に見切るや、
「フンッ――!!」
と、槍術のごとく!!
具現化したチェーンソーを鞭へと突き立てる!!
その同時――!!
――スパッ!! ドォーンッ――!!!!!
と、刃先を入れた瞬時に!! 爆音とともに鞭が飛び散り四散する――!!
「な”っ――!?」
令嬢Xが驚く、その僅かの隙、
「――ヌッ!!」
と、パク・ソユンは気合を入れるとともに、今度はブォォンーー!! と唸るチェーンソーで令嬢Xに足薙ぎを見舞い!! その両足を切断する!!
「ぐっーー!?」
切断箇所から支持を失った令嬢Xが、鞭を放して崩れかける!!
だが、その崩れ落ちようとする瞬間――!!
「こぉぉの!!! クソアバズレがぁぁああああ!!!!!」
まさに令嬢Xの執念か――!? 崩れ落ちながら右手でパク・ソユンを叩き潰そうとする!!
対するパク・ソユンは足薙ぎの動作から完全に復元しておらず、防ぐにも回避するにも際どい状態――!!
しかし、次の瞬間――!!
――シュッ!! バシッ!! バシッ――!!
と、いつの間に放たれたのか!!
妖力仕掛けのホウセンカのごとき植物が弾け、花から針が飛ぶ――!!
「ソユンッ!!」
と、叫んだのは、その“植物”の主のドン・ヨンファであり、その同時、
「がッ――!?」
と、令嬢Xに針が貫通し、僅かに隙をつくる――!!
それを見逃さず、
「――さって、手を切られた時のお返ししたげる」
と、パク・ソユンは言うとともに、
――グォォォン!!
とチェーンソーを華麗に振り上げ、令嬢Xの右腕を、スパッ――と、宙に舞わせていた。
そのまま、
ーードサッ……
と、令嬢Xは地に伏し、以って無力化される。
すなわち、パク・ソユンは、令嬢Xに勝ったことになる。
次のポーカーの遠征を月末あたりに考えているが、名古屋か大阪か、ワンチャン東京か、もしくはそのまま金沢でするか迷い中。
◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)
・00巻 重慶の幽鬼
・01巻 スタンボロバンの棍棒
・02巻 白色の考察
・03巻 白の衒奇的介入
◆◆ 年間予定タイトル
・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす
・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす
・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす
・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』
・5月 『黄色い壁』
・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』
・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』
・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』
・9月 『メキシコからの変な依頼』
・10月 未定タイトル
・11月 未定タイトル
・12月 冷たい結晶華




