7 モデル衣装を着こなしつつ、スタイリッシュにEDMやハードスタイルなど
――それで、その異能力というのはさておき。
むしろ、そのような、ある種のバトル系の能力というのは――、窮地のときであったり、何か、潜入したり囮的に操作するときには役に立つのかもしれぬ。
ただ、基本は、“世に溶け込む“中で得られるのが、情報というものだ。
そうしているところ、
「――ソウ、そろそろ、配信の時間だよ~ん」
と、仕事仲間の男の、呼びかけてきた。
「おっ、けぃ~」
と、ソウこと、パク・ソユンはやわやわと準備を始める。
これからしようとするのは、ウェブ上での、DJイングの動画配信だ。
モデル衣装を着こなしつつ、スタイリッシュにEDMやハードスタイルなどのダンスミュージックをDJプレイし、そこそこ人気ではあった。
高層階の、スタジオ――
その眺望をバックにするが良いのだろうが、ただ、いまは昼間である。
外は映さずに、ブラインドを落として締めきっての、映像技術による投影と、オールド朝鮮様式の家具調度――
それらと近代的なDJギアを組み合わせたセットで、撮影に臨まんとしていた。
なお、スタジオの後ろには、ガラス越しではあるが、DJソウのファンや視聴者たちが集まっていた。
「……」
パク・ソユンは、やわやわと準備しつつ思う。
モデルである、自分――
“例の”、先日の“招待状”が届くまで、その活動をしつつも調べていた。
そうして、自分の観察したところ、業界内や、その人間関係の範囲内で、“茶会の首謀者”と思しき、怪しい者の影は、いまのところない……
まあ、同じSPY探偵団で、実業家をしているドン・ヨンファと同じく、交友関係であったり、仕事上の関係は、ここソウルを中心に広くもっているため、ときにヤバい人間やグレーンな会社などの情報というのも、手に入らないこともなかった。
実際、いままでの調査してきた案件で、そういうのはいくつも調べてきた。
だが、しかしーー
中には、“いる”のだ。
そうした、異常というか、変わった趣向を以って犯罪を行う人間というのは。
そういうわけで、今回の“招待状”というのも、そうした人間や組織による愉快犯的なものとも推測し、調べていた。
ただ、そんな自分に、敢えて“招待状”が来たということは……
何か、あるのだろうか?
常人であれば、恐怖し、慄くような“招待状”であるのだが。
これが、“自分に招待状が来たという事実”が、ある意味でチャンスになるというわけではないが、……何か、調査を進展させる糸口になろうか?