69 エアギターならぬ、エア注射
「……ねぇ? こっち向いてよ、キツネさぁん♡」
令嬢Xが、誘うような声で言いながらも、さらに抱き締める力が増す。
そんな中、
「ふぅ、やれやれ……」
と、妖狐は呆れたように溜め息しつつ、確認する。
まったく……、このまま、普通に攻撃するだけでは――、ヤツに苦痛を与えてしまえば、ヤツはそれを力へと変換させてしまう、か……
仕置きにもならんし、面倒なヤツだ。
では? そうすると、ヤツにすべきことは――
と、妖狐は、そこまで考えたところで、
――くるりっ……
と、振り向き、令嬢Xと正対した。
「あら? やっと振り向いてくれたのね」
そう、微笑んで言う令嬢Xに、
「ふむ……」
と、妖狐は曖昧に答える。
そんな妖狐の顔を、令嬢Xは、ジッ……と見る。
「とても……、美しい顔ね、キツネさん……」
「……」
令嬢Xは、うっとりした目で――、虚ろにも微笑みながら続ける。
「女の私でも、見惚れ、陥ちてしまいそう……。まあ、貴方は妖狐だから、性別が分からないけど……」
そう令嬢Xが言うように、確かに――、このドラえもんみたいなナニカこと妖狐の神楽坂文だが、エッチな女医の格好をしているにもかかわらず、その性別は不詳だった。
なおかつ、ともすれば、男以上に男性的なものを感じさせるところすらある。
そんな風に、令嬢Xが妖狐に惹かれかけた。
その時、
――ぷっ……、す――
と、何か音がするかのように、妖狐が片手で、令嬢Xのこめかみ辺りに注射をするかのようなジェスチャーをーー
すなわち、エアギターならぬ、エア注射をして見せた。
「は? 何し、てんの……?」
令嬢Xが、一瞬……、表情をピクリとさせる。
その次の刹那、
――ピィ、ンッ――!!
「ーー!」
と、令嬢Xは、“何かの感覚”のパルスが脳内に――、そして、全身に走るのを感じた。
「……?」
令嬢Xが、感じる違和感を考える。
何だろうかーー?
痛みなどは、あるいは、気持ち悪さなどの不快な感覚などは全くない。
いや、“全くない”というのは――
「――!!」
と、そこまで思考が及んだところで、令嬢Xは察してしまった。
「ふむ。気がついたか? 貴様には、我が妖力を用いてな……、少々オカルトチックなのだが、医療行為をしてな」
妖狐がドヤ顔で、どこか煽るように告げる。
「何を、した……?」
と、先ほどまでうっとりしていた令嬢Xの表情が、急変する。
そんな令嬢Xに、
「ああ、めんごめんご♪ ちょっち、貴様の異常痛覚を治療してやろうと思ったのだが、手違えてしまってな。貴様の痛覚を、一切合切、無くしてしまったのだ」
と、妖狐は、さらに火に油を加えるように答えた。
次の瞬間、
「何てことしてくれんだァッッ!!!!! こん狐ぇぇッッ!!!!!」
と、先ほどまでの上品さや恍惚とした表情はどこへ行ったのかーー!!
令嬢Xは豹変するがごとく!! 妖狐に向かって激高した!!
同時に、
――ブンッ――!!!!!
と、超怪力で振り下ろされる手が!! 妖狐に襲いかからんとする!!
ひとつの投稿あたりの分量、区切り方などの変更を検討中。
◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)
・00巻 重慶の幽鬼
・01巻 スタンボロバンの棍棒
・02巻 白色の考察
・03巻 白の衒奇的介入
◆◆ 年間予定タイトル
・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす
・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす
・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす
・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』
・5月 『黄色い壁』
・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』
・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』
・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』
・9月 『メキシコからの変な依頼』
・10月 未定タイトル
・11月 未定タイトル
・12月 冷たい結晶華




