64 とりあえず、“タイ~ホ”しとこっか?
――ザッ、ザザ、ザザザッ……!
と、迫る気配は、すぐそこまで来ていた。
「……」
細目の従者の目が、さらに険しくなる。
(ここまで来たということは、途中で警備に当たっている者たちが、無力化されたということ、か――)
細目の従者は、そこまで悟った。
「御主人様を、御守りしますよ」
「ええ――」
リーダー格の、細目と女の従者が、覚悟を決めるように言葉を交わす。
同時に、以心伝心するかのように、この場にいる十人ほどの従者らが、即座に臨戦態勢に入るも、
「あら? そんな、気を遣わなくても、」
「御主人様、貴女は、狙われる立場なのですよ」
そんな大げさなと言う令嬢Xに、細目の従者が言う。
そのようにしていると、
――パチンッ……!
と、どこかから響いた、指パッチンの音――
続けて、
――タッ、タタッ……
と、先のデジャブか――?
靴が、タップダンスを踏もうとするような音がするとともに、
――タッ、タッ、タッタカ――♪ タッ、タッ、タッタカ――♪
と、扉の前に控える従者たちは、まるでプロモビデオのように踊り始める。
「り、リーダー! ま、また体が勝手にッ!!」
従者の一人が慌て、
「ちょっと! 貴方たち! それぐらい解術しなさいよ!」
と、女従者が怒鳴る。
その時、
――ゴシャァン……!!!
と、これまた先のデジャブのごとく――!
けたたましく、分厚い扉が蹴って開けられるとともに、
「おいコラァ!! よくも仲間をやってくれたな!!」
と、叫ぶキム・テヤンと、
「私たちの、敵を取らせてもらいますよ」
と、カン・ロウンがなだれ込むように現れる。
また同時に、令嬢Xの後ろから、
――グ、パァッ……!!
と、今度は何と! あろうことか、土壁が大きく穴を開くように割れるとともに、
「いや、ちょっと、人を死んだみたいに言わないでよ」
と、白のカチューシャに、同じく白の、肩から上を露出させた清楚感のあるファッションのパク・ソユンが登場し、続けて、
「そ、ソユン、何もこんなとこから出なくても、」
と、黄色スーツに、妖力仕掛けの装華を身にまとったドン・ヨンファも姿を現した。
すなわちーー
その装華の力を以って、館の躯体内部をくり抜き、異空間と接続し、分厚い壁の中から現れるというあり得ない登場をやってのけたわけだった。
「だ、大丈夫ですか!? 御主人様!」
虚を衝かれて女従者が叫ぶ。
「ええ、心配なさらずに」
主人Xは、落ち着いたまま振り向く。
「ところで、何ですの? 貴方がた? 不法侵入ですよ?」
「は? 何言ってんのよ? 犯罪者が?」
パク・ソユンが、いつものイラッとした表情で“犯罪者”と呼んで返す。
「犯罪者ーー、ですと? 何の根拠があって、御主人様に無礼なことを――」
細目の従者が、主人を守るように前に出つつ、表情を少しばかりピクリとさせる。
その従者を、
「お下がりなさい――」
「ご、御主人様、」
と、後ろに下げながら、令嬢Ⅹが前に出る。
「貴女、私を“犯罪者”と仰いましたが……、いったい? 私が、何の犯罪をしたというのでしょうか?」
「は? 露骨にシラを切るわけ? アンタが茶会の主催者――、主人でしょ? “茶会”とか称して毒劇物を飲ませる、頭のイカれたことしてたくせに」
確かにシラを切る令嬢Xもそうだが、このパク・ソユンも、露骨に証拠など出さず、待ったなしにチェーン・ソーを異能力によって具現化して見せる。
「……」
「……」
両者、しばし、無言で対峙しつつ、
「――それで? もし、私が茶会の主催者だとしたら……? いかが、なさいますか?」
と、ゆるりと、令嬢Xが問う。
「そう、ね……」
パク・ソユンが、少し考えて、
「ーーとりあえず、“タイ~ホ”しとこっか?」
と、言うや否や――! 一斉に、電光石火のごとく!! カン・ロウンたちとともに攻撃をしかける!!
「ちっ!」
「ちょっと! 貴方たち! いつまで踊ってるのです!」
まず、女従者が他の従者たちを解術する。
その同時、
「オラァ!!」
と、突っ込んでくるキム・テヤンに、
「ハッ――!!」
と、細目の従者が即座に間に入り、その突きを受ける!
「何だ? この細目野郎!」
「フン、貴方は、この私が御相手しましょう」
そのまま、ふたりが格闘戦に入る。
そのいっぽうで、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりが主人のXに迫る。
「くっ! 御主人様! 御守りします!」
女従者が前に立ち、毒劇物の手榴弾を構え、
「そ、ソユンッ!!」
「いいから! 狐にもらったヤツ使ってよ!!」
と、怯むドン・ヨンファに、“装華”を使うようにパク・ソユンが促すや、
――バァ、ンッ――!!!
と、炸裂し、爆発とともに襲い掛かる毒劇物および高殺傷力の破片を、
――グッ、パッ!!!
と、歪なチューリップのような“装華”が口を大きく開けて呑み込み、また別の装華の蔓や枝が、残りの破片や飛沫を捕捉した。
同時に、あろうことか、“それら”の破片は姿を変えて、
――フワァ、サァァッ……
と、麗らかな春の桜の花びらと化し、美しく散って舞ってしまう。
その隙に、攻撃を突破したパク・ソユンが主人の者へーー、令嬢Xへと迫る!
「――!」
目を見開く令嬢Xの片腕を、拘束具が捕えつつ、
「――手、一本ぐらいお返しさせてよね?」
と、パク・ソユンが表情を変えないままチェーンソーを振りかぶり、令嬢Xの手を切り落しにかかる。
――ウ”ォ”ォォン!!!
と、まさに令嬢Xの手を浸食する刃――!
「あ”、がッ――!?」
その、令嬢Xが痛み叫ぼうとした。
その時――
次のポーカーは、若干富山遠征(?)予定。
◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)
・00巻 重慶の幽鬼
・01巻 スタンボロバンの棍棒
・02巻 白色の考察
・03巻 白の衒奇的介入
◆◆ 年間予定タイトル
・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす
・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす
・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす
・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』
・5月 『黄色い壁』
・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』
・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』
・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』
・9月 『メキシコからの変な依頼』
・10月 未定タイトル
・11月 未定タイトル
・12月 冷たい結晶華




