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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第七章 攻めの調査

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62 痛覚快楽症

 さらに続いて、先ほど、チャク・シウが思いつきで話したように、令嬢の疾病に関する記録なども見つかる。

「ふむ……。確かに、貴様の着眼点が良かったのか――、このXとやらには、一般の人間にはないような、少々特殊な記録があるようだな」

 妖狐が、チャク・シウを軽く労いつつ、言う。

 その言葉どおり、そこにあった記録というのは、少々変わったものだった。

 令嬢Xの、幼少期や、学生時代の疾病に関する記録――

 それというのは、幼少のころに怪我をして病院に連れていかれた際――、その怪我というのは、裂傷であったり骨折を含むものだった。

 普通の幼児であれば泣き叫ぶようなものだろうが、幼少の令嬢Xの様子には、少々奇妙なところがあった。

 確かに、最初は、痛みに多少泣き叫んでいた。

 すなわち、“無痛症”などではなく、他の幼児と同じく『痛み』自体はちゃんと感じているのだが、その所見が異なっていた。

 しばらくするに、痛みに泣くのが止んだのであるが、それだけでなく、何と形容するべきか? 彼女は、幼児なりに、どこか“恍惚とした”表情を見せ始めたようだった。

 そうして、『痛み』を――、まるで“気持ちのよい快楽的なナニカ”のように受傷部位を触るその幼児の様子は、医師たちは困惑させたとのこと。

 なお、その、痛みに関する“特殊感覚”というか“特異体質”ゆえの通院や相談が、令嬢Xの思春期の時期まで散発的にだが続いていたが――

「う~む……」

 カン・ロウンが、唸りながら、

「確かに、チャクさんの言うように、これらの記録を見るに、X氏には痛覚に関して、“何らか特別な趣向を抱き得る感覚”を、持っているようですな」

「ふむ。『痛覚快楽症』とは、言い得て妙というべきか――」

 と、妖狐も、それに呼応するように呟く。

「ただ、“そいつ”の原因ってのは、分かんねぇんだよな?」

 怪訝な顔するマー・ドンゴンに、妖狐が答える。

「まあ、原因不明の、先天的な“特異体質”とでもいうヤツだな。……まったく、なかなか、この世というのは奇妙なことが起こるものだ――」

「フン、タヌキのお前が言うのかよ」

 と、キム・テヤンがつっこみつつも、

「何を言う? 妖狐のこの私にとっても、そこそこ未知で不確定的であるぞ? この世界というのは――。あと、タヌキじゃなくてキツネな。本当にわざとだろ? 貴様」

 と、妖狐はドヤ顔して答える。

 そのようにしている折、ちょうど、


 ――ピリリン♪ ピリリン……♪


 と、電話がかかってきた。

 鳴ったのはドン・ヨンファのスマホで、電話に出るなり、

『――やあ、どうなったかい? ヨンファ?』

「ああ、ネルソン、」

 と、電話の相手は、実業家の友人であり、先日調査の相談にも乗ってくれたノア・ネルソンだった。

『ん? その様子だと、もしかして、“救出”は上手くいったのかい? “君の”ソユンの――?』

「い、いやっ!? そ、そんな、“君の”って、』

 と、動揺するドン・ヨンファに、

「――?」

 と、当のパク・ソユンが、怪訝な様子で首を傾げつつ。

『……それで、今、進展具合はどうなんだい?』

 改めて、ノア・ネルソンが尋ねてくる。

「い、いや、その……、調査中でさ……、その……、まだ、他言はできない情報もあっ―「―ふむ。いいぞ、話して」

 と、そこまで話そうとしたところで、妖狐がドン・ヨンファの言葉に被せて言った。

「お、おい、狐」

 ここは、刑事のマー・ドンゴンが気にするも、

「私がよいと言うのだ、話せ。補強材料程度になる情報くらいは、くれるかもしれぬだろう」

『ん? 聞かない方が、いいかい?』

 と、ノア・ネルソンが、こちらの様子に気を遣う。

「い、いや、大丈夫だよ、」

『そうかい? まあ、それで……、ちょっと話を戻すけど、ソユンを助けれたのは、どうやったんだい? なかなか、尻尾をつかめない、厄介な相手だったんだろ?』

 また、ノア・ネルソンが別の質問をする。

「それなんだけど……、僕たちの力じゃないんだ」

『――と、言うと?』

「その、ノアも知っているかもしれないけど……、タヌーー、いや、妖狐の力を借りてさ」

『へぇ……、あの、妖狐ねぇ……』

 と、ノア・ネルソンも、妖狐よ神楽坂文については何らかしら知っているようで、

『――で? 案件自体は、まだ解決してないんでしょ?』

「う、うn――」

「――そのとおりだ」

 と、再度、そこまで話そうとしたところで、妖狐が割り込んだ。

 そのまま、

「おい、代わるのだ」

「き、狐さん!?」

 と、妖狐はじれったくなったのか、ドン・ヨンファのスマホを手に取り、

「おい、ノア・ネルソンとやら――、“こやつ”がトロトロしているから、代わりに話を進めさせてもらうぞ」

『ん? もしかして、例の、タヌキじゃなくてキツネさん?』

「そのもしかしてだ。エッチな女医さんのキツネさんだぞ、コンコン」

 ドヤ顔で答える妖狐に、


(((何言ってんだ? こいつ……)))


 との、空気が漂いつつ、

『で? どんな状況なのかい? 女医の狐さん』

「ふむ、調査の状況だが……、いちおう、目ぼしい容疑者は上がっていてな」

『ん、ふ』

「“そいつ”は、な――、貴様も知っていると思うが、R財閥の令嬢、Xだ――」

『ああ……。X令嬢、ね――」

 と、ノア・ネルソンが、微妙な間を置きつつ答える。

『まあ、彼女だと……、確かに、僕らの情報網に引っかからないように、裏で植物を取引できるだろうしね……。――と言うか、僕の会社も、彼女のグループ企業とは取引してるし』

「ふむ……」

 妖狐は顎に手を置き、何か考える仕草をしつつ、

「なお、貴様――、もしかして、“ヤツ”が茶会の主催者だと知ってた――、ということは、ないだろうな?」


『……』


「……」


 と、しばし、電話を隔てて沈黙が漂う。

『いやぁ……、さすがに……、いちおう、これでも、僕にとっても、けっこう意外なんだよ』

「そう、か――」

 妖狐は少し、何か考えた様子で、

「――ふむ。まあ、よかろう」

 と、強引にまとめる形で、

「返すぞ」

「えっ? 狐さん?」

 と、ドン・ヨンファにスマホを突き返しつつ、

「とりあえず、現状――、このXが犯人だと言う完璧な証拠は無いが、さっさとカチコむぞ、貴様たち」

「「――!?」」

「「お、おいおい!? タヌキ!?」」

 と、突然の強引な妖狐の決定に、一同当惑する。

「カチコむにしても、タヌキ? お前も来るんだよな?」

「そ、そうだよ、神楽坂さんもいないと、」

 との、キム・テヤンとドン・ヨンファに、

「私は行かない、――というか、行けんと言っておろう? 鬼畜なのか貴様たち?」

 と、妖狐は嫌そうな表情で答えながらも、


「――まあ、ただ……、それでは心許なかろうから――」


 と、そのまま、手元に“何か”を召還・具現化するなり、

 ――バ、サッ――

「えっ? き!? 狐さん!?」

 と、ドン・ヨンファに向かって、粉もしくは粒のようなナニカを撒く。

 すると、そこから、

 ――ニョ、キ、ニョキ、ニョキッ……

 と、何やら植物の蔓葉が生じ、

「う、うわわっ!? な、何これ!? 何これ!?」

 と、慌てるドン・ヨンファに花が咲き、まるでフラワーアレンジメントのように彩った。

 その、ドン・ヨンファに妖狐は告げる。

「ふむ。“そいつ”はな、妖力仕掛け、魔力仕掛けの植物でな――、これを以って、貴様に寄生するのだ」

「ぼ、僕に寄生だって!?」

 驚愕するドン・ヨンファと、

「おいおい、大丈夫なのか? ヨンファのヤツだから、どうでもいいけどよぉ、いちおう」

 と、キム・テヤンが言葉どおり、とりあえず心配してやりつつ、

「大丈夫かろう。それに、“こいつら”によって、貴様にもそれなりの能力が付与されることになるのだ……。“フラワーマン”という、使ってるのか使ってないのか分からんような、“失敗設定”のような、貴様らのコードネームどおりの、な――」

「ああ、あったわね、そんなコードネーム」

「失敗設定とか言うなや、――てか、お前も、「あったわね」じゃねぇよ、気持ちは分からんくもないが」

 と、妖狐と合点して納得するパク・ソユンに、キム・テヤンがつっこんだ。




帰省ついでのJOPT大阪参戦、結果残せずでした。

俄然、挑戦したい欲が上がりますが、一ヶ月ほど節約しなければと。

また、タコから石田になりました。(万一メジャーになったら、さすがにタコはまずいとの理由で)



◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)


・00巻 重慶の幽鬼

・01巻 スタンボロバンの棍棒

・02巻 白色の考察

・03巻 白の衒奇的介入


◆◆ 年間予定タイトル


・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす

・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす

・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす

・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』

・5月 『黄色い壁』

・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』

・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』

・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』

・9月 『メキシコからの変な依頼』

・10月 未定タイトル

・11月 未定タイトル

・12月 冷たい結晶華

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