58 『あの変態』と訂正しつつ
(1)
「――女、……か」
と、ボールをキャッチして中継するかのように、タイミングを合わせて言ったのは、キム・テヤンだった。
その言葉に、
「「――!」」
「「……」」
と、場には、驚きが混じりつつ、沈黙が漂った。
その、しばしの沈黙が引こうとする中、
「……お、女の人、……だって?」
と、ドン・ヨンファが遅ればせに、少し驚きの残った表情で恐る恐る聞いた。
「けっ、別に、そんな驚くことかよ? 女だろうが男だろうが、どっちでも関係ねぇだろ? まったく」
舌打ちするキム・テヤンに、
「ふむ……。私も、概ね貴様と同じく、主催者の性別が男であろうが、女であろうが、どちらでもよいのだが……、まあ、どちらかに絞ることができれば、『あやしいね!』の精度が上がるのは違いないだろう」
と、妖狐の神楽坂文が言い、
「ええ。財力のある人間――、なおかつ女性で、そこからプロファイリングなどによって、さらに絞り込めば、茶会の主催者に辿りつけるかもしれないでしょうね」
と、カン・ロウンも、同意して言った。
また、妖狐が聞く。
「ちなみに、ソユンよ――? 貴様は、どちらだと思うのだ?」
「そうねぇ……? 私も、たぶん、女だと思う」
パク・ソユンは少し思い出す仕草をし、答えた。
「ふむ、そうか……」
妖狐が頷く。
そのまま、仕切り直すこと、
「そういうわけで、だ……、貴様たち、半分雑な妄想交じりの推測ゲームのようなものだが、要素はいくつか絞り込めたことにしておいてだーー。そこからもう一歩、犯人の――、茶会の主人とやらについて、踏み込んで推測してみるぞ」
「ええ」
「ああ……」
と、カン・ロウンと、キム・テヤンが頷く。
妖狐が、さらに続けて聞くこと、
「ソユンよ――、先ほど貴様、ヤツにキモいことを言われて、唾を吐いたら激おこプンプンされたと話してたな?」
「「何だよ? その、激おこぷんぷんって――」」
と、パク・ソユンと、キム・テヤンのふたりがつっこみつつ、
「まあ、そうだけど……、それが、どうかしたわけ?」
「ふむ。その他にも、ヤツの、性格というか人間――、さらにいえば、隠れた癖やフェチなど、そういった類のものが分かるような言動はなかったか?」
「そう、ねぇ……」
パク・ソユンが、また天井を仰ぐ。
時系列的に、思い起してみるに――
まず、手首を切断されたこと。
それから、茶会の主人の激高。
そこから、どういう流れだっただろうか?
“茶会”とやらが始まり、メインの、ギンピギンピ茶が出てくるとともに、再び主人の者が、穏やかな様子に戻って……
――と、そこまで思い起こしたところ、
「確か……? アイツ――、あの変態、」
「ふ、む……?」
と、パク・ソユンは『あの変態』と訂正しつつ、思い出す。
「確か、『痛覚こそが至高の感覚だ』とか、何かワケわからないこと言ってたわ」
「至高の、感覚……、だと?」
とは、マー・ドンゴンが聞き、
「うん。確か、そんな感じなことを――」
と、パク・ソユンは頷く。
また、今度は、チャク・シウが静かに、
「まあ、それは、招待状にも『痛覚の饗宴』とかの文言があることから、不思議なことでないでしょうね……。何と言いますか? “茶会”と称して他人に毒物劇物を飲ませる――ある種のサディストというか、異常人格なのでしょうか……」
「う~ん……? そうね? ただ……、私が感じた範囲では、そんな、サディストってカテゴリだけじゃない感じがするのよね……」
と、しっくりこないパク・ソユンに、
「――と、いうと?」
と、マー・ドンゴンがさらに続きを促す。
「う~ん……、ちょっと、その時、またあの変態が興奮して首絞めてきたからさ、細かいところは覚えてないかもしれないけど……、その時、またペラペラと、茶会を主催する理由を喋ったわけ」
「ほう。その中で、ヤツの、確信となる主張のようなものは無かったか?」
妖狐がドヤッとした顔で、詳しく聞く。
「そう、ね……、確か、『痛みがあるからこそ――』、いや、『痛みにこそ、生きている喜びを感じるのだ!』とか何たら、相変わらずワケわかんない言ってたわ」
「フン……! それを、茶会という“文化的行為”に昇華して、他人に振舞いたいってわけか」
と、またしても間に入るマー・ドンゴンに、
「そっ、そんな感じ」
と、ちょうどいい言葉を拾ってくれたと、パク・ソユンが相槌した。
ポーカー遠征、結果は活動報告に書いたとおり。
日帰りにしたため時間がなく、タコ焼き難民になりました。
◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)
・00巻 重慶の幽鬼
・01巻 スタンボロバンの棍棒
・02巻 白色の考察
・03巻 白の衒奇的介入
◆◆ 年間予定タイトル
・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす
・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす
・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす
・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』
・5月 『黄色い壁』
・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』
・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』
・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』
・9月 『メキシコからの変な依頼』
・10月 未定タイトル
・11月 未定タイトル
・12月 冷たい結晶華




