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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第六章 立て直し

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57 アメンオサ(暗行御史)


          ***


 場面は再度変わる。

 件の妖狐やパク・ソユンらのいる病室、もしくは療養所の方へと戻る。

 “妖術”を用いた調査の最中、“葛葉”の蔓葉が、スッ――と、パク・ソユンの頭の方へと伸びる。

 白の、シンプルだがパール風のエレガントなカチューシャの上に広がる“葛葉”は、まるでティアラのようにパク・ソユンの髪を彩っていた。

 これから、“葛葉”とパク・ソユンに行う尋問によって、妖術『あやしいね!』を通じて、犯人を超能力的に絞り込んでいくわけだった。

「ーーさて、ソユンよ。思い出せるかぎりでよいから、貴様が見た、もしくは感じた範囲の、茶会の主宰者に関しての記憶情報を話してもらおうか」

 病床に座した状態で、妖狐の神楽坂文が、まず初めに言った。

「そう、ねぇ……?」

 パク・ソユンが、思い起す仕草をする。

 そこへ、妖狐が何かひとつ――、思い出すための材料となる質問をしてやろうとしたところへ、マー・ドンゴンが割って入ってきた。

「おい、何か、さっきの現場を見た印象なんだがな、ずいぶんと貴族の館みたいな感じだったじゃねぇか? その、茶会の主宰者ってヤツも、そんな、貴族みたいな感じだったのか?」

「貴族ねぇ……? 言われてみれば、そんな雰囲気があったかも……。まあ、茶会を主催するってくらいだし、“それっぽい”所作や佇まいはあったと思うけど」

「フン、上流階級の、有閑人ってヤツか――」

 今度は、キム・テヤンが言葉を添える。

「あっ、それ、そんな感じなヤツ」

 パク・ソユンは、ちょうどよい言葉を引き出してくれたと、手をポンと叩いた。

 また、チャク・シウも加わり、

「それと、貴族みたいと言いましたが……、あれだけの館を所有しているということは、それなりの財力がある人間や組織でないとできないでしょうし……、加えて、それだけの物件を所有しているにもかかわらず、簡単には足がつかないようにしていることも、引っかかりますが……」

 と、そのまま続けて、

「犯罪組織に関しても、我々、警察と――、貴方たちSPY探偵団の双方でも、一応調べてはいますが……、今のところ、何か茶会の主催者に引っかかるような情報はない状態ですよね? ヨンファ氏、その、ギンピギンピなどの“植物周辺”の調査でも、まだ、有益な情報はありませんよね?」

「え……? ま、まあ、そうですね」

 と、ドン・ヨンファは急に話を振られ、動揺しつつ頷いた。

「けっ、そいつの調査なんか、アテにできねぇぜ」

 キム・テヤンが、茶々を入れる。

 それは流しつつ、マー・ドンゴンが、

「しかし、そうすると、その茶会の主催者ってヤツは、財力があり……、なおかつ、秘匿的な工作、活動のできる存在ということか? それってのは、いったい、どんな存在なんだ?」

 と、眉をひそめながら、まとめるように提起しかけた。

 その時、


「――“アメンオサ(暗行御史)”、……か」


 と、カン・ロウンが、ある言葉を口にした。

「アメンオサ……? ああ、昔、そういう機関があったようだな」

 一瞬ポカンとしながらも、キム・テヤンが思い出した。

 簡単にいうと、その昔の朝鮮王朝お抱えの諜報、時に暗殺などの工作を行っていた組織、機関であるらしいが。

「ああ、そう言えば、ドラマとかで観たことある気がする」

「あっ、僕も」

 遅れて、パク・ソユンと、ドン・ヨンファも思い出す。

「けっ、僕もじゃねぇってんだよ、ったく」

 キム・テヤンが、いちいち舌打ちしつつ、

「――だが? また、突拍子もないものを思いつくな? ロウン」

 と、半ば感心してるのか、やれやれと、呆気に取られてるのか分からぬ風に言った。

 すると、妖狐も、

「ふむ。――まあ、突拍子もないアイデアかもしれぬが、今やろうとする“調査”は、そんな――、ある種、妄想に近い連想ゲームのようなことも必要なこともあろう。その、アメンオサとやらの流れを汲んだ一族や、集団の可能性もあるかもしれぬし……、もしくは、それに類する集団を抱えていた貴族の可能性があるかもしれぬとの可能性を絞って、一度『あやしいね!』のふるいに掛けてみてもよかろう。いずれにしろ、妖力を節約す――、いや、絞り込むための材料としておくぞ」

「今、節約って言おうとしたろ? お前」

「まあ、そう、つっこむな。実際、節約できるなら節約したいところなのだ――」

 と、つっこむキム・テヤンに、多めに見ろと言った。

 そんな風に、話は若干逸れながらも戻して、

「あとは、だーー、ソユン? 何か、主人のヤツの、外見や、身体的特徴とかはないか?」

 妖狐が、パク・ソユンに聞いた。

「う~ん……、私の前に現れたときから、ずっと、あのへんな赤装束を被ってたし……、どんな外見か、ちょっと分かんないわ」

 答えるパク・ソユンに、

「声は、どうだったか?」

 と、再度、マー・ドンゴンが割って入って質問する。

「声は……、たぶん、ボイスチェンジャーを使っていると思う」

「う~ん……、万一、乗り込まれた際の準備も万全にしていたわけ、か……」

 マー・ドンゴンが唸る。

 そこへ、

「あっ――? そうだ、」

 と、パク・ソユンが何か思い出す。

「うん? どうした?」

 キム・テヤンが聞く。

「ちょっと、あまり重要か分かんないけど、思い出したことが――、皆が助けに来る前に、主宰者のヤツに首絞められたことがあってさ」

「「なっ、何だと?」」

「な、何だって!?」

 キム・テヤンとマー・ドンゴンが、ドン・ヨンファの声が合わさり

「ほら? 跡が残ってるでしょ?」

 と、パク・ソユンは見せながらも、続ける。

「アイツが、私の手首をチェーン・ソー切り落とした時にさ、貴女は素敵だの、痛覚の饗宴がどうたらキッモいこと話してきたから、ムカついて唾吐いたの。そしたら、ちょっとキレてさ、首絞められたんだけどっ――!」

 思い出して、パク・ソユンは軽くイライラしながらも、さらに続けて、

「ただ……、その、首を絞められたときの力が、かなりの、人間の力ってレベルじゃない力だったんだけど……」

「だけど――?」

 と、次の言葉が出るように、キム・テヤンがタイミングをとるように語尾を復唱してやりつつ、


「その……、何ていうのかな? 何か、柔らかい感じのする、感触だった気がするの――」


「柔らかい、感じだと……?」

 と、思い出して口にしたパク・ソユンの言葉に、キム・テヤンが眉をひそめ、

「……」

 と、傍らの妖狐も、無言ながら意味深な様子で聞いていた。

 その言葉に、“ある推測”が浮かんで、マー・ドンゴンが言った。

「すると……、その、茶会の主人ってのは――」




ポーカー遠征、早飛びだけは避けたいのだが、早飛びしてしまったときのプランを考え中。

とりあえず、タコ焼でも調べとこうかと。



◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)


・00巻 重慶の幽鬼

・01巻 スタンボロバンの棍棒

・02巻 白色の考察

・03巻 白の衒奇的介入


◆◆ 年間予定タイトル


・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす

・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす

・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす

・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』

・5月 『黄色い壁』

・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』

・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』

・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』

・9月 『メキシコからの変な依頼』

・10月 未定タイトル

・11月 未定タイトル

・12月 冷たい結晶華

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