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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第六章 立て直し

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56 濃硫酸のコーヒー



          (4)



 時は同じくして、場面は変わる。

 先の、朝鮮と洋風の折衷様式の豪奢な空間とは趣向を変えてか――、小上がりの一角は、こちらは日本風とでもいうべきか、少々ヒビが乱雑に入った無骨な土壁に畳と、茶室のように仕立て上げられていた。

 そんな茶の間にて、奇しくもちょうど、茶会の主催者たちも妖狐やカン・ロウンたちと同様にに、ティー・タイムの最中だった。

 茶菓子には、パク・ソユンと同じベリー系のスイーツだが、こちらは濃硫酸のコーヒーなどを飲んでいたが……


「ふ、ぅ……」


 主人の者は、軽くため息しながら、思う。

(逃がしてしまった、か――)

 いや、逃げたのはこちらなので、逃がしたというのは、少し可笑しい表現だろう。

 まあ、いずれにせよ、“それ”に関しては――、“茶会”の途中で、突然に“客人”を連れ帰そうとされたことに関しては、特にそこまで不満に思うことでない。

「それにしても、私が思っていましたとおり……、とても素敵でした、パク・ソユン様」

 主人の者は、嬉しそうに微笑み、独り言を口にしてみた。

 そう、一定の満足はあった。

 これまでの他の客人たちであれば、“痛み”を愉しんでもらう間もなく、すぐに“壊れて”しまい、せっかく催した茶会の興が冷めるばかりだった。

 それが、今回のパク・ソユンの場合、あれだけの毒劇物の茶を飲んだにも関わらず、恐怖で取り乱したり、萎縮して助けを懇願することもなく、ただ凛として耐え続けていたのだ。

 その姿は、痛みを――、痛覚を堪能してもらいたい主催者側としては、この上なく喜ぶべきことだったに違いない。

「――どうしましょう、……か?」

 との、何か考える主人の言葉に、

「……?」

 と、細目の従者の者が、振り向く。

「もう一度、ソユン様の招待を……、いや、無理にでも、拐おうかしら?」

「もう一度、……ですか?」

 従者の者が、聞き返す。

 どこか、「御冗談、ですよね?」と、言いたげな様子で――

 まあ、“それ”は流しておきつつ、

「――そういえば、“妖狐”が、いましたね」

 と、従者の者が、ちゃっかり話題を変えるように聞いてみた。

「ええ……」

 主人は、静かに頷く。

 “妖狐”のことは、聞いたことがある。

 人外の――、人知を超えた能力の妖狐が、何やら調査業らしきことをしていること。

 また、その扱ってきた案件には、表にこそ出ないがスケールの大きな事件もちょくちょく解決してきた、とーー

「その、妖狐も、なかなか……、素敵というか、妖しい魅力のありそうな方でしたね」

 主人が言い、

「……」

 従者の者が、ただ、無言で聞く。

 間をおいて、

「そうです、ね……」

 と、主人は天を仰いで、思い起こして言葉にする。

「出来るなら、あの妖狐の方とも……、私は、もう一度お会いしたいですね」

 そう言い終え、主人はティーカップを置いた。

 なお、その主人の手だが、どこか、華奢ではないにしろ、スラッと細く見えていたながら……




今度のポーカー遠征は大阪に行きます。



◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)


・00巻 重慶の幽鬼

・01巻 スタンボロバンの棍棒

・02巻 白色の考察

・03巻 白の衒奇的介入


◆◆ 年間予定タイトル


・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす

・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす

・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす

・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』

・5月 『黄色い壁』

・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』

・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』

・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』

・9月 『メキシコからの変な依頼』

・10月 未定タイトル

・11月 未定タイトル

・12月 冷たい結晶華

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