55 “アブソリュート・ブラック”の、数兆℃というゼットンでもわけの分からない極超高温の液体
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しばし、ティー・ブレイク、もしくはコーヒー・ブレイクを挟みつつ進める。
「まあ、そういうわけで、私はしばらく休むわけだ、がーー」
と、療養ベッドに座るドラえもん野郎こと、妖狐の神楽坂文は、そう前置きしながら、
「それまで、出来る範囲であれば妖力を使ってやるし、妖具も貸してやる。“葛葉”も、貴様たちが使えるようにしておいてやる」
と、情報蒐集術の“葛葉”の蔓葉を召還し、室内にあった装花とともに彩ってみせる。
その妖狐の手には、コーヒーカップが――
しかし、その中身は“アブソリュート・ブラック”の、数兆℃というゼットンでもわけの分からない極超高温の液体が湛えられていながら……
「ありがとうございます、神楽坂さん」
SPY探偵団リーダー、カン・ロウンが礼を言った。
また、その傍らで、
「ソユンも、落ち着くまで休んでていいぞ」
と、キム・テヤンが、パク・ソユンに気遣う言葉をかけてやる。
そのパク・ソユンだが、春のベリー系のスイーツに、気に入ったのかどうか、先ほどのギンピギンピ茶など飲んでいた。
先ほど妖狐が言ったように、完全に、某暗殺稼業を営むファミリーのように、あらゆる毒劇物への耐性がついたのだろう。
まあ、“それ”を、常人ならトラウマになるものをわざわざ飲む時点で、このパク・ソユンもたいがい変わり者と言えば変わり者なのだが……
それは置いておき、
「いや、私も、さっさと調査に戻りたいし……、それに、だいぶ、動けるようになったし、さ? ――てか、さんざんやられたからさ、ちょっとムカついてるのもあるし」
と、パク・ソユンは答えた。
確かに、つい数時間ほど前までの凄惨な状態だったのが嘘のように、なかなかの回復力だった。
「まあ、あんま無茶すんなよ……」
キム・テヤンが、釘をさすわけでないが、一応そう言っておく。
そのように、半ばまったりしつつ、カン・ロウンが仕切り直す。
「さて? では、これからどういう風に切り込むか? ぼちぼち、話を進めていこう」
「ああ……」
キム・テヤンが頷き、それに妖狐が続く。
「ふむ。そうだな、まず、今回のカチコミで何か分かったことはないか? 貴様たち」
「「何だよ、“カチコミ”って」」
キム・テヤンとパク・ソユンが、そろって軽くツッコミを挟みつつ、
「まあ、確かに、今回ので分かればよかったが……、あの、主催者のヤツと、ヤツの弟子というか? 従者たちは、いったい何者なんだ――?」
と、キム・テヤンが改めて言ったように、実は、先ほどの救出劇の際に、茶会の主催者らについて分かったことはあまりなかった。
また、マー・ドンゴンもそれは同様であり、
「ウチの方でも、現場やその周辺を調べているがな……、犯人たちの特定につながるような情報はないようだ」
「何だ? そうすると、誰も、現場で重要なことを観察しておらんではないか? このポンコツども」
と、妖狐が顔をしかめ、軽く一同を罵った。
「ちっ、そう言うなよ、ドラえもん野郎」
キム・テヤンが面白くなさそうに舌打ちし、
「すまない、神楽坂さん」
と、対照的に、カン・ロウンが妖狐に詫びる。
そんな様子で、話が早速停滞しそうになるも、
「まあ、とは言え……、あの状況、かつ短い間で充分な情報を、貴様たちが得ることができないのは仕方ないか……。“ヤツら”も、そう簡単に尻尾をつかめさせてくれるような、ショボい相手ではなさそうだからな」
と、妖狐は、先ほど罵ったカン・ロウンたちを擁護してやりつつ、葛葉を使用して、現場物件に関する情報を表示させてみせる。
ただ、物件の所有情報からは、先ほどのペーパーカンパニーが出てくるだけで、それより先にある情報――
すなわち、茶会の主催者と結びつけるような、“線”や“面”となる情報は出てこない。
まあ、そもそも、茶会の主催者たちが何者なのかという、重要な“点”の情報が無いのでアレだが……
そうしていると、
「ふむ。まったく、仕方ない……。ただでさえ、今回、妖力を膨大に消費しているのだが……、ポンコツの貴様たちのために、再び、先ほどの妖術を用いてやろう」
と、妖狐は、紫のオーラを発するとともに、先に用いた妖術――、『あやしいね!』を発動させようとした。
「え? それって、さっきの?」
ドン・ヨンファが気づき、
「ああ、そのとおりだ」
妖狐は答えつつ、
「ただし、某アニメ『サイ〇パス』のようにか――? 少々、チート的にも超常能力的に、犯人を絞り込むわけでな……、そのために、必要なことがある」
と、若干、意味深に補足する。
「何か、聞いたことある気がするんだけど……、そのアニメ」
反応するパク・ソユンに、
「ふむ。そうだ……、その際に、必要になるのがな――」
「う、ん?」
と、妖狐は溜めを入れつつ、
「ちょうど、貴様だ。パク・ソユンよ」
と、指をさして告げた。
「へ? 私?」
自分自身を指さし、キョトンとするパク・ソユンに、
「ああ……。先の現場で、茶会の“客人”であった貴様が、主人のヤツと対峙した時間が一番長かろう?」
「まあ、それは、そうだけど」
「ふむ。その、貴様の頭にある記憶とイメージが、『あやしいね!』を発動するのに必要なのだ」
と、妖狐は頼んだ。
「うん、まあ、分かったけど――」
パク・ソユンは、了承した。
カップ麺にオリーブオイルをドバドバに入れる派ですが、同じような人いますかね?
◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)
・00巻 重慶の幽鬼
・01巻 スタンボロバンの棍棒
・02巻 白色の考察
・03巻 白の衒奇的介入
◆◆ 年間予定タイトル
・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす
・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす
・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす
・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』
・5月 『黄色い壁』
・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』
・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』
・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』
・9月 『メキシコからの変な依頼』
・10月 未定タイトル
・11月 未定タイトル
・12月 冷たい結晶華




