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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第六章 立て直し

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53/71

53 さながらドラえもんの22世紀の道具に見られるような、エントロピーの法則などといった世の諸々の法則を無視したもの



          (2)



 しばらくして、妖狐の神楽坂文の言ったとおり、パク・ソユンの回復は進んできた。

 今、眠りについているパク・ソユンだが、切断された両手はくっついて元通りになっており、また、胃などの内臓組織や、フッ化水素に侵されつつあった骨格も、ほとんど元通りになっていた。

 それらの修復は、もはや、さながらドラえもんの22世紀の道具に見られるような、エントロピーの法則などといった世の諸々の法則を無視したもので、ある意味何でも有りの妖術の賜物だ。

「おお……、本当に、かなり回復してきたな」

 キム・テヤンが、感心し、

「神楽坂さん、私たちの仲間の、ソユンの命を救ってくれて、本当に感謝いたします」

 と、SPY探偵団リーダーとして、カン・ロウンが礼を言った。

「ふむ……、そいつは、どうも」

 妖狐が、軽く頷く。

 そのとき、


 ――ゴ、ソッ……


 と、病床の、布団が擦れる音とともに、件の人物ことパク・ソユンが、目を覚ます。

「……ん? ……あっ」

 と、パク・ソユンから、声が出た。

「そっ、ソユンー!!」

 ドン・ヨンファが、嬉しさに思わず叫んだのか、そばに寄る。

「あん? 何――」

 パク・ソユンは、寝起きの、若干機嫌の悪い様子で反応する。

 同時に、

「痛っつ――!」

 と、まだ、胃やその周辺にかけて、軽くキリッ……とする痛みが残っていた。

「お、おい? 大丈夫か? そんな、急に起き上がんなよ」

 キム・テヤンが言った。

「ああ……、そう言えば、ギンピギンピやら、フッ酸やら飲まされたから……、さすがに、まだ痛みが残るか」

「ふ、フッ酸……だと?」

 マー・ドンゴンが、そのヤバすぎる劇物の名に顔をしかめる。

「うん」

 パク・ソユンは、何ともないようにケロッと答えつつ、

「――って、あれ? 手が、戻ってるし?」

 と、自分の手が――チェーンソーで切り落とされたはずの手が元通りに戻っていることに気がついた。

 まあ、それ以前に声が出せていること――

 劇物や、最後は硫酸で完全に潰されたはず喉が元通りに回復されたことに気づけという話であるが……

 そこへ、


「おい、貴様。ペラペラと喋ってるが、この私に何か言うことはないか? クソビッチ」


 と、妖狐がドヤ顔で罵ってきた。

「は? だから、誰がクソビッチなわけ?」

「ま、まあまあ、ソユン、」

 イラっとするパク・ソユンを、ドン・ヨンファが宥める。

 そうしつつも、苛立ちを抑え、

「まあ、とは言え……、感謝するわ、妖狐。確かに、アンタに助けられなきゃ、たぶん、……いや、たぶんじゃなくて、確実に、私死んでたし」

 と、パク・ソユンは妖狐に、礼を言った。

「ふむ。分かればよいのだ、クソビッチ」

 妖狐が、またドヤ顔する。

 その妖狐に、

「何か、今度礼をさせてもらうよ、神楽坂さん」

 と、カン・ロウンが気を遣おうとすると、

「そうだ、な……?」

 と、妖狐は天を仰ぎつつ考え、続ける。

「まあ、ただ、私はエッチな女医さんだからな……、治療、医療行為をするのは当たり前と言えば当たり前のことだ――」

「フン、なかなか、いいこと言うじゃねぇか、タヌキ」

 キム・テヤンが感心する。

 この妖狐・神楽坂文にしては、“まとも”というべきか、それなりに悪くないことを言っているように見える。

「確かに――」

 と、パク・ソユンも、キム・テヤンと同じくであったが、

「ああ……、そうだ、ソユンよ――? 今回の医療行為は上の口からだったが、次回のプレイは下の方から行ってやろうか? この浣腸器でプスッ――、とな」

 と、妖狐は何かSMプレイで使用するかのような、バカでかい注射器のような浣腸器を取り出し、再びドヤ顔した。

「ごめん、……やっぱ、さっきの言葉、撤回していい?」

 パク・ソユンが、ジトッ……とした目でつっこんだ。

 つっこみつつ、

「てか? アンタ? わざわざ、それ出したかっただけでしょ?」

 と、パク・ソユンが続けようとした、そのとき、


 ――ドッ……、サァッ……


 と、音を立てるとともに、まさかの――

 エロ女医姿の、妖狐の神楽坂文が、膝から崩れ落ちていた。

「――へ? どしたの?」

 パク・ソユンが、思わずキョトンとし、

「お、おい!? どうしたんだ!? タヌキ!」

「だ、大丈夫かい!?」

 と、キム・テヤンとドン・ヨンファが、咄嗟に駆け寄った。


 ――ポタッ……、ドボ、ドボ、ドボ……


 と、妖狐は酷い吐血をしており、口から床に、美しくも赤い血が滴り落ちていた。

「お、おいおい? 女医姿のヤツが、な、何やってんでい?」

 マー・ドンゴンが驚きつつ、怪訝な顔する中、

「ふむ……、ハァ、ハァ……、その……、先ほど、言ったように、な……、太陽系、三カ月分の妖力を使ってしまったゆえに……、妖力が、枯渇一歩手前に、なってしまったのだ――」

「――!?」

「なっ――!?」

「な、何だと……?」

 と、苦しそうに息切れする妖狐の言葉に、皆が驚愕した。

 まあ、驚愕しつつも、

(((いや、さっき、太陽系三週間分って言ったよね……!? てか、三週間と三カ月じゃ、えらい違いでないのかい?)))

 と、誰もがつっこみたかったが、とりあえず、ここは自重しておきつつ……

 そんな彼らに、妖狐は地に伏しながらも、さらに伝える。

「その……、“妖力”が、完全に切れかけてしまったからな……、もしかすると、2、3日くらいは、動けぬかもしれん……。ゆえに、あとは、貴様たちで調査し、茶会の主催者どもを、捕まえる必要があろう――」

「「――!」」

「「「……」」」




眠すぎてコメントなし。



◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)


・00巻 重慶の幽鬼

・01巻 スタンボロバンの棍棒

・02巻 白色の考察

・03巻 白の衒奇的介入


◆◆ 年間予定タイトル


・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす

・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす

・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす

・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』

・5月 『黄色い壁』

・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』

・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』

・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』

・9月 『メキシコからの変な依頼』

・10月 未定タイトル

・11月 未定タイトル

・12月 冷たい結晶華

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