表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第六章 立て直し

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/71

52 太陽系の、3週間分くらい



          (1)



 そのまま、近くの、病院らしき一室にて――

 パク・ソユンは、まだ息絶えていないにしろ、ほぼ死に瀕しているほどの重傷だった。

 イモガイの神経毒に、ギンピギンピ、フッ酸に最後は濃硫酸などという、無理やり飲まされた毒物・劇物のオンパレード。

 周辺臓器が損傷し、また、浸透したフッ化水素が肋骨など、骨格をも徐々に犯していく。

 さらに、そのオマケ程度と言ってはなんだが、両手首はチェーンソーで切断されているという有り様。

 そんな、恐らくと言うまでもなく、どんな名医であれ、最新の医療技術で以ってしても、ほとんど救命不可能で、もし万に一つ治療できたとしても、もう元の身体に戻ることも不可能な状態だろう。

「そ、ソユン!! 死ぬな!!」

 キム・テヤンが呼びかけ、

「ソユン!! 死なないでくれ!! ぼ、僕たちが助けに行くのが遅かったばっかりに!! くそっ!!!」

 と、ドン・ヨンファも、不甲斐なさととも叫ぶ。

 その、ふたりの呼びかけに、

「ぐっ……、ぅ”……」

 と、パク・ソユンは、目が虚ろになりながらも、

「(ああ、う、うるさいって、の……、アンタ、たち……)」

 と、口にしようとしながらも思う。 

(まあ……、たぶん、こりゃ、さすがに“ダメ”だろう……。別に、アンタたちのせいにしたり、しない、け……――)

 そこまで思ったところで、パク・ソユンの意識と、生命が尽きようとする中、


「――ふむ。それでは……、オッペェ~を行ーう」


 などと、ふざけたイントネーションで言ったのは、エッロい女医姿の妖狐、神楽坂文だった。

「お、おい……、お前が……、手術をするつもりなのか?」

 キム・テヤンが、怪訝な表情で聞く。

「ああ。……だから、この格好で来たのだ。まあ、と言っても、貴様たちのイメージするような、メスで切ったり、縫ったりするようなものとは違ってな――、モチのロン、妖力を用いるわけだが……」

 妖狐はそう言いながら、パク・ソユンの傍へ寄る。

「おい、口を開くのだ、クソビッチ」

 妖狐がそう言うと、

「っ”? ぁ”……?」

 と、パク・ソユンが反射的に、「(はぁ? 誰がビッチだって?)」と、イラっとする。

 だが続けて、妖狐は無理やりパク・ソユンの口を開かせつつ、もう片方の空いた方の手に白いオーラを発しつつ、“何か”を召還させる。

 すると、


 ――ドボドボドボドボ……!!


 と、ややグロテスクにも蠢く白い粒の――

 多量の蛆虫らしき蟲を、パク・ソユンの口に流しこみ始めたではないか!!

「ぅ”っ!? う”ぅ”!!!」

 さすがに、パク・ソユンが声をあげて呻き、

「お、おい! タヌキ! ソユンのヤツに何してやがんだ!!」

「そ、そうだよ! タヌキさん!」

 と、キム・テヤンとドン・ヨンファのふたりも抗議しようとした、そのとき、


「――まあ、待たぬか、貴様たち」


 と、妖狐は掌をむけ、ふたりを制止した。

「あ”、ん……?」

「へ……?」

 キョトンとするふたりに、妖狐は続ける。

「この妖力こそ、だ……、我が妖術の中でも、トップクラスに莫大な妖力を消費する治療術でな――」

「……」

 リーダーのカン・ロウンが、ジッ……と耳を傾ける。

「貴様たちの――、“こちらの世界”でも、ある種の医療に、蛆虫を用いる治療法があるようにな、“こいつ”は、特殊な妖力仕掛けの蛆虫を用いた治療・医療行為ようなものだ」

「う、蛆虫だって……?」

 マー・ドンゴンも、半信半疑のように顔をしかめる。

「ああ。その、対象となる患者が、『まだ絶命していない』という制約があるのだが――、この蛆どもはな、不可逆的に修復不可能になった組織に対し、時間を巻き戻しながら修復する力を持っててな――」

「じ、時間を巻き戻して、だと――?」

 とは、半ば驚愕するキム・テヤンに、

「ああ……。まあ、言うなれば、ある種の『生き返らせ』みたいなものでな……、“こちらの世界”で“それ”をやるのは、ほぼ御法度クラスの行為であるし、私も、本来はやるべきではないと思うのだ。そんな、某ドラゴンとかボールとかつく漫画のように、バカスカ生き返らせたりするのはな――」

 と、静かな表情で、妖狐は答える。

 また補足して、

「まあ、ただ……、これだけの身体破壊を以っても死なず、なおかつ精神も保っている貴様たちの仲間に敬意を表してか――、この、莫大すぎる妖力を消費する妖術を使ってやるのだ」

「その、どれくらいの、妖力なのですか?」

 と、マー・ドンゴンの相方、チャク・シウが質問を挟む。

 その問いに、

「ふむ……、そうだな……」

 と、妖狐は天を仰ぎつつ、少し考えて答える。


「その、太陽系の、3週間分くらい、か……」


 …………


 妖狐の答えに、微妙な沈黙が漂う。

 その、誰もが、

「(何だ? その、太陽系3週間分って――)」

 などと、つっこみたくなるものの、天文学的スケールという壮大なスケールなのだが、その中でも太陽系という微妙と言えば微妙なスケールであり、そのことで余計に理解が追い付かず、つっこめなかった。

 まあ、どちらにしろ、人間文明の扱うエネルギーに比べては巨大すぎるスケールだろう。

 だが、生命、生体という極めて“複雑な情報体”を、この世の法則に逆らって修復するわけで、莫大なエネルギーが必要なのは想像するに難くない。

 そうしている間にも、妖狐は内視鏡のように、魔界のハリガネムシをパク・ソユンの口につっこみ、

「見よーー。あと2、3時間はかかるかもしれぬが、内臓、組織の損傷は元に戻ろう」

 と、その内部の、まずは胃から修復している様子をモニターに表示して見せる。

 確かに、そこには、蛆虫が蠢きながらも、劇物に侵された損壊していた胃壁が、段々と元にもどる様子が映し出されていた。




すっごい眠い。



◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)


・00巻 重慶の幽鬼

・01巻 スタンボロバンの棍棒

・02巻 白色の考察

・03巻 白の衒奇的介入


◆◆ 年間予定タイトル


・1月 ※今やってる03巻目の『白の〜』を終わらす

・2月 ※途中の04巻目『激痛茶館』を終わらす

・3月 ※途中の05巻目『砂丘の〜』を終わらす

・4月 鬼灯橙子シリーズ『西行阻止』

・5月 『黄色い壁』

・6月 『あるパノラマ島のトランス奇譚』

・7月 『散在神経系は不老不死の夢を観るか』

・8月 鬼灯シリーズ『残留エーテル』

・9月 『メキシコからの変な依頼』

・10月 未定タイトル

・11月 未定タイトル

・12月 冷たい結晶華

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ