43 リボ払い式の妖力
「な、何だ!? こいつぁ!?」
キム・テヤンが、思わず驚きの声をあげる。
その一方、
「う、うわぁぁん!! ちょッ!? 何で、僕に!?」
と、葛らしき蔓の葉が、まるでイタズラでもするかのごとく、ドン・ヨンファのキノコヘアーに絡まっていく。
「おい、何やってんだ! ヨンf―」
と、キム・テヤンが、そこまで怒鳴りかけたとき、
「って? コイツぁ、もしかして……?」
と、何かにピンと来た。
そして、それに答えるのようにして、
『――ああ、その、“もしかして”だ』
と、どこかから、ドSっぽいハスキーなイケボの声が――
すなわち、ドラえもんみたいなナニカこと、妖狐の神楽坂文の声が、キム・テヤンに答えた。
また、続けて、
――ボゥッ……
と、パソコンの画面にウィンドウが開き、WEB会議もしくはTV電話のように、黒のアサシンドレスを身にまとった妖狐の姿が映る。
何やら、高空を移動しているような背景だったが……
「タヌ、キツネさんですか」
と、言うカン・ロウンに、
『ああ。久しぶりだな、この変人軍団ども。てか? いまタヌキと言いかけただろ? 貴様』
と、妖狐も答える。
続けて、
「で? 何だ? “コイツ”は?」
と、キム・テヤンが葛らしき蔓を――、妖術で具現化した蔓を手にしつつ、顔をしかめて聞く。
『ふむ。貴様たちの、“チンタラした調査”では、間に合わんだろうと思ってな』
「……」
「……?」
と、沈黙を挟むキム・テヤンと、頭にはてなマークを浮かべるドン・ヨンファに、
『ここは、“チート”を使うしかない――、ということだ」
妖狐は、若干のドヤ顔で答えた。
***
いっぽう場面は、その妖狐のほうへと変わる。
時速にして、約900キロで巡航中の航空機の上などという場所。
そこで、優雅にも茶を飲みつつ、なおかつPCを開いたリモートワーク・スタイルだが、
「……」
と、妖狐は無言ながら、少々ため息したかった。
やれやれ……と、思う。
“こう”でもしないと、リボ払い式の妖力が回復しなかった。
すなわち、こうしてわざわざ航空機の上に、不正乗車のようにちゃっかり乗っている状態なのだが、実は“空を飛ぶこと”自体は、この妖狐にとって何ともないことではある。
むしろ、某暗殺教室のタコの先生のように、ICBMに追いついてラクガキしてのけるほどの“速さ”も軽く出せなくもない。
ただ、“こちらの世界的”において妖力を用いた場合、莫大な妖力が消費され、リボ払い式のごとく急速に弱体化してしまうと事情があるゆえ、このような方法で妖力を節約するより他なかった。
それはさておき、少しさかのぼること――
――つい、30分ほど前のこと。
異世界空間にいた妖狐に、こちらの世界の、韓国はソウルのカン・ロウンから依頼の電話がかかって来た。
不正ポーカーを離席して、金沢の兼六園と同じく、丸みを帯びた石橋の下に、清浄にして清涼な流水が流れる中、
「ふむ。助けてほしいとは、どうしたのだ?」
と、妖狐は率直に、カン・ロウンに問う。
『単刀直入に言う。我々のメンバーの――、仲間の、パク・ソユンを助けてほしい』
「ふ、む?」
と、妖狐は唐突な話に目を点にしつつ、怪訝な顔をして、
「もう少し、詳しく話せ」
『ああ。今、恐らく、ソユンは拉致されている最中だ』
「拉致……、だと?」
と、そこまで聞いて、
「ふむ。分かった……。とりあえず、30分以上かかるかもしれないが、そっちに向かってやろう。変人軍団ども」
『す、すまない……。助かる』
と、妖狐は、カン・ロウンの依頼を受けてやることにした。
やっと更新。
寒さがひたすらに辛いですね。
◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)
・00巻 重慶の幽鬼
・01巻 スタンボロバンの棍棒
・02巻 白色の考察
◆◆ 近いうち、書く予定タイトル
・冷たい結晶華
・あるパノラマ島、トランス奇譚
・散財神経系は不老不死の夢を観るか
・新屋根裏の散歩者考
・メキシコからの変な依頼
・東京水脈




