42 予断を許さない状況
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同じころ、
「……もう、こんなことをやってる場合なのかい?」
と、ドン・ヨンファはやや不満げな様子で、別働的に調査をしているようだった。
さらに続けて、
「それに、何で僕だけ……」
と、ドン・ヨンファはボヤいた。
今現在のこと――
SPY探偵団の仲間であるパク・ソユンが、恐らくは拉致されているという予断を許さない状況。
早急に追跡することに全力を注ぐべきなのだが、リーダーのカン・ロウンは、キム・テヤンとふたりそろって警察署に行っていた。
そのように、いったん“茶会”に関する諸々の調査の手を止めた方がいいにもかかわらず、このドン・ヨンファだけは“それ”を続けるように指示されたことも、不満を抱く理由でもあろうか……
「ていうか、ロウンかテヤンの、どっちかだけでいいじゃないか……」
また、ドン・ヨンファはボヤく。
焦りは、募るばかりだっ。
そこへ、
――ピリリン♪ ピリリン……♪
と、ノア・ネルソンから電話がかかってきた。
『――やあ、ヨンファ♪ 何か進展は、あったかい?』
電話をとるや、ノア・ネルソンがいつもの調子で尋ねてきたが、
「……ソユンが、拉致された」
と、ドン・ヨンファは重い様子で、単刀直入にそう答えた。
『おっと……、そいつは……』
と、さすがのノア・ネルソンも、事の深刻さを察した。
「今、仲間が、何とか追跡しようとしているんだけど……、僕は、別で調査をしていてさ……」
『別で、とは?』
「その……、先日、君に会ったときのように、ギンピギンピとかの闇の流通の調査を続けてくれってさ――」
『う~ん……、まあ、追跡するだけじゃなくて、“二方向”から攻めるってことじゃないかな? 追跡するって言っても、たぶん、監視カメラ網から追うってことくらいしかできないでしょ?』
「確かに、ノアの言うとおりだ……」
と、ドン・ヨンファは同意しつつ、
「くっそ……! 何とか、茶会の主催者の所在をあぶりだせないのか!? 早急に!」
と、半ばヤケ気味に口調を荒げた。
『う~ん……、そうできればいいんだろうけど……、確かに、いっきにタイムリミットが無くなったね』
ノア・ネルソンは、状況が厳しいことに同情しつつ、
『……資料は、少しだけど、……いいかい?」
「ああ、頼む……」
と、ドン・ヨンファに提示してやる。
同時に即座に、ドン・ヨンファの持ち歩くノートパソコンに、調査資料のファイルが転送される。
そこへ、
「――おい、ヨンファ、進んだのか?」
と、キム・テヤンが現れた。
「う、うん……、い、いま、資料をもらったって」
ドン・ヨンファは、少し嫌そうな顔で答えつつ、
「ノア、ちょっと、電話切るね――」
『オッケー、何かあったら、また連絡してくれ』
と、ここは仕方なく通話を切る。
「まったく、いま資料をもらったって、遅ぇヤツだな……」
キム・テヤンは軽く文句垂れつつ、ドン・ヨンファのパソコンを手に取る。
そのまま、
「ちっ……、材料は揃いつつあるんだろうが、……何か、もっと、解析できるものがねぇか?」
と、キム・テヤンが舌打ちしつつ、パソコンを操作する。
「ろ、ロウンと、マーさんは?」
「ああ……、いま、ソユンと――、恐らく、ソユンを呼び出すために人質とした人間を、追跡しようとしている。……アイツらも、何とか力を尽くそうとしているさ」
ドン・ヨンファに答えつつ、キム・テヤンはデータ解析し、“茶会の主催者”に関する糸口ーー、もしくは、その居場所をダイレクトに割り出そうと尽力する。
「クッソ……! と言ってもな、情報が不足してやがるし、それに、そんな早く解析できっか……!」
と、キム・テヤンが煙草を吸いたそうに、顔をしかめながら独り言を言う。
「て、テヤン……、何とか、分かりそうかな?」
「ああ”? 今やってんだろが!」
キム・テヤンが、横から恐る恐る聞いたドン・ヨンファに苛立っていると、
――ニョ……、キッ……
と、何やら、植物の蔓らしきものがーー
パソコンの画面から、現れていた。
活動報告で予定どおり、あとがきに宣伝と呟き的なものを書きます。
◆◆ 妖狐・神楽坂文と変な物語シリーズの過去作の紹介(むしろ、こちらを読んでほしい)
・00巻 重慶の幽鬼
・01巻 スタンボロバンの棍棒
・02巻 白色の考察
◆◆ 近いうち、書く予定タイトル
・冷たい結晶華
・あるパノラマ島、トランス奇譚
・散財神経系は不老不死の夢を観るか
・新屋根裏の散歩者考
・メキシコからの変な依頼
・東京水脈




