41 一時期流行った、某イカだかタコだかのゲーム
そうして、車から降ろされること――
そこには、何やら豪華な、まるで貴族の館のような館がーー
いや、実際に、貴族か財閥といった身分の者の所有の館なのだろう。
英国式の洋館が、格式高くも、優美に佇んでいた。
それから、建物の中へと通される。
朝鮮や欧州、それから中国や日本の調度品や美術品に彩られるなどと、内側も外観に似つかわしく、豪奢なものだった。
これが、もし、香ばしい茶や甘美な春のスイーツを愉しむ茶会なのであれば、招かれる客人の心も踊るというものだろう。
しかし、ここに招かれた (拉致された)客人は誰も、言うまでもなく、“そう”ではない。
恐らく、待ち受けるはギンピギンピなどの有毒植物の茶や、毒劇物ブレンド茶などの、“おぞましい”ものーー
そうした事実が、過りながらも、
「(――ったく、めんどくさいわね……)」
と、パク・ソユンはまたしても、悪態を声に出しそうになるものの、心の声で留めておいた。
そもそも、常人であれば、拉致されているという事実と、招待状にて予見される内容を想像するだけで、恐怖に壊れそうになるのだろう。
しかし恐らくは、このジグソウ・プリンセスこと、パク・ソユンという人間は、そのあたりのスイッチが壊れているのだろう。
半ば本心で、自分の置かれた状況を面倒なものだと思いつつも、
「……」
と、ただ若干、どこか冷えた、乾いた汗と……
胃が、少しばかりキリリ……とするのを感じていたのだが。
そのようにしているうちに、ついに地下室へと案内される。
煉瓦造りの空間は上階と違い、少々どよんで薄暗く、どこか拷問室のような不気な雰囲気があった。
ただ、それでもなお、晩餐会や茶会に用いても申し分なさそうな、奇妙な空間でもあるという。
そこへ、
――カツンッ……、カツンッ……
と、足音が響きながらも、奥の方から“主催者”ーー、すなわち、“主人”と思しき者が現れた。
「……」
「……」
と、招かれた“客人”のパク・ソユンと、招いた“主人”が、ここで初めて顔を合わせた――
否、対峙したと言った方が、いいかもしれない。
この、“茶会”の“主人”なる者の姿――
まるで、一時期流行った、某イカだかタコだかのゲームのような、珍妙な黒い仮面に、全身を覆う赤い装束。
その全身を包むフォルムは防護服と言うよりは、日本の山岡頭巾の“それ”ようなゆったりと広がるものだった。
ゆえに、この“主催者”が何者であるのかーー? その外見からは、確認できなさそうである。
そして、
「――どうぞ、よくぞ、お越しくださいました」
と、“主催者”の者は――、主人の者は、恐らくはボイスチェンジャーを使った声で“客人”に挨拶したが、
「お越しくださいました――、はいいけど、さ? 卑怯じゃないの?」
と、パク・ソユンがそんなものなどスルーしつつ、まず、罵りを込めて聞いた。
「ええ……、それは、お伝えしましたとおりでございます。こうでもしないと、骨が折れるのですよ」
主人の者は、柔和かつ上品な様子で答える。
答えつつも、
「それより、ソユン様……? まず、“こちら”は、貴女にとって、愉しんで頂けるかと――」
と、主人の者は、『どうぞご覧ください――』のジェスチャーで腕を指した。
その先、
「――!」
と、パク・ソユンが、一瞬だけ目を見開きながらも見たもの――
そこには、チェーンソーによって、フラワーアレンジメント作品のようになった、“客人だった”人間たちの姿があった。
例えば、ある者はで首を切り落とされていたり……、また、ある者は足の大腿であったり、足首から先を切り落とされたりしたものを、まるでオブジェのように飾られていたのだ。
そんな、おぞましき光景に、
「……」
と、パク・ソユンが顔をしかめつつ、どこか若干、睨むような様子で、主人の者を見ていると、
「貴女も、こういったのは、お好きでしょう?」
と、それに気づいたのか、主人の者が聞いてきた。
「は? いや、あくまで、創作ものとかのROM専なだけでさ? こんな実物を、目の前で見せられて歓ぶ趣味なんか無いんだけど?」
パク・ソユンが、イラっとして答える。
「あら? それは、残念ですね」
と、恐らくは微笑している主人の者に、今度はパク・ソユンが、
「いや、残念とか、別にどうでもいいんだけどさ? アイツらは、解放してくれるわけ?」
「ええ、そうです、ね……? ただし、“それ”は……、貴女の言動次第でごさいますが」




