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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第四章 茶室への招き

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37 【日本でも今ホットな動力工具】




          (1)




 ふたたび、場面は地下へ――

 薄暗いながらも、気品あふれる、【茶館】でのこと。

 今宵も開かれる【茶会】の、大事な【客人】のため、【主催者】は――、【主人の者】は従者たちとともに、準備、段取りに追われていた。

 麗らかな春にふさわしいテーマで、美術品や、趣向を凝らしたオブジェだったり、フラワーアレンジメントなどで空間をコーディネートする。

 まさに、上流階級が招かれるような、豪華で上質な空間――

 しかしながら、【それだけ】では、この【茶会】の【芯】となるべきものは、まだ足りていなかった。


 ――ギギ、ッ……


 と、何か、少し重みのあるものを動かす音とともに、“そこ”に用意されたもの。

 あろうことか――?

 それは、まるで華でも活けるかのように、木枠に縛られた、数体の人間の【躯体】だった――!

 恐らくは、先の茶会に招かれ (拉致され)た客人たち――

 例の、毒劇物をブレンドした【茶】によって、口内はおろか、胃や周辺組織がグチャグチャかつ不可逆的に損壊し……、時間が経ってもなお、耐え難い苦痛を与え続けられた【成れの果て】。

 ただ、一点、すこし“不思議なこと”があった。

 この【躯体】たちには、まだ少々、意志があった。

 ここまで至る間に、激痛によるショック死や、そもそも内臓の損傷などで、とうに絶命していてもおかしくはないのだろうが……、そこは、この【主人なる者】の【御点前】の良さゆえか――?

 客人が、絶命してしまわないように、【様々な施し】をしているようだった。

「――う”、ぅ”……」

 とか、

「ギ、ギ、ギッ……」

 などと、猿ぐつわされながら小さく唸る、もはや【人の形をした何か】のような、【客人だったモノたち】――

 虚ろながらに思うことは、「もう殺してくれ……」と、いうところだろう。

 ただ、そうは問屋が卸してくれるはずもなく、


「――では? 本当に、【こちら】でよろしいでしょうか? ご主人様?」


「ええ……。それで、結構です」

 と、淡々と尋ねてきた従者の者に、主人の者は答えるなり、


 ――ドゥルン……!! グ、グォオ、オォーンンッ――!!!


 と、場違いな駆動音とガソリンの香りがするとともに――!! けたたましいエンジン音が鳴り響きだした!!

 そうである――!!

 従者の者が用意したのは、【いま日本でもホットな動力工具】!!

 すなわち――

【チェーンソー】であった!!

 そして、


 ――スッ……


 と、別の従者が、手際よく用意した角材に、

「――では、まず、切れ味を確認いたします」

 と、チェーンソーを手にした従者が、これまた、お手並み良く角材に刃を入れていき、

 ――グ、ォォオンッ――!!!

 と、子気味の良い音を響かせながらも、スパッ――!! と、角材は、綺麗に切れていった。

 どうやら、刃も、機械本体も、調子良さそうである。

 いったん、回転数を落として、

「良い音、ですね……♪」

「ええ」

 と、まるで、茶室の普請道楽をする主人と職人親方のように――、上機嫌そうな主人の者に、従者が控えめながらも、ニコリとした笑顔で答える。


 ――ドッ、ドッ、ドッ……


 と、チェーンソーが、“ウォーミングアップ”する。

 従者の者は、“それ”を、

 ――ジャ、キッ――!!

 と、泣いて怯えている、客人だったモノたちへと向ける――!!

 続けて、

「では、行きますよ――」

 と、従者のが再び、


 ――グォォーンッ――!!! 


 と、チェーンソーを唸らせ、作業へと取りかかる!!

 【ガソリン】の匂いに、エンジン音、それから、 

「う”っ!? うぅ”ぅ”――!!!!」

 などとの、断末魔呻き声が響き渡る中、

「……」

 と、主人の者は、ジッ……と、作業を見守るように眺めていた。

 そんな、滴る地に血飛沫がすこし漂う中、思う……


 ――さて、パク・ソユン様……


【準備】は抜かりなく進めております。

 貴女も、きっと、この【オブジェ】と【装花】を愉しんでいただけることでしょう。

 【わたくし】も、貴女に御会いできることを、貴女に御茶を振舞わせていただくことを、心から愉しみにして、御待ちしております――

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