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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第三章 事態は動くか

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35/71

35 恐らくは、【そっち系】の【隠語】



          ******



 時間は、すこし経ってしまってーー

 夜のチジミ屋のオヤジこと、キム・テヤンだが、過去の情報部時代の賜物か、昼間から【裏の情報】を調査しに行っていた。

 また、リーダーのカン・ロウンのほうは、ふたたび警察の、マー・ドンゴンたちに会い、情報共有などを行っていた。

 そのようにしながら、時間は早くも過ぎていき、こんどは、午後のティータイムのころのこと――

 いったん、パク・ソユンを除くメンバー三人は、江北にある、カン・ロウンの事務所に集まった。

【地下室に寄生する家族の映画】にでも出てきそうな、胡散くさくも、秘密基地のような空間にて、



「――その視点は、無かったよ、テヤン」



「けっ、……。そんくらい、思いつきやがれってんだ、まったく……」

 と、ドン・ヨンファとキム・テヤンのふたりが、まず、そう言葉を交わした。

 その話題というのは、どうやら、キム・テヤンとカン・ロウンが昼前のカフェで話した内容――、【茶会】の主催者というのが、【客人に茶をふるまった際の苦痛】のコントロールのため、【鎮痛薬】もしくは何らかの薬品を用いているのではないか――? という推測だった。

 なお、カン・ロウンは、奥のほうに【茶】でも淹れに行っているのか、その姿がなかったが……

「やっぱり……、裏社会の人間か? あるいは、何か、【異質な人間】なのかな? ソユンを、狙っている【主催者】ってのは?」

 ドン・ヨンファが、漠然とキム・テヤンに聞く。

「さあ、な……? 俺も、さっきまで、少し【裏の方ほう】の情報を、調べてみたけどよ……、なかなか、掴めんな……。今回の、【茶会】の主催者ってのは……。まあ、解決がラクな調査ってのも、そうそう無いけどな……」

 と、キム・テヤンが答えながら、天井を仰ぐ。

 そうして、少しばかり振り返ること――

 ――――

 ――


 ――たいてい、裏社会が動くのは夜のイメージがあるものの、夜まで待っている暇などなく、キム・テヤンは、昼間に調査に赴いていた。

 元国家情報部のエージェントで、現在はチジミ屋のオヤジ兼SPY探偵団のメンバーなどという、珍奇なプロフィール――

 そんなキム・テヤンだが、繁華街にある、一見すると小規模な商売をやっているような、こじんまりとした事務所にいた。

「――あら? 【昼の姿】もさまになっているじゃないですか! チジミ屋のオッサンというよりは、何ていうか? ちょい悪オヤジ・モデルみたいな」

 と、冗談っぽく言ったのは、裏社会の情報屋の、若い男だった。

 飄々とした様子ながら、その生業ゆえか? どこか動じない佇まいがあるという。

 なお、彼も、キム・テヤンの協力者のひとりである。

「ああ”? うるせぇな、ったく……」

 キム・テヤンは、案外まんざらでもなさそうなのを隠しつつ、顔をしかめながら、

「――で? さっさと話を進めるぞ。相談したいのは、お前さんも知ってると思うが……、この件だ」

「ああ! 例の、【謎の茶会の招待状】の件ですね……」

 と、パク・ソユンに届いた【招待状】の画像を見せ、協力者の男はピン――! ときた。


 そのまま、キム・テヤンは情報屋の男に話す。

 昨日、ドン・ヨンファが相談した【闇の植物の取引】に関する件や、先ほどカン・ロウンと話した、【鎮痛薬などが闇ルートから流れていないかとの仮説】などを、である……

 ――ひととおりの話を聞いて、

「ふ~ん……、それで、【植物】や、【クスリ】――、ですかぁ……」

 と、資料を見ながら、情報屋の男は呟いてみせた。

「まあ……、あくまで、【仮説レベル】で進めている調査だがな……」

 と、ブラックコーヒーを片手に、キム・テヤンが答えながら、

「それで、お前の知る範囲で、【これらのこと】にピンとくるものがあれば……、情報をくれるか、調査に協力してほしいと、思ってな」

「そうです、ねぇ……? 確かに、その【花屋】の人脈とは、ありますし……、【運び屋】界隈や、【園芸家】たちの間でも、いろいろと【噂話】が出ているのは、確かですね……」

「ほう……」

 と、言葉を交わした。

 恐らくは、【そっち系】の【隠語】が出つつ……


「――ただ、【界隈の間】で、ですね? もし、そのようなことをしている人間や組織があれば……、すでに裏でも【メジャーなビジネス】になっているはずなので……、そうすると、俺も、キム兄さんも、すでに充分な情報を掴めているはずですからね」

「まあ、そう言われてみれば、そうだな……」

「いわば、裏のほうでも、なかなか【マイナーなこと】をしているわけですね――。もし……、キム兄さんたちの仮説のように、【ギンピギンピなんて代物しろもの】を扱っている連中がいるとすれば……」

「マイナー、か……」

 と、キム・テヤンが、コーヒーカップを置いた。

「どちらにしろ、【メジャーな需要】は、なさそうじゃないですか? 犯罪組織や、猟奇犯が拷問に用いるにしても……、少々扱いにくいどころか、下手すると自分たちにも害が及にますし」

「まあ、な……。それも、けっこう、長期的なヤツみたいだしな……」

 と、キム・テヤンが、ふたたび、コーヒーカップを持ちつつ、

「ええ……」

「もし、やるとするならば……、【化学防護装備】や、【それなりの設備】ってのが、いるんだろうな……。まあ、俺たちの扱う案件の“人間”なら、【そんなもの必要のなさそうな連中】が、ちょくちょく出てくるけどな……」

「あっ……! 【兄さんたち基準】っての、忘れてましたわ」

 と、情報屋が、うっかりしたように言った。

 いちおう、キム・テヤンたちのSPY探偵団のこと――、それから、彼らの扱う案件には、ちょいちょい異能力系の人間が出てくるなど、【割と常識の通じないところがある】のを思い出したのだろう。

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