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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第三章 事態は動くか

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33/71

33 あくまで【茶会】という【文化的なプロセス】

「ああ……、いいだろう」

 と、カン・ロウンが間をおき、本題へと入る。

 そのまま、

「テヤンも、情報部時代に、少なからず、【拷問】というものについて、様々な知見を得てきただろ?」

「まあ、な……」

 キム・テヤンが答えながら、ラテに口をつける。

 カン・ロウンが続けて、

「もし、苦痛を――、【激痛を味わわせるような茶】をふるまい、“それ”を【嗜好してもらう】――、ということを、あくまで【茶会】という【文化的なプロセス】で行うとすれば、だ……」

「……」

 と、キム・テヤンが、渋い顔のままラテを口につけながら、続きの言葉を待ち、

「――その苦痛は、ある程度は、【加減する必要がある】――、とは言えないか?」

「……」

「……」

 と、微妙な沈黙が、ふたりの間に漂った。

「加減、ねぇ……」

 キム・テヤンが、その言葉を反復してみた。

 自分が、情報部時代に見聞きした範囲の、【拷問】についての伝聞・知識を思い出してみる。

 その、自分の知識の範囲内でも、拷問というのは概ね目的があるものだ。

 ただただ、苦痛を与えるばかりでは、あまり意味がない。

 ゆえに、カン・ロウンが言うように、【ある程度の加減が必要】だというのは、だいたいそのとおりである。

 そうすると、その、加減をする【技術】だったり、【ツール】なりが、主催者がわにはあるのだろう。


 そこまで考えたところで、

「――すると? もしかすると、茶会の主催者ってヤツは、【ギンピギンピ】やらを用いるのと同時に、何か、【鎮痛作用】のある物質、薬品も、使用している可能性がある――。そう、考えてんのか? ロウン?」

 と、キム・テヤンが、桜ラテを片手に聞いた。

「まあ、おおむね……、そんなところだ」

 カン・ロウンが答える。

「……」

「……」

 と、また軽く、沈黙を挟みつつ、

「――まあ、あくまで妄想、と【ことわり】を入れたからな、そこまで、自信のある仮説ではない。ただ、危険植物の裏取引というものを調べるのもよいが……、併せて、【こちらの面】でも、調査を行ってもよいのでは、と思ってな」

「まあ、調べてみる価値は、ないこともないかもな……」

 と、キム・テヤンも、おおむね同意するところだった。


「しかし、もし、そうだとすると……」

 ふたたび、キム・テヤンが、先ほどまで顔をしかめていたラテに口をつけつつ、

「“そこまで”して、何か、【痛み】を――、【激痛】なんつーもんを、【客人】に【ふるまいたい】、とは……? いったい? どんな【趣向】の人間なのやらな……?」

「さあ、ね……。しかし、我々が扱う案件だ。何か、【普通でない趣味・目的】を持っているかもしれないのは、確かだろうな」

「まあ、な……」

 と、ふたりは言葉を交わした。

 そのように話しつつ、何だかんだで、桜ラテの抹茶は減っていき、

「とりあえず、もう少ししたら行くぞ、ロウン」

「ああ」

 と、ふたりは少し残ったラテとともに、もう少々打ち合わせをし、先を急ぐことにした。



          ******




「……」


 と、パソコンの、大きなスクリーンを見ていた。

【そこ】に映るもの――

 白の、エレガントかつ清楚で、なおかつセクシーさのある、肩出しかつヘソ出し衣装に身を包む黒髪の女。

 それから、同じく清楚な【白のカチューシャ】に重なる形で、【黒のヘッドホン】というギャップ、と――

 すなわち、動画に映るのは、【SAW】の芸名でDJプレイをする、パク・ソユンの姿だった。


「やっぱ……、なかなかに、イカした子だねぇ」


 と、リクライニングにもたれながら、そう言った声の主――

 その後ろには、【ギンピギンピ】の剝製のフラワーアレンジメントが、どこかグロテスクな存在感を放って置かれていた。

 そんな、書斎のような空間に、


 ――ギ、ィッ……


 と、重厚な木製ドアの開く音とともに、

 ――カ、ツッ……

 と、軽くヒールの音を響かせつつ、秘書と思しき“いでたち”の女が――、インテリメガネに、まとめた髪、白シャツがさまになっている女が入ってきた。

「――会長? 例の件、どうしますか?」

 秘書の女が、入ってくるなり聞いた。


「……」


 と、会長と呼ばれた男は、

 ――ピタッ……

 と、すこし止まったかのように沈黙し、ゆっくりと……、リクライニング・チェアを回転させながら、振り向く。

「……やれやれ、……仕方ないね」

 と、そう微笑したのは、先日ドン・ヨンファと会った友人、ノア・ネルソンだった。

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