31 デフォルトのように舌打ちを
「――では、本題に入るぞ、ふたりとも」
カン・ロウンの言葉を合図に、話し合いを始める。
「まずは、ヨンファが調査してきた――、有毒植物の流通ルートについてだ」
「ぼ、僕のかい?」
と、自分の名を挙げられて反応するドン・ヨンファと、
「けっ――」
と、もはや彼が何を言おうが、キム・テヤンが、デフォルトのように舌打ちを挟みつつも、
「その、ギンピギンピのような植物の、【闇のルート】を調べれば……、【茶会】の主催者にたどり着くかもしれないという考えは、確かに、分からなくもない」
と、カン・ロウンが、会話の流れを取り仕切る。
「まあ、その裏のルートなら、俺も調べてやるよ」
キム・テヤンが、カン・ロウンの言葉に呼応しつつ、
「それに、こんなヤツと、その友人の調査なんてもんじゃ、あてになるか分かんねぇしな」
「そ、そんな言い方しなくても、」
と、ドン・ヨンファを、露骨にバカにしたように言ってみせた。
なお、このキム・テヤンがであるが、こう見えても元国家機関の調査員で、こうして夜の街で屋台をやりながらも、裏の世界の情報網に通じているという。
そのキム・テヤンも、酒を一杯やりながら言う。
「ちなみに、よ……? まさか、その【闇のルート】ってのに関わってんのって、お前の、友人って可能性もあるんじゃねぇよな?」
「……」
と、ツマミを箸で取っていたドン・ヨンファが、ピタリ――と止まる。
また、カン・ロウンが
「……」
と、無言で、ふたりの方を向いていた。
…………、…………
と、微妙な沈黙が漂いながら、
「い、いや……、そんなことないよ。……というか、そんな、【フラグ】を立てるようなこと言わないでよ、テヤン」
「けっ、何が【フラグ】だ」
と、「冗談はよしてくれ」というドン・ヨンファに、キム・テヤンが舌打ちして流す。
そんなふたりの、恐らくは“本題を進めてくれないやりとり”を慣れたように見ながらも、
「……」
と、カン・ロウンは、もうひとつ、【何か】を思いだしかけながらも、パク・ソユンの飲み残した【凶悪なカクテル】の方へ視線を移していた――
「ふぅ……」
と、視線を、もとに戻して、
「まあ、いい……、次だ――」
と、気を取り直すように、カン・ロウンは、一旦はそのことを忘れ、話を再開する。
「それで、もうひとつは、『ソユンが狙われていること』、そのものについてだ――」
との、カン・ロウンの言葉に、
「それ、だよな……」
と、少し重い表情になるキム・テヤンと、
「……」
と、無言だが、ドン・ヨンファも同じくであった。
自分たちの仲間が【ターゲットになっている――、という事実。
どこか、どんよりとした空気になるのは、仕方がなかった。
キム・テヤンが、酒を片手に話す。
「まあ、アイツは、俺たちに心配されたのが……、何か過小評価されたみたいで、ムカついて帰っちまったけど……、俺たちも、アイツが、“そう簡単に拉致されることはない”とは思っている……」
「……」
「……」
と、カン・ロウンとドン・ヨンファも、無言ながらも、それは同意するところだった。
また、キム・テヤンが続ける。
「ただ、よぅ……? いまのところ、集まっている情報からする限り、相手も、得体の知れない……、なかなかに手強い可能性もある」
「……」
「……」
と、カン・ロウンとドン・ヨンファも耳を傾き続ける中、
「いつ? どんな手で? その、【茶会】とやらに“連れて行く”つもりなのか……?」
と、キム・テヤンが重い表情のまま、考え込むようにグラスを置いた。
そんな、重い空気が漂いながら、間を置きつつ、次にカン・ロウンが言った。
「――まあ、そんな、心配すべき要素もあるだろうが……、ある意味、今回は、ソユンが帰ったほうが都合がよかったかもしれないな」
との、カン・ロウンが放った言葉に、
「あ……、ん?」
「どゆ……、こと?」
と、キム・テヤンとドン・ヨンファのふたりが、キョトン……と、訝しげな顔をした。




