30 何が、桜ストロベリーフラペチーノだ?
「ん、ん……? おいおい!? 何を頼んでんだよ、ロウン!!」
と、思わず、キム・テヤンが声を荒げた先――
そこには、ブラックコーヒーなどという硬派なものでなくて……
何やら、“女子がSNSで映えさせてそうな桜色に抹茶色の彩るラテ系の飲み物”を、男子ふたり分を手にした中年男、カン・ロウンの姿があった。
「ああ……、春の新作の、桜抹茶ラテだ」
と、カン・ロウンが答えながら、スッ――と、キム・テヤンの前に置いた。
確かに、桜色と、抹茶色と――
それらの色とクリームの白、フレーク状に添えられたベリーやチョコレートが調和する様は、春の新作ラテとしては申し分ない。
「けっ、何が、桜ストロベリーフラペチーノだ? 俺は、ブラックコーヒーって決まってんの、知ってんだろが? ワケわかんねぇもん、買ってきやがって」
と、商品名を間違えながら、キム・テヤンが、苦虫嚙み潰したよう顔でぶつくさ言うも、
「まあ、そう文句言わず、飲んでみろよ。もしかすると、次から、お前の御用達になるかもしれないぞ」
「なるかよ、そんなもん……」
と、こちらの機嫌など気にすることないカン・ロウンに、「やれやれ」と、仕方なくカップに口をつけるより他なかった。
それで、本題に入っていくわけなのだが、ここで、昨夜のことに、すこし遡る――
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――振り返ること。
昨夜の屋台で、パク・ソユンが帰ってしまった後で、
「あぁ~あ……、ったく!! 帰っちまったじゃねぇか!! また、めんどくさい形で機嫌悪くさせやがって!! ヨンファ!!」
と、キム・テヤンの声が響いた。
「え? え、ぇ……? ぼ、僕なの? て、テヤンのせいじゃないのかい?」
と、ドン・ヨンファが動揺しつつ、反論しようとするも、
「ああ”? 何で俺のせいなんだよ!! 十中八九おめぇのせいだろがッ!!」
「な、何でだよ、」
と、口の悪く声のデカいキム・テヤンに、ますます圧されてしまう。
そのようにしていると、
「――へいへい、君たち、その辺にしてくれ」
との、カン・ロウンの声がしたのと、同時、
「「――へ?」」
と、キム・テヤンとドン・ヨンファは、自分たちの身体に働く違和感を感じるとともに、
――タッ、タッ、タッタカ――♪ タッ、タッ、タッタカ――♪
などと、ふたりは勝手に体が動き出し、ダンスバトルを始める。
「ちょっと!? か、身体が勝手に――!?」
「お、おいおいおいおい!! な、何しやがんだ!!」
と、意思に反してダンスしながらも、ふたりが慌てたように叫んでいると、続いて、
――パチンッ……!
と、今度はカン・ロウンが指を鳴らすとともに、
――フッ……
と、ふたりにかかった【術】が解けるや、
「う、うわっ!?」
「うぉぉっ!?」
と、ふたりは同時に、漫画のようなリアクションで転け、地面に崩れた。
続けざま、
「いてて、て……、まったく!! 変なことしてくれやがって!! ロウン!!」
「そ、そうだよ!! 僕たちに、その、術を使わないでくれよ!!」
と、ふたりは起き上がりながら、抗議するも、
「――それで、ソユンが帰ってしまったのは、もう仕方ないことだ。とりあえず、残った我々で、話し合うしかないだろ」
と、カン・ロウンは、ふたりのことなどお構いなしに、マイペースに話を進めていく。
「けっ、スルーしやがって……」
キム・テヤンが舌打ちしつつ、
「――で? どういう話を、していくわけだ? このナヨナヨしたヤツの、しょうもない調査なんざ、何も役に立ちそうもねぇしよ?」
「そ、そんな言い方しなくても、いいじゃないか、」
「まあ、そこまで役に立たないわけじゃないだろう。それに、ヨンファの友人たちも調査に協力してくれるようだから……、もしかすると、今後、有用な情報も得れるかもしれないだろ」
「けっ……」
と、ドン・ヨンファを擁護するカン・ロウンに、再び面白くなさそうに舌打ちした。




