27 【錆びたチェーンソーと蔓バラ】
(3)
場面は、ふたたび韓国に戻る。
おおよそ、昼前のこと――
ソウル市内の中心部にある、高級マンションの高層階、パク・ソユンの部屋にて。
さすが、モデルの部屋とでも言うべきか、ラグジュアリーにコーディネートをされた内装。
ただし、部屋の一角にある場所には、某デザイナー・バッグのような菱形タイル状のパターンで彩られた【白いアート壁】を背景にして、【錆びたチェーンソーと蔓バラ】という、あまり趣味の良いとは言えないオブジェが鎮座していた。
ソファー前のローテーブルには、昨夜帰ってきてから、さらに飲んだのか――? 酒瓶やグラスが、散らかっているという。
また、ベッドに置かれたノートパソコンだが、グロ映画、戦場系ゲーム、それから猟奇犯罪解説動画などが、ウインドウを無造作に重ねつつ、だらしなく垂れ流しになっている有り様だった。
そんな、恐らくは、二日酔いの様相も見て取れる部屋に、
――ジョ、ワァァッー……
との、流水の音が奥からするとともに、
「ああ、だっる……」
と、浮かない表情で、“ジグソウ・プリンセス”ことパク・ソユンが戻ってきた。
戻ってくるなり、スポーツ飲料を冷蔵庫から取り出しつつ、
――ドッ、スン……!!
と、崩れるようにソファーへと腰を下ろした。
「はぁ~、あ……」
パク・ソユンは、ダルそうに溜め息しながら、思う。
昨夜飲んだのが、“効いて”いるのか――?
二日酔いにまではなってはいないものの、若干ダルく感じるし……、胃や腹も、少々ムカムカするものを感じる。
まあ、あんな、ハバネロよりヤバい辛さのものを、酒とカクテルして飲んだわけだから、当然と言えば当然だが。
とは言え、本当に、よく内臓がおかしくならないものだと、自ら感心するところだ。
常人であれば、“この程度”では済まない。
場合によっては、本当に救急車レベルのものだろうに。
そのような、【ほろっとした胃腸のムカつき】とともに、
「――ああ、ムカつくわ、あいつら……。特に、ヨンファ、あいつ……」
と、パク・ソユンは昨夜のことを思い出し、ふたたび、不機嫌そうな顔になる。
その、イライラの正体が何なのかは、判然としないのだが……、恐らくは、自分が茶会の“客人”として狙われているという事実――
そこから来る、漠然とした緊迫感が原因のひとつであるのは否定できないとして、また同時に、メンバーたちに“心配される”ということ自体が、どこか癪に障っていた。
それも、なぜか? 特に、ドン・ヨンファに対しては、より一層に。
「はぁ……」
パク・ソユンは、気だるそうに溜め息する。
そうしながらも、ノートパソコンと本を、ローテーブルへと置きながら、思う。
しかし、“ああいう風”に言ってしまったからには、“自衛力を高めなければ”ならないだろう。
まあ、そう簡単に、やられるつもりはないのだが、いかんせん、相手の得体が知れないこと――
それから、もし、自分たちの推察するとおり、【茶会の主催者なる者”が】ギンピギンピやら、フッ酸などといった常軌を逸したものを“振舞ってくる”のであれば(拉致し、無理やりにであろうが)――、
「私も、“それに耐久”できる対毒能力、鎮痛能力を高めておく必要がある――、か……」
と、パク・ソユンは、思わず言葉にしていた。




