26 まあ、だいたい普通は【A】か【K】を仕込む――、いや、そもそも、普通は袖にカードを仕込んだりしないのだが……
(2)
翌日――
――というか、そもそも、時空は定かではない。
【ゲーミング兼六園】とでもいうべき、絢爛豪華な坂の庭園のような異世界空間のこと、
「ふぇっ、コラッ……、しょういちッ――!!」
と、松や桜を眺める中、設けられたポーカーのテーブルにて、盛大にクシャミをしたのは、黒の着物姿のタヌキ――
――否、狐耳の妖狐の、神楽坂文だった。
鼻から、某鼻毛を武器にするマンガの主人公のごとく、舞い散らんとする鼻水に、
「うわッ!? 何やってんだよ! このクソポンコツダヌキ!!」
「シネゴミッー!!」
などと、異形だったり、ヒトガタをした者たちがヤジる中、
「ひぃッ!! きったな――」
と、タヌキこと妖狐の隣に座っていた、古い神話にでも出てきそうな闇落ちしたイザナミ風の女が、もっともな反応をするかと思いきや、
「……く、ない」
と、『汚くない』と訂正した。
あろうことか――?
そこには、先ほどまで鼻水だったものが、青い薔薇へと――、美しくもカリスマ的な活け花作品へと、“変化”していた。
「……てか、むしろ、めっちゃ綺麗」
「何? 逆に、めっちゃムカつくんだけど。ほんと、死んじゃえよ、タヌキ」
「てか おい!! こいつ、袖に【J】しこもうとしてんぞ!!」
「だから、ドレスじゃなくて、着物着てんのかよ!!」
「てか、何で【J】何だよ? 普通は【A】じゃねぇのかよ?」
と、【神そうな奴らはだいたい友達】なメンツがガヤる中で、妖狐はカードを袖に仕込んで不正使用としていた。
この仕込んだ【J】を、次に【J】と何かの手札が来たときに差し替えることで、【J・J】という、微妙に強い初手ができるわけである。
まあ、だいたい普通は【A】か【K】を仕込む――、いや、そもそも、普通は袖にカードを仕込んだりしないのだが……
「ったく、邪魔じゃねぇか!! てめえの鼻水よう!! クソダヌキ!!」
「フハハ」
妖狐はドヤ顔するも
「フハハじゃないわよ。どかしなさい。殺すわよ」
と、隣の闇落ち女に言われ、「やれやれ」と、どかしてやる。
再開しつつ、
「しかし、クシャミとは……? 誰かが、噂でもしておるのか?」
と、妖狐は不思議そうな顔で、虚空を仰いでいた。




