2 ジョジョ立ちもどきというべき奇妙な立ちポーズ
(2)
夜のこと。
韓国は、ソウル市内にて、
「――おっ、おっ、お、お、おっ……♪」
と、コミカルかつ小刻みに、丸サングラスに高級スーツをキメた、やや小太りな男が躍る。
また、続いて、
――ガチャッ……
と、青色の高級オープンカーのドアが開くなり、スラッとした高身長の青年が――
右半分が黄色に左半分がピンクの、花をモチーフにした奇抜な高級スーツを身にまとったキノコヘアーの青年が颯爽と降り、やってくる。
青年は、トコトコと踊る中年男の傍へやってくるなり、
――ヒョイ、ヒョイ……♪
と、次は自分の番だと言わんばかりにハンドサインをし、
ーータッタカ――♪
と、カウボーイダンスのように軽快に――
まるでラップバトルでもするかのように、踊りはじめる。
また、そこへ、
――カッツ……、カッツ……!
と、奥のほうから、これまた軽快に歩くヒールの音が響いてきた。
現れたのは、同じくスタイル抜群で、絵にかいたような韓国美女モデルのような女――
白の大粒のパール・カチューシャで髪を後ろにまとめ、胸元を見せたヘソ出しスタイルに長袖を羽織った、エレガントとカントリーガール風の混ざったファッションの女も、
ーージャカジャカ――♪
と、フラメンコか何かのような情熱的なステップでこちらへやってきて、
――ズッキュン――!
とのごとく……!
右手のひらを上に向けつつ、横向きで半身を強調した、ジョジョ立ちもどきというべき奇妙な立ちポーズをキメていた。
すると、
「おい、お前ら! 他の客が逃げるから、やめやがれってんだよ!」
と、無精ひげを伸ばし、クシャッとっした髪の――日本でいえば醬油顔の、チジミ屋台のオッサンが三人に怒鳴った。
「――あら、ごめん、テヤン。つい、ポーズをとっちゃた」
ポーズをキメつつ謝る女に、
「“つい”とってしまうポーズじゃねぇだろ? そいつは」
と、テヤンと呼ばれた屋台のオヤジが、やれやれと呆れてみせる。
そうしながらも、
「――テヤン、とりあえず、適当に何かちょーだいよ」
と、モデル美女が頼む。
「けっ、何だよ? 何かちょーだいって――。お前ら、めんどくさいからチジミととトッポギと豆腐キムチでも食っとけや!」
と、テヤンがそう答えながら、ジンロと、お任せの品をさっさと出してやる。
「ちょっと? 私たち、客よ」
抗議しつつもさっそく箸を手にとる女と、
「そうだよ。めんどくさいって、酷い言いかただよな。――まあ、とりあえず、テヤン、ジンロ頼む!」
と、黄色とピンクの花柄スーツのキノコ頭の男が酒を頼んだ。
「あいよ! ――てか、お前? 車だろ? どうすんだ?」
「ああ、あの車は一週間後に取りにくる」
キノコ頭が、何も問題ないように即答する。
いちおう、駐車場に停めてはいるのだが、さっさ取りに行けというところだが……
そうしていると、
「ほら! お前ら、めんどくせぇから、もう注文するなよ!」
と、テヤンがジンロを持ってきて、ドン! と、卓に置いた。
そうである――
……いや、何が、“そうである”だというところだが、“そうである”――とまとめておく。
彼ら四人組だが、『SPY探偵団』という――、一種の、異能力者の兼業探偵グループを作って活動をしていた。
以下、メンバーをそれぞれ紹介していく。
まずは、SPY探偵団のリーダーを務めるは、丸サングラスの小太り男の、カン・ロウン。
江北に秘密事務所を構えており、コードネームは“スタイル”という。
次に、紅一点というか、女性メンバーのパク・ソユン。
モデル体型の美女で、実際に『ソウ』の芸名でモデル活動をしている。
そのあだ名であるが、猟奇映画やグロもの好きなことから、“ジグソウ・プリンセス”、“ジグソウ”と、某グロ映画のまんまだった。
三人目は、黄色とピンクの組み合わせの奇妙なスーツを着た長身のキノコヘアの、高級車から現れた兼業実業家の青年のドン・ヨンフォ。
あだ名であるが、スーツの配色か、花柄からか、“フラワーマン”であるが、髪型からいうと“キノコ・マン”のほうがいいだろう。
とりあえず、高級車で来て、駐車場に一週間もズボラに停めたままにしておけるくらいでなので、いちおうは金持ちではある。
最後は、この屋台を営むオッサンの、キム・テヤン。
コードネームは“チジミ屋のオッサン”、“チジミ屋のオヤジ”と、まったくひねりがない。
――とりあえず、このような兼業探偵活動をしている彼らであるが、隠した異能力と、それぞれの分野で世に紛れることで調査、情報収集を行っているという。
まあ、紹介的なものはそこそこに、
「――じゃあ、とりあえず、話を始めようぜ」
「ああ」
と、テヤンとロウンが交わしたのを合図に、本題に入ることにした。