19 フック型の、恐らく内臓に引っかける系の拷問および身体破壊器具を
「胃が……、いや、腸までぶっ壊れるぞ」
キム・テヤンが引きつったような顔で、心配して言う。
だが、聞いているのか聞いていないのか――? パク・ソユンは、
――グビ、グビ……
と、黙々と飲んでいた。
まあ、常人であれば、キム・テヤンの言葉のように、胃や腸が、大きくダメージを負うのは間違いない。
人によっては救急車レベルだろうし、あるいは、ひょっとすると、ショック死してしまうかもしれない。
そんな、毒劇物と同等クラスの凶悪の液体を、パク・ソユンは飲んでいるのだ。
なお、若干の脂汗くらい浮かべながらも、表情は、平然としているように見える。
いや、平然ではなくて、どこか機嫌が悪そうに、テーブルを指先でトントン――していた。
そこへ、
「何、カリカリしてるんだい? ソユン?」
と、やめておけばいいものを……、ドン・ヨンファが、恐る恐る聞くと、
「は? ――してないわよ。アンタの胃でも、引っこ抜いてあげよっか?」
「ひっ!? ひぎぃぃッ!! なっ、何でッ――!? 心配してあげただけなのに!?」
と、これは、どこから取り出したのか――? フック型の、恐らく内臓に引っかける系の拷問および身体破壊器具を、“ジグソウ・プリンセス”ことパク・ソユンは手にしつつ、ドン・ヨンファの口をこじ開け、脅してみせる。
そのように、ドタバタしたやり取りをするふたりを、
「……」
と、呆れた目で、「また、こいつらは……」と云わんかのようにキム・テヤンは見ながらも、
「――しかし、どうするよ? ロウン?」
と、口数少ないリーダ、“スタイル”こと、カン・ロウンへとグラスを向け、揺らしてみせた。
「……う、ん?」
遅ればせて、カン・ロウンが反応する。
「お前の方は……、何か、収穫はあったのか?」
キム・テヤンが、聞く。
「いや……、警察にも、マーさんとこにも、何か情報がないか行ってみたんだが、な……、なかなか、芳しくなかったよ」
カン・ロウンが答える。
「けっ……、警察の連中も、使えねぇか……」
と、キム・テヤンが舌打ちしつつ、クルビに手をつけ、そのまま喰らう。
また、カン・ロウンが話すに、
「まあ、マーさんたちからは、収穫は、特に無かったんだが……、いちおう、こちらの推察なりを話してある。毒劇物を振舞う茶会――、もちろん、そこで有毒植物が用いられている可能性も、な」
「ああ、そうかい……」
と、キム・テヤンが相槌しつつも、
「おいッ!! いつまでじゃれ合ってんだ!! お前ら!!」
と、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりのほうを向いて怒鳴った。
そこには、
「ひぎぃぃ!! かっ、勘弁してよッ!! ソユン!!」
「ほぅら、飲んで飲んで~。遠慮しなくていいから」
などと、もがくドン・ヨンファの口をこじ開け、劇物クラスの激辛カクテルを飲ませて責め苦を与えようとする、パク・ソユンの姿があった。
「おいッ!! やめれてのッ!! お前も、ソユンッ!!」
キム・テヤンが間に入り、パク・ソユンを止めさせる。
「あら、テヤン? 今から、いいところだったのに」
と、パク・ソユンは言いながらも、「残念ね」のジェスチャーをして手を止めた。
まあ、最初から、本気でこんなものを飲ませる気はなかったのだろうが。
解放されて、
「ふ、ふぅっ……、た、助かったぁ……」
と、ドン・ヨンファが安堵していると、
「ヨンファ!! お前も、さっさと話をしろっての!! 釜山に行って、その――、ギンピギンピとか、有毒植物の闇のやり取りについて、いちおう調べてきたんだろ?」
と、キム・テヤンが急かしてきた。
「わ、分かったよ……、テヤン。い、いま、息を落ちつかせてるとこだよ、」
ドン・ヨンファは「そんな、急かさないでくれ」と答えつつ、水を一口飲む。
その、息を整えているドン・ヨンファに、カン・ロウンが聞く。
「ヨンファ……、そんな、有毒植物の、闇の取引というのは……、実際に、“ある”のか? 警察は、そのような情報など、掴んでないようだったが」
「そう、だねぇ……? いちおう、その……、怪しいやり取りってのは……」
と、ドン・ヨンファは思い起こし、
「……」
「……」
「……」
と、皆が、ゆっくりと沈黙して注目する中、
「――“ある”ようだね」
と、わざとらしく、間を溜めて答えた。
そこから、クルビを肴にしつつ、ドン・ヨンファが回想まじりに話すこと――
今日の昼の、ノア・ネルソンのオフィスでのことだった――




