11 ノリノリな曲から、カタルシスを感じるほどに美しいトラック
つっこみつつも、気を取りなおして、
「まあ、とりあえず、もう配信の時間だ。そっちに専念しようぜ、ソウ」
「警備のこととかは、さ? こっちに任せて」
との、ふたりの言葉に、
「うん。わかったー」
と、“ソウ”ことパク・ソユンは、あまり分かってなさそうな「分かったー」で答えつつ、軽やかにDJブースのほうへ向かう。
向かいつつ、
――くる、りっ――
と、振り向き、
「ああ、そうそう。あんまし、誰かを疑いたくないんだけどさ……、念のため、ここに来た人の中にも、怪しそうな人がいないかどうか? いちおう見ておいてくれる?」
「ああ、分かったよ」
「配信のほうも、“変なの”がいないか見とくから」
と、言葉どおり念のため、パク・ソユンはふたりに頼んだ。
そうして、DJブースに登壇するパク・ソユンこと、DJソウ――
春をイメージした、エレガントかつカワイイ系の要素も含みつつ、ややセクシーさのあるヘソ出しスタイル――
そんな装いで、DJプレイするは、EDMに、ハードスタイルと……、ギャップがありつつも、いわゆるカッコいいものだという。
ーードッ、ドッ、ドッ、ドッ――!!
との特徴的なドラムに、ノリノリな曲から、カタルシスを感じるほどに美しいトラック――
それから、途中には、おふざけのようにリメイクしたお遊びトラックと……
変化のあって飽きさせない選曲と腕は、確かなものだ。
現場と、ネット配信ともに、ファンたちを盛り上げさせる。
もちろん、パク・ソユン自身もノリよく、なおかつ、モデルとしても映えるプレイしながらも、
「……」
と、一瞬だけ――、さっと眺めてみた。
まあ、人間観察術の一種とでもいうべきか――
このような、ファンを含めて、多くの人間がいる中で、サッ――と、まるでスキャンするがごとく、何か“ピン”とくる人間がいないかどうか――? それを“観察”する能力を、持っていることには持っている。
というのは、SPY探偵団のメンバーとして活動しているのことも理由のひとつなのだが、ファンの中にも、悪質というか、度が過ぎた者がいること。
それから、ビジネスでも多くの人間のつながりがあるが――、いや、むしろ、こちらのほうが魑魅魍魎かつ玉石混交だろう、邪な悪意を以って接近してくる者も珍しくはないため、そのような観察眼は必須だった。
「……」
と、パク・ソユンは気づく。
いちおう、どこか“ねっとりした視線”は、いくつか“ある”。
異性であれ同性であれ、好意からの、ストーカーのような者か……?
あるいは、わざと近くに現れに来る、アンチか……?
ただ、例の招待状から感じるのは、“それら”ではない。
もっと、“何か異質”とでもいうべきかーー?
そのように考えながらも、
「(おっとぉ……?)」
と、パク・ソユンは一瞬、ハッ――と、我に返ったような表情をした。
おっとっと――、である。
SPY探偵団のメンバーとしての自分というのはさておいて、今はあくまで、DJとして活動をしている自分である。
うっかりと、調査のことを考え、それが表情に出てしまったが、“それら”は後にしておくべきだ。
「――♪」
と、パク・ソユンは気分を切り替え、軽快にリズムに乗りつつ、首にかけたヘッドフォンを片耳へとやった。




