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大通りでタクシーを拾い、勇気が歌う商店街を目指した。何度か足を運んでいたから、駅名を覚えていた。道中、胸の痛みは治っていたが、張り詰めていた心の糸が切れ、再度深い悲しみと倦怠感が襲ってきた。
「すいません。ここでいいです」
商店街の入り口で降ろしてもらい、勇気のいる場所を目指した。夜はまだ肌寒く、スタジアムジャンパーのポケットに両手を入れた。時間は22時をまわっていた。勇気は引き上げた後かもしれない──祈るような気持ちで商店街のゲートをくぐった。
「勇気さん!」
ギターケースは開いていたが、後片付けをしている勇気を見つけた。
「駿さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です。今日もやってたんですね。ほんと凄い」
「いやいや。続ける事しか出来ないから。そうそう! 見てください!」
勇気はギターケースの中を指差した。
「1万円ぐらいになりましたよ! 10人は立ち止まって聴いてくれました」
「マジですか! 凄いな! この場所での1万てのは 」
ギターケースの中には、千円札や五百円玉、小銭が入っていた。
「駿さんが書き下ろした新曲がかなり反応良くて、10回は歌いました」
「バラード? マジすか。そりゃ嬉しいな」
「 オーディションライブの次の日に、幸太君も来てくれたんですよ。このバラード最高って言ってました」
「……」
酷い吐き気に見舞われ、勇気の前で跪いた。涙がとめどなく溢れ、声をあげて泣いた。
「どっどうしたんですかっ!」
「こっ幸太がっ! ……しっ死んだんです」
「えっ? 何言ってんすか。らしくない冗談ですね。駿さん」
「どっどうすればいいんだっ! 俺のせいなんだよ。勇気さんっ! あの時、福岡に行くのを止めていたら……」
嫌な予感が確かにあった。あの時、止められなくても一緒に着いていく事も出来たはずだった。幸太だって、1人よりも2人の方が心細くなかったはずだ。後悔の波が押し寄せ、深い悲しみに飲み込まれてしまいそうになった。
「駿さん! しっかりっ! あなたは悪くない!」
寸前のところで、勇気の温もりを左肩に感じた。そのまま担ぎ上げられるようにして立たせてくれた。
「幸太君が亡くなったのは本当みたいですね……」
「ふっ福岡で……じっ事故に……」
「駿さん、僕達の最初の試練ですね。最初にして最大かもしれない……」
「ゆっ勇気さん、何故そんなに落ち着いてるんですか?」
「そう見えますか? 少し前に色々とあったんです。幸太君の事とは比較にはならないですが、失う怖さというか、そういった事がありまして」




