3-20:Guitar Solo / Kanon
――ついに萩月祭がやってきた。
熱い魂の宿るこの腕を、ただひとりの男のために捧げて。
独り磨き続けてきた爪牙を世間へ向かって突き立ててやる、このときが!
(――行くで。これが……うちの独奏やっ!)
大地を蹴り出すようにディストーションを踏み締めて、音も身体も前に出る。
吠え上がるようなチョーキング――鋭いチョップを利かせた威嚇で驚かし、
(――喰らえ!)
一気呵成に弾き倒す。
指板を高速で駆け回り、
引き裂くようにかき鳴らし、
時にはピックを咥えて両指で奏でて。
狼が駆け抜けていく暴風の如く、速く、強く、獰猛に――!
―――^―――――――^―――――^――^―――♪
「す……すげえ……」「かっけー……」「上手すぎだろ……!」
「指見えねえ」「どうやってんだあれ」「人間に弾けねえよ」
「やばい」「怖い」「殺される……!」
「――狂犬だ……!」
弾きながら花音はほくそ笑む。
感心を通り越して引かれてる。畏怖で近づこうとすら思えまい。
それで花音は本望だった。
誰にも追いつけなくていい。
誰にも触れられなくていい。
魂が導く方向に、どこまでも駆け抜けていけばいい。
不安はない。迷いもない。
なぜなら花音は知っている。
独りで奏で続けた時間の先で、必ず――、
「花音!」「新ちゃん!」
同じ周波数で叫ぶ、魂の片割れと出会えることを。
独奏が二重奏――ツインリードでのソロへと移る。
音階の三度上を新月が、三度下を花音がそれぞれ担って。
全く同じ超難フレーズを息ぴったりに、ふたりは添い遂げていく。
―――^―――――――^―――――^――^―――♪
―――^―――――――^―――――^――^―――♪
花音は手元を一度も見ない。
夢の中でも弾けるぐらいやってきたから。
それぐらい好きで好きで仕方がないから。
世界に大手を振っていちゃつけるこの時間だけは、大好きな人を独り占めして見ていたい。
(――好き。……大好き、新ちゃん!)
あの夜、恋に落ちた。
一番見てほしいところを見てくれて、一番ほしい言葉をくれた。
この人が手を握ってくれた瞬間、そこに宿る魂が教えてくれた。
これが運命なんだって。
人を好きになるってこういうことなんだ、って。
そして一緒に、魂はこうも教えてくれた。
――こいつを野放しにしちゃいけない。
――がっちり捕まえておかないと、絶っ対よその女がほっとかない!
(結局当たっとったし。予感……!)
思い出されるのは同じ夜。
花音は尋ねておいたのだ。
『――なー。新ちゃんって、なんでそんな萩月祭に出たいん?』
いい舞台なのは確かに分かる。バンドを組んでみたいのも分かる。
だけど達観してる新月にしては妙に必死で、そこがどうしても気になった。
『な、なんでって、そりゃあ…………えーっと』
新月は少しだけ考え込んで、まあ嘘にはならないか、なんて独り言を言って。
ちょっとだけ照れくさそうに、だけど悪戯っぽい笑顔で白状した。
『――モテたいからだよ。決まってるでしょ?』
(――絶っっっ対、そうはさせへんからなぁっ!!!)
曲の終わり――アウトロで激しいトレモロをかき鳴らす。
縄張りを主張するように、うちの男にちょっかいかけたら殺すと殺意を込めて。
(――あんたは、うちにだけモテたらええのっ!)
竜胆花音はこれからも、魂をかき鳴らしていく。
// 3rd Song:【Howl for the Moon】……END
// Next Song:【Rabbit Bullet Under Ground】
// or
// Bonus Track:【Foreplay♡Kanon】




