番外編 春!桜!お花見だぁ♪
私は、桜並木に囲まれた道を歩いていた。ピンク色の雪がチラチラと舞い、始まりの気配を感じさせる。
隣には閑みこ先輩と上川紫苑先輩が肩を並べて歩いていた。
なぜ水縹学園のvirtual部が配信部屋に籠らず、こんな場所にいるのかって?
それは……
「ねぇ二人とも!春だよ!?」
ある日私達3人は、virtual部が使っている教室で珍しくも集まっていた。私が配信を終えたあと配信部屋の扉を開けると、みこ先輩が体を乗り出すように何かを訴えてきたのだ。
「えーっとー」
「春ですね」
みこ先輩の糸を汲み取り切れず紫苑先輩は適当な返事をし、私は返答に戸惑っていた。
そんな私達に、みこ先輩は頬を膨らませてしまった。
「んもう!2人とも分からずやなんだからっ」
「春だと何かあるんですか?」
私は、すかさず聞く。春と言えば卒業、入学、新学期、花粉症……?配信になにか関係するものだろうか?新しい企画とか……?
「ふふん。春と言えば……お花見!でしょ?」
みこ先輩がツインテールを振り回して、キメ顔をした。
「あー確かにお花見の時期ですね」
「そう!そして、お花見と言えば桜!桜と言えば……ピクニック!」
みこ先輩がピクニックと言葉をだした時に、紫苑先輩がビクッと体を震わせていた。
「ピクニックですか……楽しそうですね!」
「でしょでしょー?」
「私に断る権利は……」
「あーりーまーせん!」
紫苑先輩は肩を落としている。紫苑先輩は日の元にあたる行為が苦手なのだろう。確かに紫苑先輩がピクニックでキャッキャ騒いでいるイメージは……浮かばない。
「それじゃー、私お弁当作って持っていくね♪」
「では私はレジャーシートと飲み物を用意しますね」
「はぁ……」
という事で今に至る。
私達以外にもたくさんの人が行き交ってはいるけれど、平日ということもあってせかせかと素通りしていく人ばかり。これは、場所を探すのにも少し期待できるのでは?
「で、なんで俺まで来なきゃ行けないんだよ?」
そうボヤくのは、牛王だった。
「祭りごとと言えば牛王じゃない?」
「ちょうどいいタイミングで現れたんだもん。当然誘わなくちゃ」
「別にいいけど」
みこ先輩は上機嫌で足取りも軽やかである。しかし、牛王も紫苑先輩も足取りは重く、とぼとぼと歩いている。なんだか、ちぐはぐな面々でちょっと面白い。
「あ、あの辺がいいんじゃない?落ち着いて四人で騒げるよ♪」
しばらく歩いてから指し示したのは、開けた広場の道から少し離れた場所だった。そこには大きな桜の木が立っており、その木陰はとても気持ちよさそうである。
「いいですね!行きましょう」
私達一行はその場所へ行き、ピクニックの準備をする。私と牛王でレジャーシートを敷き――牛王が目的とは違うところに広げようとするので言い合いになったが――その上にみこ先輩がお弁当を広げる。
お弁当はどれも美味しそうである。アスパラベーコンに唐揚げ、だし巻き玉子にたこさんウインナーまで。見ているだけでお腹が空く。
「さ、食べよう♪」
「飲み物も持ってきました」
「酒は?」
「んなもんあるわけないでしょ!?」
未成年者飲酒禁止!ダメ絶対!
「えー。花見と言えば酒だろー?」
「何を言うかっ」
「ちっ」
冗談だとは思うけど、本当にここにお酒があったら牛王のことだから飲んでいそうだ。
「それじゃー、virtual部の今後の活動に……かんぱーい!」
「「かんぱーい」」
と言いつつ、手にした飲み物はりんごジュースである。
それから、私は牛王にあーだのこーだの振り回されながら、みこ先輩は終始ニコニコと満足気な顔をしている。紫苑先輩は、隅の方で何やら書いていた。
「紫苑先輩。なにを書いてるんですか?」
皆がみこ先輩の用意してくれたお弁当を食べ終わった時に、気になって尋ねてみた。また凄い絵を描いているのだろうか。
「大したものは……」
「見てもいいですか?」
紫苑先輩は無言でチラッと私を見ただけだった。私はそれを勝手に肯定と取り、覗き見る。
そこには桜の木の下で私達――正確にはvirtualの中の私達――が、お弁当を囲んで笑いあっている絵だった。
「すごい……」
相変わらずの凄すぎる絵に語彙力を無くしてしまう。
そんな私を見て、みこ先輩も牛王でさえ同じように覗き見る。
「まぢすげえよな紫苑の絵は」
「紫苑は凄いんだよ♪」
みこ先輩は、自分の事のように誇らしげだ。
紫苑先輩は、恥ずかしいのか黒縁の眼鏡をクイッとあげて誤魔化している。
「これ完成したら、私達の教室に飾っておこうよ。今日の思い出の1ページとして♪」
「あ、いいですね!」
「こんなので良ければ……」
何言ってるの、と私もみこ先輩も口を揃えて訴える。こんな素晴らしい絵を描いてくれるんだから、こんなのではないのだ。
「よぉし!今夜も配信頑張るぞ!」
なんて、気合を入れると目を丸くした先輩達がクスクスと笑い出す。
「え、なにか私変なこと言いました?」
「がんばれー」
牛王は相変わらず心のこもっていない言葉を投げてくる。別にいいもん。牛王に応援されなくたって、味方は沢山いるんだから。
その後も騒いで遊び語り合い、virtual部初のお花見は終了した。結局いつもの日常でしかなく、別にお花見じゃなくても、とも思わなくは無いがたまにはいいよね。
私達virtual部は、これからも続いていく。明日はどんな人に会えるだろう?この胸の高鳴りは、止まるところを知らない。
読んでくださりありがとうございます!
久しぶりのつづりさんとみこさんでした♪
夏に向けて新たな物語を思案中です。そちらは3、4話になるかと思いますので、お楽しみに♪




