第十三話 ようこそvirtual部へ
生徒のほとんどが、グラウンドに集まっている。残りは校内の窓から覗いていたり、屋上にいる者もいた。
空にはすでに星が満点に広がり、学園祭を祝福しているようだ。
今にも落っこちて来そうだなぁ。
「綺麗だね♪」
気づけば、みこ先輩と紫苑先輩も空を見上げていた。
わたしたちはこの先もvirtual部として、一人の配信者として盛り上げていきたい。
みんなに「会える」VTuber。それはみんなに会うだけじゃなく、配信内でも視聴者さんに近い存在でありたい。
まるで隣でお話しているかのように。
星に願う。
この先もみこ先輩や紫苑先輩と、配信を盛り上げていきたい。いや、きっと盛り上げる!この先もずっと……!
「あれ、こんな所にいたのか」
「蓮くんだ」
牛王がひょこっと現れた。せっかく、先輩たちといい雰囲気だったのに。
「もうそろ始まるんじゃね?夜行祭」
グラウンドの真ん中に集められた木の山に、火が灯され始めた。それは高々に火が灯り、煌々と当たりを照らす。
それを皮切りに、生徒達はその炎を囲うように踊り出した。
「さて……」
牛王がわたしたち三人の前に向き合うような形で立ち、右手を差し出す。
「お嬢さん達、Shall we dance?」
「ふふ、喜んで♪」
「ちょっと待って、わたし踊れないよ!」
あまり運動神経が良くない私は、踊るなんて以ての外だ。
「あんなもん適当でいいんだよ。楽しけりゃいいんだから」
ほらいくぞ、と手を引かれる。
「わたしは、遠慮しておきます」
「紫苑もいくよ♪」
遠慮気味な紫苑先輩は、みこ先輩に手を引っ張られ煌々と灯る炎の前まで連れられた。わたしも当然のように牛王に引っ張られる。
仕方ない。これは観念するしかなさそうだ。
全員上手いとか下手とか関係なく、適当に踊ってこれまでに無いほど騒いだ。
その場で回ったりヒラヒラしたり、牛王はなんだか変な踊りを見せて笑かしてきた。
紫苑先輩は盆踊りを踊っているし、それを真似てみこ先輩も踊っていた。わたしもなんとなくそれに倣って踊ると、牛王までも真似し始めた。
ひとしきり踊って騒いだあと、生徒たちは散り散りになって行った。
わたしたちも騒ぎすぎて疲れ果て、屋上まで涼みに来ていた。
そうか、もう学園祭が終わるのか……。
わたしはまたもや空を見上げ感傷に浸っていた。
「ところで蓮くん、virtual部に入らない?」
みこ先輩が思い出したようにそう告げた。
確かに、なにかとvirtual部のお手伝いをしてくれたし、なにより配信もできるし、牛王が入ったらもっと楽しくなる気がする。
「いや、俺はいいよ。自由にやるほうが性にあってる」
「そっかぁ残念」
その言葉と裏腹にみこ先輩は、微笑んでいた。もしかしたら、その答えは聞く前に分かっていたのかも知れない。
ヒューー……バン!
突如として空に大きな花が咲いた。
「花火だぁ♪」
次々と花火は上がり、生徒たちの顔を照らす。
「これが終わると、学園祭が終わるって事ですね……」
なんとなく寂しく思い、口に出してしまった。
この学園祭は、いろいろなことがあった。準備中の話し合いも毎夜のように行って、意見を出し合った。学園祭初日には、牛王が喧嘩を売ってきたかと思えば、実はvirtual部を盛り上げる為にわざとやった演出だった。
それがきっかけで仲良くもなったけれど。
二日目は、あたふたする紫苑先輩と可愛らしいみこ先輩を見ることが出来た。とても忙しい日だったけど、楽しかった。
最終日の今日には、牛王はやはり優しいと再確認したし、みこ先輩の趣味を知った。どんな所にいても挙動不審は変わらない紫苑先輩は、盆踊りが上手だとも知った。
この数日で、みんなの知らない姿を見れた気がする。
なんだかんだあったけど、楽しかった。
「でも、virtual部は続くでしょ♪」
みこ先輩は、花火の灯りに照らされながら微笑む。
「そうですね、virtual部は終わらせませんよ」
紫苑先輩は、黒縁の眼鏡を人差し指でクイッとあげる。
「……そうですよね。先輩!どこまでもついて行きますっ」
「頑張れー」
「頑張るよ♪蓮くんも応援してくれるでしょ?」
どこか他人事な牛王。まぁvirtual部ではないのだから、当然といえば当然だが、牛王は半分virtual部所属のようなものだろう。言わば、マネージャーのような……?
いや、これは言わないでおこう。なんとなく図に乗る気がする。
「応援しろって言うなら応援するよ。仕方ないお嬢さん方だなぁ」
こうしていろいろあった学園祭は、終幕を終えた。
けれど、わたしたちの物語は続く。
これからも配信者という形で、みんなが笑顔になるような配信を続けたい。
もちろんみこ先輩と紫苑先輩がいるこのvirtual部で、先輩たちと一緒に盛り上げる。
さて、わたしたちの物語を記すのはここまで。
けれど、virtual部はこれからも続きます。
ちょっとでも気になった方は、virtual部に足を運んでみませんか?わたしたちは喜んで歓迎します!
「「ようこそvirtual部へ」」
最後まで読んでくださりありがとうございます!
とうとう最終回を迎えてしまいました。
寂しいような嬉しいような……そんな感じです。
なんだかアニメの1クールのような話数になってしまいました。(もちろん狙った訳では決してございません)
それでも番外編は書いていきますし、ご希望とあらば「ようこそ、virtual部へ2」として続きを書くこともあるかもしれません!
それでは……『悠希つづり』と『閑みこ』をこれからもどうかよろしくお願いします!!




