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テミルディオル英雄記  作者: 一衣帯水
1章 40人の転移者
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世界が違うと考えも違う

自分に文才がほしい。あと瞬間移動の魔法とか現実にできないかな。

「お待ちしておりました、勇者様」


 先頭にいた桃色髪の女の子が突然勇者なんてことを口をするものだから、クラスメートみんなが混乱に陥っている。カズキはそのなかでも比較的に落ち着いている方だがなんで勇者と言ったのか理解できなかった。


 こんな訳もわからぬ未知との遭遇を前にして、クラスメートたちもみんな薄々元いた世界とは違う場所にいる、と嫌でも気づいているのだろう。だが、まだここが別の世界の場所だと思いたくない人も帰りたい人も異世界キターと言っている人もいるみたいなのだが、どう考えてもカズキ達がいた世界とはかけ離れている気しかない。


 みんなが考え込んでたり、思考を放棄しはじめたときでも喋り続けているこの少女、他の異世界の人たちの髪色や服装がコスプレと言われれば、それはそれで納得してしまいそうだが、そんな服装でいたらこちら(日本)の常識は当てはまらないのだろう。


 さらに、授業中の教室からその場にいた全員を連れ去るという真似は科学が発展した現代でも無理だろう。それこそトリックでもマジックでもあり得ないことをしないとできない。カズキが頭の中でこの事を自分なりに解釈しているところで、先程から喋り続け、また一段と声のボリュームを上げた女の子の声が聞こえた。


「ああ、自己紹介がまだでしたわね。私アリスティア王国第3王女で宮廷魔導師を務めておりますシア=リーナ=ミンニア=ハウ=レ=ラ=アリスティア=タンテス=カーデンです。ぜひシアリと御呼びくださいまし。」


 高貴な振る舞いをしているがまだ幼さの残る少女はそう名乗った。柔らかい水色のローブを纏い菫色の髪を右肩に流している女の子は、同じ宮廷魔導師でシアリ王女の従姉妹の「フォミシア=カーデン」と言い、さっきからずっと険しい表情をしている爺さんは王立図書館の司書長でありこの国の大臣でもある「カカ=グワン」さん、白を基調に統一され装飾を鏤めた盾鎧兜を身に付けている護衛の騎士達は王国近衛騎士団の精鋭部隊だそうだ。


 委員長は、誰が一番最初に挨拶をするかで相談しあっているクラスメイトを横目に、立ち上がり挨拶を返した。


「俺達は日本というところから来た高校生です。名前は田原町リョウタと言います。クラスの委員長をしています。委員長はこの集団のまとめ役みたいなことです」


 ひとりが話せるようになると緊張の糸が切れたようにみんなの顔に生気が戻ってきた。委員長に続いて担任のジュウゾウちゃんが挨拶し、質問をしている。具体的な内容は、なぜ私達なのか、そもそもここはどこなのか、私たちは帰れるのかの3つの質問だ。それに答えたのはシアリ王女ではなくカカさんだった。


「お主らの言語と我々の言語は字こそ違うが使う言葉が似ているからじゃ、字は覚えればいいが話し言葉はそう簡単には変えられまい。故に呼ばれたわけであろうな。2つ目が場所じゃったな。ここは「アリスティア王国王都エトネール」にある王城「ルシャード=ロイ」の英雄の儀式の間じゃ。古の英雄を称えるという意味の名じゃな。まぁアリスティア王国自体知らぬかもしれんがの。最後は帰れるかどうかじゃったな。まぁ可能じゃよ。ただのぅ、次に行えるのが5年後なんじゃよ、そこまで待ってくれんのじゃらばできるんじゃがなぁ」


 カカさんが言ったあとすぐに、シアリ王女たちは国王陛下に召喚が成功したことを伝えに行くと言って部屋を出た。扉の外に護衛の騎士を3人立たせているので何かあったら言ってくださいと言い残して。


 それはさておき、みんなは帰れるかどうかを心配していたらしく可能と聞いたときには笑顔になっていた、無論カズキもその一人だが、ヨウヘイや委員長などの理解力のあるやつは表情が変わり始めていた。おそらくなにかを察したリョウタと友人達を中心とするグループが動き始め情報を集めるべく行動するためにリョウタの友人の3人が外に出て、騎士が1人ついていった。


 その3人は「瀬野ハジメ」と「芝タクミ」と「木下ケイ」である。ハジメは委員長の右腕であるがあまりパッとしない普通な高校生に見える。しかし知能と適応力が人のそれを外れているためクラスでも一目置かれた存在である。タクミとケイは幼馴染で、タクミの方は随分と慎重な、考えて行動するタイプの人間だ。ケイはどちらかと言うと感情で突っ走るタイプで、容姿、言動、性格どれもがボーイッシュと呼べる以上に男に勝っている。この幼馴染2人組は非常にいいバランスをお互いが保っている。よくこの4人がクラスの中心となっていろいろな行事に取り組んでいる。


 彼らが扉の向こうに行ったタイミングで周りにいたクラスメイトたちはしゃべりだした。その中には隣で考え事にふけっていたヨウヘイに話しかけられたカズキも含まれていた。


「なぁ、5年後ってことは5年はこっちにいなくちゃいけない訳だろ。5年の間になにかしろって言われたりしないのか、これ」


「え? 5年間は面倒見てくれるんじゃないのか? 流石に俺たちは高校生なんだし戦争に駆り出されるわけでもないだろう」


 カズキがそう答えるとヨウヘイは頭を抱えて率直に思ってることを伝えた。


「あのなぁ、まず俺たちが理由も無く召喚されると思うか? 学生を兵隊として動員するのは200年前の戦争でもあっただろう。帝国が兵士不足解消の為に行ったっていう事実があるだろ、それと同じように俺たちが戦争に駆り出されるなんてことも否定はできねぇんだよ」


 ヨウヘイはそう言うと上を見上げ黙った。カズキはヨウヘイの言葉に表情を変えた。普通に考えればあり得ないことだが、世界が違うことで考え方も常識も変わってくる。ましてや、今いる国がどこかと戦っているのなら尚更だ。平和でしか生きたことのないカズキにとって、戦いの名のつく行為は恐怖以外の何ものでもない。自分がそれに巻き込まれたときどのようにすればいいのかなんてものは誰も教えてはくれないし、自分ではない誰かが巻き込まれていても助けることすらできない。


 そうカズキが考えていたときに、クラスメイトの大半が集まるこの部屋の中心の方では委員長と大原ワタルのふたりから一触即発の雰囲気が出ていてジュウゾウちゃんを含む数人が止めに入ろうとするも二人から発せられる威圧感に押されている。


 時間の流れがゆっくりに感じるほど皆に緊張が走っている中で最初に口を開いたのは大原だった。


「おいッ、ふざけんじゃねぇぞ、どうゆうことだ」


「まだここがどこにあるのかもわからない時点でそんなことを言われてもなにも言えない。何もわかっていないんだぞ俺たちは」


「そんなことを聞いてんじゃねぇよ、なんでオレらなんだって聞いてんだよ。なんでオレたちがこんなことに巻き込まれなきゃ行けねぇんだよ」


「それは、お前も俺もみんなもそう思ってるはずだ。ここは日本じゃない、地球でもない、多分異なる世界のはずだ。あのシアリと名乗った王女が言うには俺達は勇者として召喚されたらしいな、何かなければ呼ばれるなんてことはないだろ」


 大原が勢いよく委員長の胸ぐらを掴み、叫んだ。


「なにかってなんだよッ、さっさとすぐに帰れる方法を見つけてこいよ田原町ッ」


 大原は掴んでいた委員長の胸ぐらを勢いよく投げ飛ばした。ドンッ、と響かない鈍い音をたて委員長は壁に叩きつけられた。クラスメートの女子が甲高い悲鳴をあげる。少しよろめく委員長のもとに駆け寄ろうとした人は、大丈夫だ、と言われ足を止めた。委員長は話を続けた。


「5年待てば帰れる、そうあの爺さんは言っていた。それは分かるだろう大原。今必要なのは情報だ、ここの、いや、この世界の。情報が必要なんだ。ハジメ達が帰ってくればこの世界がどのようなものかは、多少は分かるはずだ」


 この後は話が先に進まない状況がずっと続き、それから5分~10分ぐらいしたあとに委員長の友人3人が戻ってきた。外で得られた情報は意外にも多かったが、普通では考えられないことばかりで理解のできる情報は少なかった。


 例えば、この世界には様々な種族がいてそれぞれが争っている、とくにこの国にいるようなヒト族とファンタジーでその名を見かける魔族は仲が悪く、そのふたつの種族を中心として規模の大きな戦争を2千年も前から繰り返しているという。いまだにその戦争は終わる気配がないといわれていて双方ともに一進一退の攻防を繰り広げている。


 他にも、魔法というものがありこれは俺達の世界ではあり得ないものだった。どんなものかというと科学の力を別の方法で取り出したようなものから超常現象じみたものまであるという。これについてはこれから教えるという伝言を預かっていると騎士のひとりが言った。


 委員長が全員を集め、先程手に入った情報を基に話し合いを始めた。委員長やジュウゾウちゃんをはじめとしたクラス運営メンバーが中央に机を借りて会議の進行をし、カズキたちやそのほかのクラスメートは委員長たちの少し近くに集まり、大原を中心としたグループは扉の反対側、奥のほうの壁に佇んでいる。


「まず確認しておきたいことは、ここは本当に地球ではない世界らしいようだ。そのことを聞き馴染みのない言葉や魔法という存在が証明している。それに、この場所も西洋の城の内部に似ているが、壁にかかっている灯りは蝋燭でもランタンでも火灯でもない。わけのわからない力が働いているとしか思えないんだ」


「そうだね。ここにいる人々の服装も西洋的なものが多いよ。実際、騎士の人や城の中にいた人達、みんなそのような格好だよ。わけのわからない力というと、服にも何かあるようには思ったよ。城の外は普通の様子だったんだけどね」


 ハジメがそう答えると見てきたことを基に話し始めた。城の中は魔法で作られた見えない壁、バリアのような不思議な力が働いているが城の外に少しでも出るとそれは感じられなくなっていたこと。外の街並みは何世紀か昔のヨーロッパのそれに近く、人々の服装も12、13世紀のヨーロッパで使われていたものに似ていたこと。そして、街を歩く人々の半数近くが剣や弓を持っていたことを語った。


 ハジメが話を終え口を閉じた後、ケイが小さな袋を取り出しながら話し始めた。袋には何やら高価に見えるものが入っていて、それは少し透き通った牙に穴を開け紐を通したものだった。


「ここのヒトたちは魔法という有り得ない力を使って生活している。街のあらゆるところに魔法で動く機械らしきものを見ることができた。まあ誰でも使えるとは限らないらしいんだが」


 コウタは日本より先を進んでいそうだね、と小声でカズキとヨウヘイに話しかけると、ヨウヘイは剣も鎧もあるのになんで科学が発展してんだ、そう言いカズキは釈然としない気分になった。


「魔法を使用した機械モドキ、その仕組みについても聞いてみたが、ところどころ科学では説明の仕様がないところもあると思ったよ。意外にも言語は似ているのに、私たちのいたところと文明の成り方が違うんだろうね」


 ケイがそう言ったあと、牙に紐を通したものについて話してくれた。この牙は亜人と呼ばれる種族の一種「犬人族」の御守りのようなものだとわかった。他にも猫人族なる種がいたらしく、姿は猫が二足歩行で人間みたいな生活しているらしい。あとは人間に犬猫の耳と尻尾が生えている「耳族」がいてすごく可愛かったとケイは連呼している。


 ケイはため息をつきながら己の願望を吐いた。


「はぁ、可愛い犬人族の子でも連れてくればよかったなぁ」


「誘拐だぞ、それ」


 と、タクミが呟いたのをケイは拾い、こう言った。


「飼育するから、ちゃんと」


「いやいや、そうじゃないって」


 と、繰り返されるであろうタクミとケイの夫婦漫才が始まりそうになるところで、リョウタが止めにはいる。そのやり取りを見ていた一同に笑いが起きる。


 だが、その賑やかな空間に静寂が訪れるのは、そう遠くではなかった。


 広間とも言えぬ部屋のたったひとつの出入口、そこから入ってきて早々勇者とかなんとか言っていた女の子が勢いよく扉を開けた。中にいた全員に一瞬にして緊張が走る。


「お父様が皆様に会いたいと仰られておりますので、お待ちしております雷嵐の英雄(ロイ=アリスティア)の間へどうぞご案内致しますわ」


 シアリ王女に連れられ王の待つ部屋へと行く途中、シアリ王女はみんなから地球(もといた世界)の話を聞いてあれやこれやと疑問を口にした。科学というものはなんだとか、動物とか生き物とは何かとか、次々に質問が矢継ぎ早に飛んでいた。


 みんながシアリ王女の疑問に答えていた間、廊下を見まわしていたカズキは先程までいた部屋と比べて装飾品の数が少なくなっているのに、違和感を覚えた。ヨウヘイとコウタも同じことを考えていたらしく、王城なのに質素なのは何かが有るに違いないとヨウヘイは言い、コウタはもうどこかと戦争していてお金がないんじゃないかと言った。


 それを聞いていたのかシアリ王女は、この国を含めたヒト族の国は2千年以上前から魔族と呼ばれる種族と戦争をしていて、お金のほとんどが軍備に回されているから、この城は飾りが少ないのとそう説明した。


 カズキはシアリ王女が話しに出した魔族と2千年に渡って行っている戦争について聞こうと思っていたら、いつの間にか王の待つ部屋の前に着いてしまっていた。


 この国の頂点に立つ者が待つ部屋の扉は豪華絢爛という言葉のあうものではなく、機能性と耐久性に優れているであろう頑丈で重みのある扉だった。


 剣を持った龍の描かれている扉の前で馬酔木を連想させるような髪色の王女様はこちらにくるりと向き直り、みんなの正面の部屋を紹介する。


「みなさま着きましたわ、ここが雷嵐の英雄の間ですわ。中でお父様である国王スヴェロ4世がお待ちしておりますわ」


 シアリ王女が何か呟き、それと同時に扉が開いた。


 開いた扉の先でカズキ達みんなを待っていたのは、いかにも武人というにふさわしい、見るものを圧倒する程の威圧感を出している強そうな人物だった。

包囲殲滅陣を書きたい。できればファランクス込みでやってみたい。

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