ある日あるときの物語
初投稿となります。よろしくお願いします。
「これからのことは君に取っておこう」
白い影はそう言うと姿を消してしまった。グネグネと揺れ動き意識の薄れる空間の中で一人残された少年はもう一人の言葉を思い出そうとする。それでも一言も浮かんでは来ない。何かにしがみつくような少年を嘲笑うかのように、記憶は何も話さなかった。その時彼はおぼろげながら見えた光に向かって走りだした。どこに向かうのかもわからずに、ただ無意識のうちに走った。そして、目の前には先程より黒く染まった影がいた。影の主は少年に微笑み一言
「近いうちにまた会おう」
次の瞬間、眩い光が彼を包み込んだ。
ゴンと大きな衝撃が少年を襲った。ベッドから落ちたようだ。また同じ夢を見ていたらしい。これで何度目かは分からないが最近はよく見るようになった。何も残らない、でも何か残る夢。それを頭の片隅に留めておきながら、少年は今日も学校へ向かった。
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高校2年の11月のある日、立花カズキは憂鬱にも似た表情を浮かべながら教室にある自分の席に腰かけていた。いつもなら日課にもなっていた外の景色を眺めることが今日はなぜか気が乗らない。それでも窓の方を向いて眺めてしまっているのだから習慣というものは恐ろしい。教室の中心からやや後ろの机に体を預けている少年は、一番近い窓から見える自然の織り成す劇場を無意識のうちに見ている。それは彼の登校する一時間前から降り続き、舞台上のバレリーナとでもいえるような景色だった。
風はあまり吹いてなさそうだ。悠久にも続きそうな白い劇を観ながら彼はそのようなことを思った。席を立ち窓を開け、落ちてくる雪を手に掴む。掴んだ小さな氷の粒を見て白の混じった息を吐いた。それから10分20分経って登校した人が少しずつ増えてくると学校の暖房も動き出す。暖かくなってきた教室のドアが開き、少女は自分の席に向かうのではなく焦げ茶色の髪をした少年の隣に来た。
「毎朝早く起きるのって大変じゃないの?」
少女は教室側を向いたまま壁に寄り掛かり、友人に尋ねた。
その少女の名前は川本マミといってカズキの幼馴染である。この11年間一度も違うクラスになったことのない親友の一人であり、腰にまで届くくらいの艶やかな黒髪と大きく澄んだ瞳、ややふっくらとしてるが左右対称と呼んでも間違いのない整った顔立ちで整った容姿を持ち美少女という言葉が似あう。お菓子作りに定評があり自分の友人たちにあげたり教えたりもしている。お菓子以外の料理も得意でそのような家庭的な面が彼女の人気となる理由のひとつでもある。
「さあ、もう慣れちゃったからな。なんとも思わないや」
当たり前のように過ごしていることに疑問を持てなかった少年は友人の問いを軽く流すような形で答えた。それを受けて友人も別の話題に切り替えた。
「そうなの? まあいいや。でね、これ作ってきたの。クッキーなんだけどいる?」
カズキより若干背の低い黒髪の少女はカバンから小さな袋を取り出し中を見せた。ほのかに甘い、いい匂いがした。
「蜂蜜を混ぜてみたの。最初はチョコクッキーを作ろうって思ってたんだけど……なんかね別のものが作りたくなってね」
顔に苦笑いに近い笑顔を浮かべ、今度は上手に作ろうと言っている少女にカズキは相槌をうった。
「そんなときもあるよ。で、クッキーはどうすんの?」
「どうしようかな」
マミは袋を見てからカズキを見て、数秒おいて赤く笑みを浮かべた顔で言った。
「じゃあー」
マミが次の言葉を発する前に勢いよく教室のドアが開かれた。入ってきたのはカズキとそんなに背の変わらない男子生徒だった。マミの顔に一瞬鬼が現れたような気もするがカズキに先に話しかけたのはその男子だった。
「カズキ、宿題終わってるか? 終わってんなら見せてくれ!」
「ああ、いいけど前もおんなじこと言ってなかったか?」
「これで最後だから、これで最後にするから唯一無二の第親友を助けると思ってくれよ。なあ」
その男子生徒は、もう一人の幼馴染でこちらも小学生の頃からの親友である来栖ヨウヘイだ。彼は170cmのカズキよりも2㎝高く、髪をヘッドバンドで留めているので若干高く見える。特徴的なのは黒髪黒目の褐色肌と陽気な性格だろう。彼は自身は、いつも何も気にせず明るく元気なことだけが取り柄だと豪語しているが、授業中は意外と静かにしている。理由を言ってしまえば馬鹿馬鹿しいが意識もろとも虚空にオサラバしているからだ。
その親友に助けを乞われてはいつも船を出してしまうカズキは、5秒ほど考えるふりをしてから
「仕方ないなあ、これで最後ならいいよ。ほらよ」
と、宿題の書かれているノートを悪友に差し出した。受け取った反省の色の見えない悪友は、すまねえ、授業までには返す。と自分の机に足早に向かった。はあ、と溜息をこぼしたカズキの肩にマミが手を置き、許してあげてよみたいな顔をしたのをもしかしてお前もかと疑ったがそれはすぐに晴れた。教室のドアが二度目の悲鳴を上げると焦った顔の少女が現れた。
その少女井上ミナハは、マミの親友で今ではカズキたちとも喋ったりするクラスメイトの一人である。人見知りだが少々見栄っ張りなところがあって、一緒にいるとほんわか和む癒しを持つ性格である。少し青がかった薄い黒の髪をツインテールでまとめ、幼さの残る童顔が性格と相まってミナハの見た目にかわいさをさらに追加している。そして、見た目に合わぬ凶暴な何かを持ったトランジスタグラマーでもある。
「助けて、マミ、立花君。宿題が終わりそうにないの、夜まで頑張って起きてたのに」
「ミナハ、夜って何時まで起きてたのよ」
「10時だよ、そっからは寝ちゃって…ごめんね」
「謝る必要はないわよ。まあそういうと思って用意してあるわ、わかりやすく解説もつけておいたからこれでばっちりよ」
「ありがと~マミ、大好き!」
「あたしもよ」
ミナハがマミから宿題ノートを貰って席に行くのを見計らって、カズキはいつも思っていたあることを尋ねることにした。それはマミがミナハの母親の如く面倒を見ていることに対してである。
「甘やかしすぎじゃないか、井上のこと」
「あんただってヨウヘイのこと甘やかしてるのによく言えたわね」
「あ、いや、だって毎度のことだしさ。それに俺もヨウヘイに頼ってるとこあるし」
「そうなの、ならあたしもミナハに元気貰ってるってとことかあんたと全然変わらないでしょ。はい、この話はおしまい。私は席に戻るわね」
「あ、うん」
一方的に話を流され何も言えなくなったカズキは席に戻ろうとしたが、マミが隣のため若干気まずくHRが始まるまでヨウヘイの宿題の手伝いをしていた。数分後にそれは終わったものの隣との気まずさはまだ収まってはいなかった。それからしばらくして、昼休みが明けた5時間目の時間。担任の輿水先生の授業は黒板に書かれる文字をノートに書き写しつつ眠気との戦いになった。クラスの大半が睡魔との勝負をしている中カズキも黙々と作業を続けるが襲ってくる眠気には勝てず、気が付いたら時間は授業終盤に差し掛かっていた。
速く書くコツとかありませんかね。




