第7話
私は魔導師だった。魔導師、エリー=マスクと言う名だった。
しかしその時の姿は今はすでに無くなっている。何故なら突然現れた女の所為だ。
その女に私は身体を化け物に変えられしまった。もう、どこで生きていけばいいのかわからない。国に帰ったとしても、この姿では殺されてしまうであろう。
畜生……神光騎士団なんかに入らなければ……。
私は裕福な貴族の家に生まれ子供の頃より不自由なく暮らしてきた。
魔道学校に入学した時、初めて私は魔法というものを知った。
先生の見せてくれた魔法はとても魅力的でその頃の私に魔導師になるという夢を見させるには十分だった。
そして私は魔導師を目指し、魔法を使い訓練を繰り返し、火魔法を極め炎魔法を身につけた。
その炎魔法はあの時、先生の見せてくれた魔法なんかよりもずっと美しく、強力なものであった。
それからも魔法への熱は冷めることなく続き、いつしか宮廷魔導師となっていた。
私の持つ炎魔法を使える者は国内に1人もおらず私は国内最強の魔導師と言われた。
しかし私はそんなことでは満足することは無かった。私は魔法を研究に研究を重ね、炎魔法以外にも流魔法を使えるようになった。これは水魔法を極めた者のみが使うことができる、水魔法の上位魔法。
しかし上位魔法は中々Lvが上がらない。上位魔法、炎、流を使えるようになってから1年経ったものの、未だ炎はLv2、水はLv1。
上位魔法を極めるのは相当な努力が必要なようだ。
そんなある日、宮廷内の私の部屋に一人の男が訪ねてきた。
それはこの国の軍の司令部の長、エルクデスさんだった。
そんな人が何故私の部屋に訪ねてきたのかというと。
神光騎士団へ入ってくれと言うことであった。
神光騎士団……ステータスが100倍となる神の力を手に入れることができる。
この時の私は、これに入れば上級魔法のLvが上がるのではないかと期待をしてしまった。
私は快く承諾してしまった。これが終わりの始まりであった。
数日後、神光騎士団は魔導師と騎士とが半分半分で編成された。私は魔導師隊の長となった。
そして、私達は魔物がいるというサイデン平原へと歩き始めた。
私は、魔法の事しか頭になく魔物の事など聞き逃していた。それさえ聞いていれば、今頃は魔法の研究をしていただろう。
そして……
私は魔物のステータスを見た瞬間、絶句した。
これは私達が敵うものではない。早く逃げなければ。私は隊長にそのことを伝えたが。
「おい!怖気付くな!我らは神光騎士団だ!」
畜生!この脳筋め!
「【知覚速度上昇】Lv10」
私は私が出せる全力でここを抜け出した。
ここに入れば直ぐに殺される。生き延びなければ。私だけでも生き延びなければ!
そういって全力で走り抜けた。
逃げ切れたと思って後ろを振り向くと、神光騎士団が消えていた。黒い何かに隠されていた。
黒い何かは段々と遠のいて行くのが見えた。神光騎士団は全滅だろう。
でも私だけでも生き残れた!これでまだ魔法の研究を続けられる!
そう思ったのも束の間
「おーい、そこの魔道師くーん?どうして逃げているのかなぁ?」
どこからか声が聞こえる。
「なんだ!どこにいるんだ!」
私は大声を上げるが周りには何もいない。気のせいだったのだろうか……
すると突然何かが大きくなっていった。
ムクムクと膨れ上がっていくように形が作られていき、それは人の形を成した。
女の形を、しかも服を着ていない。
しかし今はそんなこと言っている暇はない。
「やぁ、魔導師くん」
女の口が動き、発せられた。
やばい!と思い私は魔法を唱える。
「【炎魔法】Lv2 メガファイヤーボール!」
私の出せる最大の魔法を繰り出した。
しかし、目の前の女はそれを球のように掴んだ。
「よーし、魔導師くん。君が先に手を出してきたんだから正当防衛だよねぇ?」
不味い、殺される!?
私は恐ろしく脅すように声に震えが止まらずにパニックを起こしてしまった。
こんなこと有り得ない!こんなこと有り得ない!
女は火の玉をこちらに向かって投げつけた。私はそれを止めることなど叶わなかった。
高温の火が私を包んでいく。そこから意識は途絶えている。
『生き返らせてやったんだから、国に帰りやがれ!』
足が止まらずに動いていく。
☆☆☆
エ ン ペ ー ト 王 国 滅 亡 し ま し た