真実
短めですが、昼頃に最終話を投稿するので、ご容赦くださいませ。
ミゼラとゴードンから、またおいで、と見送られたわたしたちは、なるべく人通りの少ない道を選んで帰っていた。わたしのカバンの中には、ゴードンの店から出てきた手紙が入っている。自分たちには必要のないものだからと、譲ってくれたのだ。
家に着いてから、早速手紙を探した。疲れていたが、このままでは気になって眠ることができない。
わたしが1人で屋根裏部屋へと上がり、これまで手をつけていなかったスペースを探していく。もし、ここにある手紙も、ゴードンの店から見つけた手紙のように魔力が薄れてしまっていたら、触らなければ感じ取ることができない。目についたものをとにかく触っていると、とある箱の上で手が止まった。
「………見つけた」
間違いない。この黒くて小さな箱の中から、僅かに魔力を感じる。大切に保管されていたのか、埃を被ってはいるものの、あまり損傷はなかった。箱を開けると、中には、望んでいた手紙が入っていた。
「タクヤさん、ありました!」
慌ててはしごを下りて、タクヤに箱を見せる。そっと机に置いて、改めて中身を確認した。
「宛先はリリー、間違いないね」
ごめんなさい、と呟いてから、タクヤと一緒に手紙を読んでいく。リリーは、シャール国の出身で、ダージマン国のステファンと駆け落ちしたようだ。まさかステファンの正体が、駆け落ち相手だとは思っていなかった。
そのまま読み進めていくと、元気そうでよかったと体調を心配するものや、近況報告などが混ざる中、決定的な文が目に入った。
封は大丈夫よ。私の目の前で封印したでしょう?もっと聖女として、自信持ちなさい。
「ねぇ、タクヤさん、ここ、聖女って書いてあるように見えるんですけど」
何度読み直しても、聖女という文字は変わらない。わたしの後ろから、覗き込む体勢で手紙を読んでいたタクヤにも確認した。
「うん。僕にもそう見えるよ」
ということは………
「魔王を封印した聖女って、わたしの、ご先祖様ってこと、ですかね……?」
「そういうことになるね」
「じゃあ、わたしは魔女じゃなくて…」
「聖女だね」
にこりと微笑むタクヤに対して、わたしは開いた口が塞がらなかった。
「でもさ」
あまりの衝撃に、なにも言葉を紡げなくなってしまったわたしを、タクヤが後ろから優しく抱きしめた。
「サラを見ても、魔女とか聖女とか、誰も言わなかったよね?」
「……………はい」
「見た目では、魔力があるかなんて分からないんだ。サラは、普通の女の子にしか見えないよ。…………あ、普通じゃないや。すっごくかわいい女の子」
最後の言葉だけ、耳元で囁かれた。照れている場合じゃないことは分かっているのに、不意打ちだったのも相まって、鼓動が駆け足になるのを感じる。
「ましてや、御伽噺の存在に直結させるような人なんて、そうそういない。今回魔王が消えたのだって、勇者の成果になってるからね」
タクヤの顔が、わたしの耳のそばから離れたところで、フフッと笑い声が聞こえた。たぶん、耳まで真っ赤になっているのがバレたのだろう。
「だから、あんまり気にしなくてもいいんじゃないかな?魔王だって、もういないんだし」
「そうですね!」
言われてみればそうかもしれない。わたしが聖女であれ魔女であれ、できることは変わらない。なんだか、もやもやしていたものが吹っ切れた気がする。これまで通りの生活を……
「そうなると、サラは隠れて生活する必要がなくなるわけだよね?」
「え?!」
「旅してきて、知識の面以外では、何も問題なかったよね。っていうことは、日常生活に溶け込めてるってことでしょ?」
「生活に、溶け込む……」
考えたこともなかった。だが、思い返してみると、たしかに、タクヤの言いたいことが分かるような気もする。
「せっかくだし、ちょっと考えてみてもいいかもね。時間がかかってもいいから」
去り際に、耳にふーっと息を吹きかけられた。悲鳴をあげなかったわたしを、全力で褒めたい。
「仕返し」
思い当たる節のあるわたしは、ニヤリと笑いながら去っていくタクヤに、何も言い返すことができず、顔の熱を冷ましながら、手紙を片付けたのだった。
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次がラストです!




